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第九 in the MOVIE 13

「今日はお漏らしをしても片付けてあげないよ。リニューアルしたばかりのホテルのカーペットを祥子さんのおしっこで汚したらだめじゃないか。」
「ぁ・・ゆるして・・」
指がまた・・・真珠をくるくるとこねてゆくのです。
鏡に映るスリーインワンのブラのカップの上に盛上がる、Gカップの乳房までがたゆ・ゆ・・と震えます。
もうわたくしは限界でした。
「選べばいいだけだよ。祥子さん。」
「あぁぁ・・・おねがい・・いっしょに・・・」
わたくしの汚れた身体を男性に口で清めさせるわけにはゆきません。それくらいなら・・・まだ・・・。

「こっちだよ。」
バスルームの照明を付けると、仲畑さんはわたくしを導くのです。切羽詰まった身体は無様にちょこちょことしか歩けなくなっていました。
床の冷たい感触まで、わたくしを責め立てるのです。
「さぁ、脱がせてあげよう。」
わたくしは抵抗できませんでした。
パールホワイトのハイレグパンティを足首まで・・・いえ足先まで抜かれることも考えられないほどでした。
「いいよ、見せてごらん。」
トイレに腰掛けることも許されませんでした。脚を広げて陶器を跨がされて・・・中腰で・・。
パンティを脱がせたまま、片手にはトイレットペーパーを持って仲畑さんが膝を突きます。
見られていると思うと・・・とても・・。
「我慢しなくていい。それともさっきみたいに触ってあげないとできないかな?」
「いゃやぁぁぁぁぁぁ・・・」

しゃぁぁ・・・・
真珠をシルクのパンティごしに撫で上げられた快感を思い出させられただけで・・・わたくしはとうとう・・・。
あまりの激しさに、止めることもできませんでした。
いえ・・・始まってしまったものを止めることで・・・この時間を長引かせることなど耐えられなかったのです。
「みない・で・・・」
わたくしは、仲畑さんのことを直視することなどできませんでした。
顔を背け、眼を瞑り・・・ひたすらこの羞恥の時間が過ぎることを祈るばかりでした。
ぽ・た・・・た・・
最後の雫が落ちたあと、ふっと柔らかな感触がわたくしの茂みを・・太ももの狭間を拭ったのです。
水音がして仲畑さんが全てを流し、ご自分の手を洗われたのがわかりました。
わたくしはトイレにへたりこむように腰を下ろしてしまったのです。
いままで、男性の求めるままに様々な羞恥に耐えてきました。でも、まさかこんな姿まで見せなくてはならないとは・・・思っていませんでした。
哀しいのではないのです。が、ぎゅっと瞑った眼からは一筋涙がこぼれ落ちていたのです。
「綺麗だったよ、祥子さん。」
そう言って、わたくしを立ち上がらせて抱きしめた仲畑さんは涙の痕を舐め上げてくださったのです。
浴室を抱きかかえられる様にして出る事ができても、わたくしは素直に仲畑さんを見ることができませんでした。
「怒ったかい。そうだね、私がなんでこんなことを望むのか理解できないかもしれないね。」
わたくしは、美しく整えられたままのベッドの上に横たえられたのです。

「祥子さんのあの姿でほら、こんなに・・・恥ずかしいほどになってしまった。」
ターコイズブルーのセーターもブラウンのスラックスも靴下も・・・ボクサーパンツだけを身に着けた仲畑さんがベッドに上ります。
そのパンツの前は、男性の先走りでべっとりと濡れていたのです。
「・・あ・・やぁん・・・」
そのままでわたくしのとなりに身を横たえた仲畑さんは、ランジェリーに押し上げられた乳房の隆起がつくるデコルテにまぁるく指を這わせるのです。

第九 in the MOVIE 12

「あんなはしたない姿はしませんでしたわ。」
「いや、あのスリットなら歩いただけでもバックシームのふくらはぎが露だったろう。見慣れない若い男の子には目の毒だよ。」
「がっかりなさいましたか?」
花嫁衣装の下に着ても見劣りのしないパールホワイトのスリーインワンになら本当は白かナチュラルのストッキングでしょう。でも、どなたにもお見せするつもりもなかった今夜は、花嫁の清純さを裏切る背徳の匂いのする黒のシームストッキングを選んでしまったのです。
「なにが、がっかりなんだい。素敵な大人の装いだよ。祥子の身体が綺麗に見える。ほら・・・祥子のGカップのバストも綺麗だけれど、こうして純白のランジェリーに縁取られた白い背中はとても魅力的だよ。」
「あん・・」
ぺろっ・・ 肩甲骨の下の窪みを、仲畑さんの舌がなぞるのです。
「は・ぁあ・・・ぁん」
ぺろ・・ん・・・ くねくねと背骨を這う舌の動きがわたくしの腰を震わせるのです。
「あぁ・・だめ・・・ね、お願い仲畑さん・・化粧室に行かせてください。」
お食事からここまで・・・わたくしはうっかり化粧室に行くタイミングを逃しておりました。
お洋服を脱がされて冷えはじめた身体に、思わぬ場所を愛撫されて・・・もよおしてしまったのです。

