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初雪 1

上品な金線が美しいオフホワイトのインビテーション・カード。
わたくしの名前だけを表書きしたカードに書いてあった伝言はほんの少しでした。
「明日 21:00に望月を伺わせます。
 何も持たずに身一つでいらしてください。
 3日間を僕たちにください。 いいですね。」

セルシオは、約束の場所に時間通りに到着しました。
わたくしの目の前に停まると、あの心地よいドアの開閉音がして・・・運転手の望月さんが降り立ったのです。
「祥子様、お久しぶりです」 
いつもの主の方がいらっしゃる時と同じに礼儀正しく、視線すら合わせない様にして後部座席のドアを開けてくださったのです。
ドアの中には、予想に反してどなたもいらっしゃいませんでした。
「皆様がお待ちの場所までお連れいたします。どうぞ、お乗りください。」
私語は許されない、そう彼の態度が言っていました。
望月さんもいらしたあの箱根の最後の夜。
どなたも側にいないのなら、あの時の二人になれるかと・・・わたくしは勝手に、二人きりの車内の空気に儚い期待を抱いていました。あの時の見事な着物のプレゼントの御礼も、彼が示してくれた優しさへの気持ちだけでも改めて伝えたいと思っていました。
なのに、彼は運転手という役割に徹した姿勢を取り続けたのです。
 
カードには何も持たずに身一つでいらしてください・・・そう書かれていたのです。
そして・・・3日間を僕たちにください・・と。
わたくしは首もとに薄く残る首輪の痕を気にして、黒のハイネックのノースリーブワンピースにニット・カーディガン、ミンクのミドル丈のコートを羽織っておりました。
ランジェリーは桜色のレースのセットにしたのです。先日のターコイズブルーのものと同じブランドのストレッチリバーレースだけでつくられたスリーインワンとTバックです。コルセット付きのブラジャーから伸びるストラップの先にガーター用の黒のストッキングを止め付けました。
今夜はスリーインワンでしたのでいつも欠かさないスリップを身につけなかったのです。脚元はシンプルな黒のハイヒールを履きました。

わたくしには確信に近い予感がりました。
それは、きっと・・どんな装いをしていっても・・・あの方達が用意してくださったプレゼントを身に付けて3日間を過ごすことになるのです。あの箱根の一夜のように。
それならば出来るだけ心地よくシンプルな、久しぶりの方達を刺激しない上品なものを、と思って選んだ装いでした。
 
「今日はどちらに行くのですか?」 
黙って都内をゆく運転手に、わたくしはようやく話しかけたのです。それほどに彼の背中は張りつめた雰囲気を漂わせておりました。
「いつものホテルにお連れするように言われております」 
バックミラー越しにわたくしに視線を合わせると、彼はそう口にしたのです。
運転手の主の持ち物らしい・・・タワーホテルの最上階のエクゼクティブ・スィート。オペラピンクのランジェリーを身に付けた夜に、3人の紳士に同時に犯されたあの部屋なのでしょう。
「今日はどなたがいらっしゃるの?」 
気にかかっていたもう一つの質問をいたしました。
「私は存じません。祥子様をお連れする様にと言われていただけですので」 
運転手の声には・・・わたくしを彼の主達の手に引き渡し、彼自身は指一本も触れることも許されない夜へ予感と苦しみも含まれているようでした。
これ以上の質問はしないでほしい・・・そう言っているような彼の背中に、もう何も語りかけることは出来なくなってしまいました。