「行こうか。」
「なにをおっしゃるの?」
「化粧室へ行きましょう。」
「お使いになるのならわたくしが後にしますわ。」
「いや、祥子さんがしたいんだろう。」
あぁ・・・この方が何を望まれているのかが初めてわかったのです。
わたくしが排泄する姿をご覧になりたい・・とおっしゃっているのです。
「だ・め・・・そんな恥ずかしい事、できません。」
「そうか。それじゃひとりで行っておいで、そのかわり終わったらすぐ呼ぶんだよ。私が口できれいにしてあげるからね。」
「そんな、きたないこと・・・だめ。」
「どちらか選びなさい。そんな綺麗なランジェリー姿のままでおしっこをする姿を見せるか、終わった後の雫を私の口で拭わせるか。」
「どちらも・・だ・め・・」
「それじゃ、行かせないだけだ。ここでこうして・・・。」
「ああぁっ・・・」
くちゅ・・
仲畑さんの足を挟まれて付けることの出来なくなった脚の間を忍び入った彼の手が、ハイレグパンティごしに、花びらと敏感な真珠を撫で上げるのです。
一度、もよおしてしまった身体にはあまりに切ない激しすぎる刺激でした。
シャンパン・ミネラルウォーター・コーヒー・・・ 美味しかった飲み物がいまはわたくしを苦しめるのです。
大きく腰を振って逃れたくても背後からぴったりと仲畑さんに抱きしめられてしまっては、その動きすら押さえ込まれているのです。
「お願いです。ゆるして。」
「どちらを、選ぶ?」
「はずかしいわ。・・・だめ。」
「僕には潮を吹いて見せてくれたじゃないか。それとも、いまあの玩具をここに当ててあげないと言う事を聞けないかな?」
そうでした。わたくしはこの方にはじめて<潮を吹く>ということを経験させられたのです。廊下につながる扉を開けたホテルの一室の入り口で、近づく廊下の足音に怯えながら。

「ゃあぁあ・・だ・めぇぇ・・」
今度はバイブレーションを付けた指が真珠だけを捕らえるのです。
わたくしはもうどこまで堪えることができるか自信がありませんでした。ストッキングのシームを足指まで震えるように駆け抜ける快感は、溜まったものを吐出させようとさせるのです。
「こんな綺麗なランジェリーに恥ずかしいシミを付けるのかい?」
わななきの止まらないわたくしの身体を抱きしめながら、仲畑さんは耳元で囁くのです。

第九 in the MOVIE 11

彼の指はわたくしの頭に添えられて、ただひとつ彼が思うがままにできる上下の頭の動きを制御しはじめました。
「アレグロだ。そう、上手だ祥子。」
少し早められた動きに、わたくしは舌先を堅くとがらせて頭の上下に合わせて裏筋をはじくように左右に這わせていったのです。
「ピッチカート、もっと強く。あぁ・・そこだ。」
先端の鈴口に舌先が当たるようにわたくしの頭を引き上げ、強い彼の腕でホールドするのです。
「もっと・・ヴィヴァーチェ ああ、もっとだ。」
ふたたび再開された頭の動きに、わたくしは激しい舌の動きで答えました。
「アレグロだ。」
喉に触れるほど大きなストロークを・・・早いスピードで・・・仲畑さんの手がわたくしの頭を導きます。
「もっと、もっとだ。」
じゅぷ・・じゅぼ・・・ちゅぷ・・じゅぱぁ・・
もうこのまま、わたくしの口内で逝かれてしまうのかと思うほど、激しい動きが続きました。
塊は幾度もひくつき、太さを増して・・・。
「ああっ」
喉奥へ噎せるほどに突き入れられて。
わたくしはそのまま白い精液を喉へと浴びせてくださるのかと思っていました。
でもそんなことはありませんでした。
大きく3度ひくつくと、塊の硬度を保ったままでゆっくりとわたくしの口から引き抜かれたのです。