大晦日の都心の道は思ったよりも空いていました。 
ほどなくあのホテルに到着したのです。
地下駐車場には決まったスーペースが用意されているのでしょう。開いている駐車スペースに車を停めると、彼はわたくしをエスコートするようにエクゼクティブフロア直通のエレベーターに乗り込んだのです。
「あん・・・」 
ドアが閉まるなり、運転手はわたくしを抱き寄せ・唇を重ねてきたのです。
「ん・・んくっ・・ちゅぅ」 
貪るような激しい口づけです。
「祥子さ・・まぁ・・」 
運転手の手に力が籠ります。わたくしとのことを忘れていたわけではなかったのです。
「もち・・づ・き・さぁあん・・」 
チン・・もう一度互いの舌を貪ったところで、エレベーターは彼の主が待つフロアへ到着してしまったのです。
望月さんは先ほどまでの熱情が嘘の様にさっと絡めた手を振りほどき・・・開くドアに向き直ったのです。わたくしも乱れているわけではないのに・・髪とコートを撫で下ろしました。

「こちらです」 
運転手の声に一段と堅さが加わりました。
わかっているのです、今日わたくしを招いたのは彼の主なのですから。
あの夜を共に過ごした運転手は、これからわたくしがどんな眼にあうのか・・・思い描いているのかもしれません。
主の目からみたら分不相応な嫉妬心のもとに。

初雪 2

ピンポン・・・ ベルを押し、しばらくするとドアが開けられました。
「祥子さん。良くいらしてくださいましたね。どうぞこちらへ」 
望月さんから<主>と呼ばれている男性でした。
「お招きいただいてありがとうございます」 
挨拶する間もなくコートを脱がされて、ドアの側にあるクローゼットに収められました。そこにはすでに3着の紳士もののコートが掛けられていたのです。
「私は荷物を下ろしてまいります」 
運転手はそう言うと、主から一枚のカードキーを手渡されて地下の駐車場に向かいました。
「もうフェロモンの薫りを漂わせていますね。祥子さんどうなさったのですか?」
運転手のキスで、わたくしの身体が反応していることに気がついてしまったのでしょうか。男性はわたくしの耳元で囁いたのです。
「ちがいまっ・・ぁ・・ん」 
望月さんの立場を悪くすることなどできません。耳を真っ赤にしながらもわたくしは否定の言葉を口にしました。その唇を男性に塞がれてしまったのです。
「くちゅ・・・はぁ・・ん・」
舌を吸い上げるようにねぶられて・・・ワンピースの裾から手を差し入れ、ストッキングの上の太ももの合わせ目に指を這わせるのです。
「ふふ 祥子さんは望月のことがお気に入りのようですね。なにもされなくても一緒にいるだけでこんなにするんじゃ、ね」 
箱根の夜を知っているからでしょうか。エレベーターの中の二人のことを見透かしてでもいるように・・・言葉責めをするのです。
迎えられたこの瞬間から、わたくしは招待状をくださった3人の男性を楽しませるための虜なのだと思い知らされたのです。
 
「これでようやく乾杯できます。さぁ、こちらへ」 
通されたのは、以前一人で朝食をいただいたリビングルームでした。
「長いお出迎えだなぁ。待ちくたびれましたよ」
すべすべした手の男性がソファーから振り返ります。
「こんばんは、祥子さん。お久しぶりです」 
立ち上がってわたくしを抱きしめたのは、髪を愛でてくれた男性です。わたくしの髪を撫でるようにして顔をあおのけると、さっそく軽くキスをするのです。
「僕にもキスをさせてくれないか」 
ただ一人まだ触れてもいなかったソファーの男性は、わたくしの手にすべすべの手指を絡める様にすると・・・くっと引き寄せてキスをしました。
「ふっ 君はもう楽しんだのだろう。ゆっくりした出迎えだったからな」 
髪を撫でる男性は、主と呼ばれる男性に嫉妬まじりのからかいの言葉を投げかけたのです。
「いや、望月に指示をして遅くなっただけだよ。僕は君たちと違って紳士だから、ね、祥子さん」 
わたくしの肩を引いて、背後から顔を被せるようにして軽いキスを繰り返しました。
「挨拶も済んだろう。乾杯をしようじゃないか」 
わたくしを背後から抱くようにしてソファーに連れてゆくのです。マムを注いだシャンパングラスが瞬く間に4つ用意されました。
「祥子さんと迎える新年に。乾杯!」 
チン・・・バカラのグラスの硬質なクリスタルの音が、エクゼクティブ・スウィートに響いたのです。
 
「皆さんはご家庭はよろしいの? 新年をわたくしとなんて・・・」
一夜を気まぐれに過ごすのではないのです。
年越しの3日間をわたくしと・・・口にしてはいけないかと思いながら、つい質問をしてしまったのです。
「ええ、僕たちは独身なのですよ」 
髪を愛でる男性が思わぬ言葉を口にしました。
どなたも40代前後・・・家庭を持っていてもおかしくない年代だったからです。
「そういえば自己紹介もしていなかったですね。僕は山崎といいます。アパレルの会社を経営しているんですよ」
すべすべとした手の男性は・・・「山崎さん」でした。
「不動産を扱っています。石塚です」
髪を愛でてくださった、がっしりとした男性は「石塚さん」と仰っいました。
「美貴です。株やディーリングをしているんですよ」
主と運転手から呼ばれていた男性は「美貴さん」だったのです。ただ、このホテルやあのバーを持ってらっしゃるということを考えると・・・ただのディーラーではないのでしょう。

初雪 3

美貴さんは、今夜もゼニアのスーツに身を固めておりました。
他のお二人もはじめてお逢いした時と同様に、趣味の良いスタイルをしてらしたのです。
「おひさしぶりです。みなさん」
「祥子さん。この前は美貴が抜け駆けをしたようですね」 
わたくしの隣に座る山崎さんが、グラスを傾けながら少し強い口調でそうおっしゃるのです。
「抜け駆けではないですよ。きちんと誘ったのに、二人が忙しかっただけでしょう」
ふふ・・あの夜を思い出しているのでしょうか。美貴さんは含み笑いをしながら山崎さんの言葉を躱します。
「箱根のあの宿ででしょう。いい宿ですよね、祥子さん」
石塚さんもいらしたことがあるのでしょうか。あの奥の離れを知っているような仰り方です。
「ええ、素敵な女将の素敵なお宿でしたわ」
「それを聞かされましてね、どうしても今度は僕たちがご招待をしたかったんですよ」
山崎さんはわたくしの左手をすべすべとした手で撫でているのです。
「美貴はいなくても良かったんだけれどね」 
「石塚、それはないだろう。この部屋を提供しているじゃないか」
「それはそうだな」 
はははは・・とリラックスした笑い声を上げる石塚さんは、あの夜には気づきませんでしたがまるで無邪気な男の子のようでした。
「美貴が酷い事をしたのではないですか?あの後、いつお逢いできるかと楽しみにしていたのですが、なかなかあのバーにいらしていただけなかったようですね。祥子さん」
その言葉に頬を赤らめてうつむくわたくしを、山崎さんが愛おしげに見つめるのです。
「そんな・・・こと」
3人の男性の視線はどなたも強くわたくしを揺さぶります。
「今夜はここで過ごして、それから雪の別荘にお連れしますからね」 
髪を愛でている手を止めることなく、石塚さんが思わぬことをおっしゃるのです。
「えっ・・」 
このまま静かな都内で過ごすのだとばかり思っていたのです。
「そのために車も用意しましたからね」 
この方達はいったいどういった方達なのでしょうか。
わたくしと過ごすためだけに車までご用意になるなんて・・・

「食事に行きましょう、祥子さん。隣の部屋にあなたへのプレゼントが用意されています。着替えて来てください」 
美貴さんがわたくしの手を取って立たせてくださいました。
「プレゼント?」
「箱根でお約束しましたでしょう。今夜のためのドレスです。きっとお似合いになりますよ。」
「ありがとうございます。いってまいりますわ」 
ドレッシングルームへと一歩を踏み出したわたくしの手を、山崎さんが掴みます。