「そこに手を突いて立ちなさい。」
わたくしを立たせると、テレビセットの隣・・・大きな鏡の張られたデスクに向かって立つ様にとおっしゃるのです。
「そう、真っすぐにそこに手をついて。」
鏡面に直接わたくしは手を触れました。
パールホワイトのスリーインワンはセクシーなビスチェを着ているかのように見えました。鏡に映る黒のロングタイトスカートのヒップの頂きまでのまあるい張りが、コルセットに人工的に引き締められたウエストとのコントラストを一層際立たせていました。
「スリットから見えるシームが悩ましいですね。ショートブーツに隠れた足首とかかとを見たくなってしまう。」

映画は大フーガの上演シーンへと・・クライマックスへと進んでおりました。
でも、もうその台詞も見事な演奏もふたりのためのBGMでしかあり得なかったのです。

「そのまま、一歩後ろに下がって。」
「はい。」
鏡に手を突くためにわたくしは脚の付け根がデスクに付くほどに壁に寄っておりました。一歩、仲畑さんのおっしゃるままに後ろに下がったのです。
「その場でブーツを脱いで見せなさい。」
深く後中心にスリットの入った黒のロングストレートスカート。
わたくしの姿態が仲畑さんにどんな景色を見せるのか、想像はつきました。
上体を真っすぐに倒し、少しだけ前に出した左足の短い内側のファスナーを、続いて右足のファスナーを下ろしました。
足を出す度に、後ろ側になった足はふくらはぎから太ももの中央を横切るストッキングの上端までが柔らかな曲線をシームに強調されるように仲畑さんの眼に晒されていたはずです。ファスナーを下ろし切るときの少し膝を曲げた体勢は・・・ハイレグのパンティの一部まで見せてしまっていたかもしれません。
テーブルに片手でつかまって、わたくしは左脚を後ろに跳ね上げて左手でブーツを脱いだのです。同じ様に、右も。
左右のブーツを揃えてデスクの下に揃えて置きました。
再び、正面の鏡を見たときには・・・真後ろに仲畑さんが立ってらっしゃいました。

ちぃぃぃ・・・・
スカートのファスナーが下ろされます。
仲畑さんの手が離れた途端、黒のロングスカートはすとん・・と落ちていったのです。
「さっきのレストランで祥子さんの後ろを歩いていたサービスの男性は、あんな絶景を見ていたんだね。」
暖かな室内でも冷えはじめてきた剥き出しの肩を抱く様に仲畑さんの腕が回されました。

第九 in the MOVIE 10

「こっちへおいで」
わたくしを仲畑さんの開いた脚の間に引き寄せます。
「最後列に並んで座っていても、今日みたいに混んでいたらキスもできなかったね。」
「そんな事に思ってらしたの?」
「初演のシーンを見て、キスしたくならなかった?」
わたくしはとっさに答えられなくて目を伏せたのです。
「ちゃんと答えなさい。」
俯いたわたくしを、仲畑さんはやさしく頭に乗せた手で仰向かせたのです。
「祥子。」
「したくなりました。優しく触れてほしかったわ。」
「こんな風にかな?」
仲畑さんの指は、わたくしのたっぷりとドレープの寄せられたシルクのボウタイに手を掛けたのです。
「私を見つめているんだ。アンナ・ホルツのように。そうだ。」

ベートーベンは彼女を失う事ができないと、アンナ・ホルツが去ってはじめて自覚したのです。神の音楽の代弁者は、彼女をふたたび手に入れるために尼僧院へ足を運び謝罪をして・・・アンナ・ホルツとのパートナーシップを再び手に入れる事ができました。
二人は音楽を通して尊敬と愛情と生き方と豊かな感性を交わしてゆくのです。
ベートーベンは彼女の若い新鮮な感性を・・・彼女への愛を。
アンナ・ホルツは神の声に導かれる既成概念に囚われないベートーベンの音楽への取り組み方を。
一人の熱情ではない、二人の情熱が互いに高め合うような時間の中で・・・