「ちょっと待ってください。今夜はどんなランジェリーを付けているのですか?祥子さん」 
3人の男性に取り囲まれる様に立ち塞がられてしまったのです。
「そうだ、もったいないことをするところだった」
「いやぁぁ・・・」 
石塚さんがわたくしの髪を左にまとめると、後に立つ美貴さんがカーディガンを剥ぎ取り・・・山崎さんが背中のファスナーを引き下ろしたのです。
「おとなしくしてください。わかっていますね、祥子さん」 
美貴さんがワンピースの肩を剥き下ろします。
パ・サッ・・ 脚元に輪のようにワンピースが落ちました
「ほぉっ・・」「これは・・・」「いいですね 黙って脱がせてしまうのはもったいない」
わたくしの手は美貴さんによって、後に一つにまとめられていました。
桜色のリバーレースはコルセットのようなシルエットで柔らかくウエストを締め上げ、膨らみの強調されたGカップのバストをリバーレース1枚だけが、たふふ・・と支えていたのです。

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コルセットの裾のコウモリの羽のような曲線から伸びたストラップは黒のストッキングを吊り・・・茂みを透かせたそろいのレースのTバッグを額縁のように彩るのです。
「レストランの予約は何時だったっけ」
「そろそろだね」
「もっとゆっくりにしておけばよかったよ」
口々にそういうと・・・山崎さんと石塚さんはレースの上からしこり立った左右の乳房の先端を含み・・美貴さんはわたくしの露になったヒップを鷲掴みにしていたのです。
「はぁぁ・・ん・・だ・・め・・」 
立ったままで愛撫されるなんて・・それもこれからお食事に行かなくてはならないのに。

「祥子さん、このままでお逝きなさい」 
わたくしの身体は左右の敏感な先端はリバーレースの凹凸さえも刺激として受け入れ・・その周囲を這う男性のぬめぬめとした舌の感触が・・・体内を響き渡る快感が全く触れられていない花芯と真珠さえ疼かせてゆくのです。
「弱いの・・ゆるし・・て」 
揉みしだかれる尻肉にくいこむ美貴さんの指先が・耳をねぶる舌がわたくしを前屈みにさえさせてくれずに・・・快感に溺れろと言わんばかりに他の二人に熟れ切った乳房を差し出すのです。
「これでどうですか」
「はぁうっ・・・」  
か・・ぷっ・・石塚さんにより感じやすい左の乳首を甘噛みされてしまいました。
身を反らせるようにしてさえ、身内を駆け抜ける慄きを止めることができなかったのです。
「おねだりですね、逝きなさい。祥子さん」
突き出した太ももの狭間に指をさしいれると、山崎さんはわたくしの真珠をリバーレースごしに擦りあげたのです。
「あっ・・あぁぁぁぁ・・」
リビングルームの中心で美貴さんに支えられ・・・わたくしは立ったままで逝かされてしまったのです。

「ランジェリーも用意してあります。このままではレストランのお客様を祥子さんの香りで酔わせてしまいそうだからね。着替えてきてください」
お三方は代わる代わるに口づけをなさいました。絶頂の余韻がおさまるまで美貴さんに支えられていたわたくしに、ようやく身支度を許してくださいました。
「これは僕が・・」 
脚元のワンピースは山崎さんの手に拾い上げられていました。
わたくしは愛液と男性たちの唾液に濡れたランジェリーだけの姿で、美貴さんに連れられて・・・指さされたドレッシングルームへ入っていったのです。

初雪 4

ドレッシングルームの先はジャグジーでした。
壁にはダナキャランのアメリカンスリーブのドレスとストールが掛けられ、ランジェリーも用意されていました。ただ、そこにあったランジェリーはガーターベルトと黒のシームストッキング、それにTバックのパンティだけだったのです。 