しゅるっ・・・キシッ・・・
首もとを覆っていたボウが絹鳴きの音を立てて解かれてゆきます。
ベートーベンがアンナ・ホルツのドレスを脱がせるシーンなんて映画の中では一度もなかったのに・・・まるで、そんなシーンがあったようにさえ思えるのです。
長いストールのように垂らされた襟。シルクでくるみこまれたブラウスの釦まで・・・仲畑さんは無言のままで、1つ1つ外してゆきました。
ウエストまで、全ての釦が開けられたとき初めて・・・ほぅという仲畑さんのため息が聞こえたのです。
「いい香りだ。そしてインナーまでブラウスと同じシルクホワイトなんだね。そのブラウスを脱いで、見事なランジェリー姿を見せてくれないか?」
テレビから流れるベートーベンの代表作「ピアノ・ソナタ第32番」。
わたくしはあまりに美しいそのメロディに従う様に手首の釦を外したのです。
しゅ・・・しゅる・・・
スカートのウエストから引き出すブラウスの衣擦れの音さえ・・・高く響くのです。
全ての釦をはずして、わたくしは肩先から・・・白のシルクのブラウスを落としたのです。

『私のことを洗ってくれないか。』
楽譜を清書するアンナ・ホルツに生涯妻を持たなかったベートーベンが、もっともセクシャルな行為として命令するシーンでした。
『さぁ』
その台詞は、わたくしの背後で流れる映画からと・・・わたくしを見つめ下ろす仲畑さんの唇から同時に聞こえてきたのです。
映画のようにお湯で絞ったタオルで身体を拭う事はいまのわたくしにはできません。
わたくしに出来るのは・・・
「・・・はい。」
仲畑さんの脚の間で、ターコイズブルーのセーターと美しい調和を見せる彼のキャメルのスラックスのウエストへと手を伸ばしたのです。
ベルトを外し、ファスナーを下ろしてブラウンのボクサーパンツの中から半ば立ち上がった塊を引き出したのです。
『ジャァァ・・ ピチャ・・』
「くちゅ・・っ ぺちょぉ・・・」
湯を含んだタオルの立てる水音が背後の画面の中から流れます。
なにも持たないわたくしは、唇の内側にコーヒーの香りの唾液を口一杯に溜めて・・・舌を使って仲畑さんを清めるしかできません。
「くぷぅ・・・くちゃぁ・・・んちゅぅ・・・」
『あぁ・・・』
映画と同じに、満足そうな仲畑さんの喘ぎが聞こえます。
先端からボクサーパンツに隠された場所までを、丹念に何度も・・・舌先と唇で拭ってゆくのです。
先端は舌先をくるくると回す様に、ごつごつとした血管は裏の筋は舌先で広げて全ての皮膚を拭う様に・・・。

第九 in the MOVIE 9

「気に入ったかい。」
「ええ、まさかこんな風に二人でこの映画を見る事が出来るとは思いませんでしたわ。」
「映画館じゃない。寛いで見たらいい。」
仲畑さんは、もう一つの椅子をわたくしの隣に並べたのです。
コーヒーを前に、26インチほどのテレビ画面の前でわたくしたちは手を重ねあって<敬愛するベートーベン>を見続けていました。
互いの仕事の仕方やライフスタイルが解らず、23歳で叔母の尼僧院で生活するアンナ・ホルツはベートーベンのマイペースなライフスタイルに羞恥と戸惑いを隠し切れません。
それでも、仕事を続けたのは<第九>の初演が3日後に迫っていたからです。
ベートーベンがつくりあげる曲を清書してゆくアンナ・ホルツ。
恋人の建築設計技師の誘いにベートーベンの自宅と楽譜の印刷所との往復の間で、橋のコンペティションの話を聞かされても実は上の空なのです。
わたくしの右隣に座った仲畑さんは、時折ベートーベンのシーンでまるでアフレコのように字幕と同じ台詞を口にするのです。
画面での俳優さんの英語と字幕でイメージされていた<言葉>が、生のまま右の耳元でささやかれるのです。
わたくしが隣に居るとおもってらっしゃるせいで、決して大きなこえではないのです。でも、囁くような声でも見事に重なるその台詞はとても心に沁みいってきたのです。
時間に追われて清書をするアンナ・ホルツをベートーベンが見つめる度、わたくしは画面の中から仲畑さんに見つめられているような気がいたしました。