「祥子さん、その首はどうしたのですか?」 
美貴さんの指が、ほんの微かになっているはずの首輪の痕をなぞるのです。
今朝方まで・・・わたくしに付けられていたカメラマンさんの赤い首輪の痕。
薄く・気づかれずに済むと思っていたその痕を指摘されて、とっさに手で隠すような仕草をしてしまったのです。
「その位置・上下についた痕。犬の首輪でも付けられていたのですか」 
わたくしの黒髪を掻きあげて・・・うなじまでも確認するようになぞってゆきます。
「ちがい・ま・す・」
事実を指摘されて否定の声は弱々しくなるしかありませんでした。
「祥子さんに犬の首輪ですか・・・確かにそそりますね。でももっと素敵な姿にすることもできるのに無粋な男ですね」 
薄紅のその痕に唇を這わすのです。
「違う・・わ」
「これだけでも充分に祥子さんを嬲れそうですけれど、時間が無いのが残念ですね」 
ふっ・・とため息をつくとわたくしから離れ、サイドデスクにある黒塗りの箱からベルベットのリボンを取り出してきたのです。
「微かですけれどうなじの痕が気になります。祥子さんの肌にはアクセサリーなど不要だと思っていましたが、今夜はこれを付けてください」
「こんなに素敵なもの・・・を?」 
渡されたリボンには、プラチナとダイヤでつくられたペンダントトップがついていたのです。用意されていた簡単な髪飾りと同じモチーフでした。
一目でそれが本物であることがわかる繊細な造りでした。あまりに高価なものにわたくしは驚きを隠せなかったのです。
「箱根で祥子さんに約束したものですよ。今夜は僕からのプレゼントで、その身を飾って楽しませてください」
「でも こんなに・・」
「祥子さんの3日間をいただくのですから当然です。それにあの夜望月が用意したものほどではありませんからね」

美貴さんは改めてわたくしの前に跪かれたのです。
「箱根では全て望月にさせましたが、後で考えたらあまりにもったいなかった。今夜は僕が祥子さんの着替えを手伝わせてもらいますよ」
左のガーターストッキングの留め具に手を伸ばすのです。
「お願い・・・自分でいたしますわ。だめ」 
身を引こうとするわたくしの腰を左手で引き寄せて、Tバックに顔を埋めるのです。
わたくしの身体は繰り返される言葉責めと先ほどの淫戯にすでに蜜を溢れさせていたのです。
「いい薫りだ、このまま味わいたくなる。おとなしくしてください祥子さん、時間がないのです。こんなに濡らしたままでレストランに行きたいのですか?」 
わたくしの脚を持ち上げパンプスを脱がせます。
「それとも、このまま犯して僕の精液の匂いまでつけて、ランジェリーもなしでお食事に行きますか?」 
ガーターストッキングの留め具を外します。
「いやぁ・・ゆるして・・・」 
するするとストッキングを下ろすのです。 
「ジャグジーでさっぱりとしてからお食事に行きたいでしょう」
わたくしの後に回り背中のホックを一つづつ外します。
「あぁぁ・・きれいだ。どんな高価なランジェリーよりも祥子さんの肌がいちばんきれいですよ」 
Gカップの乳房のボリュームがランジェリーを簡単に身体から落としてはくれないのです。美貴さんの手で肩のストラップを引き下ろされてはじめて・・・乳房がたふん・たふ・・と揺れながら押し込められていたカップから解き放たれました。
「さぁ 僕の肩に手をかけて」 
Tバックの両脇を持ってゆっくりと脱がせてゆきます。リバーレースに押さえられていた漆黒の茂みがふわっと立ち上がり・・女の薫りが溢れ出したのです。
「逢ったばかりなのにこんなに濡らして、だめじゃないですか。祥子さん」 
手にしたTパックの細いクロッチを鼻先に近づけて・・・
「だめっ・・・やめてください」 
どうして男の方はこのような恥ずかしいことをなさるのでしょうか。

「ふふ これからいくらでも楽しめますからね」 
わたくしにバスタオルを巻き付けるとジャグジーのドアを開けたのです。
「30分で用意してください。リビングで待っていますよ」 
ちゅっ・・軽く小鳥のようなキスをして、美貴さんはドレッシングルームから出ていったのです。

初雪 5

ジャグジーを出て、用意されていた髪飾りを手にしました。
かんざし型の髪飾りは、いつも背に垂らしているわたくしのストレートのロングヘアをまとめるように・・・という意味なのでしょう。
濡れた髪をそのままにタイトなアップに結い上げました。漆黒の髪の中に、白銀の輝きとダイヤのきらめきはさぞ引き立っていたにちがいありません。
ランジェリーをつけドレスを纏ったとこで、言われていた時間まであと5分になってしまいました。
シルクオーガンジーを重ねたミドル丈のドレスは、上半身に繊細なビーズ刺繍を施された黒のシックなものでした。前身頃を首に掛けるようなデザインになっていて脇から背中が全く開いていたのです。 
それでも肩甲骨の真下ほどを横切るラインまでは後身頃がありましたから・・・わたくしのバストのボリュームを支える役目は果たしておりました。
ベルベットのリボンを首筋に巻き後をリボンに結んで、脚元に用意してあった7センチヒールのパンプスに脚を通しました。
最後に、露になった背中と肩を覆う様に用意されていたドレスと同じビーズ刺繍を施したベルベットの大判のストールを掛けて、わたくしはドアを開けたのです。

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「これは見事ですね」 
山崎さんがさっと近づき、ソファーまでエスコートしてくださいます。
わたくしには賞賛の声すらも・・・軽い辱めにしか受け取れませんでした。
なぜなら、用意されたランジェリーの中には・・・Gカップのバストを支えるブラジャーがなかったからです。 
ベアトップ・・という背中の開いたデザイン・・なのでブラジャーを着けることはたしかにできないのです。
でも、わたくしの身体のことはご存知のはずなのです。なのにあえてこのデザインを選ばれたなんて、どれほど豪奢な衣装であっても、はしたなく羞恥を煽るために整えられたとしか思えませんでした。
男性の手のひらにさえにあまる白い乳房、は一足ごとに光るビーズに覆われたシルクの中でたゆん・・・と揺れるのです。
そしてドレスとして誂えられた前身頃は、わたくしの脇の乳房のラインをほんのわずかではありますが曝けださせていたのです。
「綺麗ですよ。祥子さん」 
紳士として優しく腕を組んで歩く山崎さんには、わたくしのはしたない乳房の揺れがそのまま感じられていたはずなのです。そして空々しくそんな言葉を囁くのです。
「美貴のセンスもなかなかだな。本当に似合ってますよ」 
豪快な感じの石塚さんが、見直したぞというように美貴さんの肩を叩いています。
「やっぱりあの時思った通りだ。祥子さんは着物もいいがドレスが似合う。その白いミルク色の肌と黒のシルク、このドレスを見た時どうしてもあなたに着てもらいたかったんですよ」
山崎さんからわたくしを受け取ると、やはり・・・とても紳士的にエスコートのための腕を当然のように差し出すのです。
別のドレスがあればそれに着替えさせて・・・とお願いするつもりでした。でもその言葉さえ今夜の彼らには新たな責めの要因にしかならないと、諦めたのです。
バーのカウンターから連れてこられたこの部屋のベッドルームで、身体の全てでこの3人を受け入れてしまったあの時に・・・今宵のことは決められていたようでした。
 