いよいよ、<第九>初演のシーンです。
聞こえないと・・指揮が出来ないと悩むベートーベンを励ますアンナ・ホルツ。
苦悩するベートーベンと同じ様に、仲畑さんはわたくしの手を握りシルクブラウスの肩に額を寄せるのです。
アンナは<第九>を恋人と聞くためにローブデコルテ姿でした。彼女に縋り・身を寄せるベートーベンはいまの仲畑さんよりも甘美な香りと温もりに包まれていたことでしょう。
テラス席ではなく、劇場の一番いい席をキープできる恋人と会場に来ていながら、マエストロ・ベートーベンの苦悩にアンナ・ホルツはサポートすることを約束するのです。弦楽器の一番後ろに座り、ベートーベンに向かってリズムと曲の始まりを合図する役割を彼女は果たします。
画面では、第四楽章が始まります。
ただ、向かい合って指揮をする二人・・・でも・・・。
「このシーン。とてもエロティックだと思わなかったかい?」
「・・・ええ、とても。精神が・心が愛を交わしているような、互いの奥深くを互いに知ろうとするような・・・そんな気がしました。」
「私はね・・・。」

突然のキスでした。
第九の合唱に合わせて強弱を極めるキス。
わたくしの身体は仲畑さんに引き寄せられ、椅子の上で身体の向きを変えられて・・・その間一度も唇を離してはいただけませんでした。
くちゅ・・・
弦楽器の囁くような曲調の時は唇を触れ合わすだけのように。
ちゅぷ・・ちゅぱ・・
テノールの力強い独唱は力強い舌でわたくしの口内を犯すように。
ん・・ぁ・・ぷちゅ・・くちゅぅ・・・
圧倒的な合唱はわたくしの全ての粘液を貪り尽くす様に・・・。
わたくしの身体は捻る様に引き寄せられ、唇を重ねたままで、第四楽章が終わり爆発的な拍手が響くときには、仲畑さんが座る椅子の前に跪いておりました。

『きみも一緒に、祝おう。』
第九の大成功に機嫌を良くするベートーベンはアンナ・ホルツを誘うのですが、彼女は恋人に肩を抱かれ・・・帰宅してしまうのです。
その後ろ姿を見る彼の淋しそうな表情を、わたくしは画面を見る事ができなくても充分に覚えていました。

「祥子さんのキスは第九以上に官能的だよ。」
わたくしの長い髪を両手で梳いて・・・肩の向こうに流してゆきます。
「ぃやん・・」

『まるでおならみたいだな。』
第九が成功した翌朝、機嫌のいいベートーベンにアンナ・ホルツは自分が作曲した作品をピアノで弾きながらいつものように酷評するのです。尊敬し敬愛しはじめたベートーベンの仕打ちにうちひしがれる彼女の葛藤も・・・わたくしの耳にはBGMのようにしか聞こえていませんでした。
なぜなら・・・

第九 in the MOVIE 8

「コーヒーをお持ちしました。」
白いクロスの掛けられたワゴンには、シルバーのポットとカップ&ソーサーが2つ。シルバーのピッチャーとシュガーポット。そして水のグラスが2つ。
「こちらでよろしいでしょうか。お済みになられましたら、ワゴンごと廊下へお出しください。」
「ありがとう。」
慣れた手つきでサインをされる仲畑さんの横顔は、わたくしの記憶のままでした。
伝票を渡すと、ルームサービスの男性は礼儀正しくお部屋を出てゆかれました。

じっとみていたわたくしの視線に仲畑さんは気づいていたのでしょう。
「何か付いているかい?」
「いいえ、お変わりがないなと思っていたんです。記憶の中の仲畑さんのままだなって。」
「ははは、ありがとう。あのとき随分恥ずかしいめに遭わせたから、ものすごく嫌なイメージになってるんじゃないかと心配していたんだよ。」
「そんな嫌だなんて。優しい方だと思っていましたわ。あの後、お礼をしたかったんですけれど、ご連絡先がわからなくて。」
そうでした。
涙が止まらなかったわたくしをこの方は救ってくださったのです。責め立てられ・泣き疲れて眠り込んだわたくしをこの方は優しく抱きしめて眠ってくださったのです。
翌朝朝食の席でちゃんと自己紹介までしてくださいました。
なのに、なぜかお互いに連絡先を交わす事はしませんでした。
『二人の感性が一緒なら、またいつか映画館で逢えるからね。 』
そう仲畑さんがおっしゃったからです。
「いいじゃないですか。連絡なんてしなくても祥子さんの一番大切な日にこうして映画館で逢えた。これも何かの縁でしょう。」
「ええ、そうですね。」
わたくしはあたたかいコーヒーカップを手にしました。子供が飲むみたいに両手でカップを包んで、香り高く好みよりも少し苦いコーヒーを一口いただいたのです。