「お食事はこちらでではないのですか?」 
この方達のことです。エクゼクティブスイートのダイニングにルームサービスでのお食事なのだと思ったのです。
「せっかくですから、レストランを予約したのですよ。こんな素敵な祥子さんを見せびらかすチャンスを逃すなんてもったいない」 
美貴さんがドアに向かってわたくしをエスコートしてゆきます。
「そんな・・・」 
この姿をこの方達以外の人に晒さなくてはならないの・・・
「この部屋よりも下の階ですから少し眺めが悪いのですが、窓際の席をリザーブしてあります。都内の夜景を楽しみながらゆっくり食事をしましょう」 
山崎さんが振り返るように仰るのです。そして石塚さんも・・・
「今夜は東京タワーが0時にもう一度ライトアップするらしい。それを見ながら乾杯しましょう」 
ヒールを履くと170センチを優に超えてしまうわたくしを、大柄なこの方達は守る様に囲んで歩いてくださるのです。
「いってらっしゃいませ」 
ドアを開けて運転手が控えておりました。
「あぁ 食事に行ってくるよ。よろしくたのむ」 
主の言葉に静かに会釈を返し、見送ってくれました。でも望月さんは、とうとうわたくしとは一度も視線を合わせてはくれなかったのです。
 
「大丈夫ですよ。祥子さん」 
エレベーターホールでわたくしの横顔を見た美貴さんが微笑むのです。
「望月には僕たちがこれからいただくのと同じレストランから、ルームサービスが届くようになっています。さすがにこのメンバーで同じ席に着かせるわけにはいきませんからね」 
運転手がどうするのか気になっていたわたくしは、ほっといたしました。
「なんだい、祥子さんは望月くんがお気に入りなのか?」
石塚さんが意外そうにわたくしの表情を見ています。
「美貴が祥子さんを箱根で独り占めになんかするからさ」 
「しかたないじゃないか。あんな素直な大型犬のような眼をされたら可愛くもなるだろう。ね、祥子さん」 
箱根でのことを知らない訳でもない美貴さんが、その場を取りなす様に・・・でもわたくしの反応を試す様に相づちを求めます。
「望月さんも素敵ですわ」 
彼を好ましく思う気持に嘘はありません。とはいっても年若い彼とのことをどう扱ったらいいのか・・・決めかねてもいたのです。だからその場で一番当たり障りのない答えを口にしたのです。
「祥子さんは大人ですね」 
なにかを察したのでしょう。レストランフロアに着いたのをしおに山崎さんが話を切り上げてくださったのです。
 
美貴さんが軽く手を上げると、支配人がわたくし達を席まで案内してくれました。
細い通路を 身体の側面を晒しながら歩いてゆかねばならないのです。
一足ごとに揺れるバストの存在を、上半身のビーズが跳ね返す間接照明の繊細な灯りがあきらかに主張しているのを意識せずにはいられませんでした。
たふ・・たゆん・・・ Gカップの乳房の重みと質量がわたくしを裏切るのです。
白い肌と黒のシルクのコントラストが、それを際立たせているのもわかっていました。

この場を・・・わたくしはすっと背筋を伸ばして誇り高く通り過ぎることに決めました。
卑屈な態度も羞恥に染める頬も、ここには全くといって相応しくはなかったからです。
アルカイックな微笑みを唇に浮かべ、見たいなら好きなだけご覧なさい・・・そんな言葉さえ聞こえそうな態度で歩を進めました。
時折きらりと光る胸元のペンダントトップと髪飾りが、無言でわたくしたちの存在を主張していたのでしょう。
フロアを横切り・・・いくつもの席のお客様たちから・・・なにげな視線を投げかけられながら一番奥の窓際に案内されたのです。
その席は、窓に向かってゆったりと半円を描くテーブルが用意されていました。
他のフロアからは通路を隔てて一段低く、視線を遮るような設計になっています。
「ありがとう」 
椅子を引いてくださった支配人に御礼を言い、肩に掛けたストールをするっと落として・・・支配人に差し出したのです。
目の前に突然表れた白い背中に、ハッとした支配人の手がほんの一瞬遅れました。
「お預かりいたします」 
それでもプロの威厳を保ちながら、わたくしの手からストールを受け取ると腕にかけ椅子を押してくださったのです。