「そう、見せたいものがあるんです。」
仲畑さんは、バッグの中から何かを取り出すとテレビセットに繋ぎました。
「えっ・・これ・・」
モノクロームのぶれの激しい画面。印象的にアップになる農村の人の顔・顔。後ろに流れるBGMは・・・先ほど映画館でみていた<敬愛するベートーベン>でした。
「もしかしてこれが仲畑さんの次のお仕事なの?」
「そうです。配給会社から渡された資料のうちの1つでね。」
この方は、洋画の吹き替えのお仕事をされる声優さんでした。
既に字幕が入っているDVDは、スピーカー設備が違う分だけ音の迫力には欠けましたが間違いなく先ほどの映画と同じものです。
このようなミニシアター系の映画は、ロードショーで吹き替え版をつくられることはほとんどありません。DVDを発売するときに、はじめて吹き替えの音声だけをデータにプラスするのです。
仲畑さんのおっしゃる資料には、きっと台本もおありなのでしょう。
今回・・・仲畑さんの声が似合うとしたら・・・。
「ベートーベンの吹き替えをなさるの?」
「ふふ、祥子さんには敵わないな。そうです。」
画面は最初の衝撃的なベートーベンの死の場面がはじまっていました。
マエストロ・・と呼び、寄り添う女性。その女性の顔を見て、ほっとしたように・・・それまでの痛みや苛立ちも洗い流すように・・・彼女を抱きしめようとするベートーベン。
短い、そして色彩に乏しいシーンなのに、二人の間の信頼の深さをくっきりと示しているシーンでした。
「どうですか?私には、似合いませんか。」
「ん・・お似合いだと思います。」
そう・・・素直に思えました。

映画の中で演じられているベートーベンは、学校の音楽室の肖像画やいままでの様々な映像で描かれているようなかんしゃく持ち風のエキセントリックな感じはありませんでした。
聞こえ難い苛立ちから、時にヒステリックになることはありましたが、人の気持ちを大切にする優しい瞳の理知的な男性でした。
アンナ・ホルツという、尼僧の姪にあたる若い女性の才能をいち早く認めたのも他の誰でもないベートーベンでした。
あの時代、女性の仕事や役割や能力は限定された範囲でだけ認められていました。
そこを逸脱した彼女の存在を黙殺するのではなく、畏怖しつつ受け入れてくれるのです。
あの夜に、初対面の泣きじゃくるわたくしを厳しく・そして優しく受け止めてくれた仲畑さんと同じ瞳でした。
『俺の譜面を違うと言って修正してくるんだぞ、若い女が。』
酒場で飲み仲間に、突然眼の前に表れた才能をどう受け止めていいか悩むベートーベンの姿は、かつて同じ様な言葉をわたくしの眼の前で旧友に向かって口にされた先輩社員のことを思い出させるほどだったのです。

第九 in the MOVIE 7

「わたくしをひとりにしないでください。」
今度はためらいもなくそうお答えできました。
「それじゃ・・・さきほどの、違うなって。」
「そうです。どうしても今夜あなたを一人にできなかったのは、祥子さんの気持ちとか状況ではなくて私の気持ちだと気づいたからです。」
「ありがとうございます。うれしいわ。いま、ここでキスをプレゼントしたいくらい。」
「はは、ここではお行儀が悪いといって怒られてしまいそうです。本当のごちそうは後にとって置きましょう。」
ふふふ、二人は共犯者の微笑みで最後の2つのデザートを分け合ってディナーを終えたのです。

「ありがとうございました。」
仲畑さんとわたくしにコートを着せて下さったサービスの女性に見送られて、わたくしたちは贅沢で軽やかなディナーを楽しんだレストランを後にしました。
わたくしは、てっきり帝国ホテルの外へ向かうのかと思っておりました。
なのに仲畑さんが腕を組んだわたくしを連れて向かったのは、本館のフロントだったのです。
「ここで待っていてください。」
まるであの夏の夜のように、今夜はまだ明るいフロントの前のロビーの椅子にわたくしを座らせると、フロントで・・・チェックインをなさっているようでした。
「お待たせしました。」
「ご案内いたします。」
ブラウンとベージュの内装に、きりっとした濃紺のユニフォームが似合うベルボーイが仲畑さんと一緒にいらしていました。
「こちらです。」
案内されたのは、本館12階のお部屋でした。
「9月に改装したばかりのお部屋です。ノースモーキングルームになっておりますので、誠に恐れ入りますが喫煙はご遠慮ください。」
「ああ、私も彼女も煙草は嗜まないから安心してくれ。」
「明日になりましたら、皇居の緑をお楽しみいただけます。なにかございましたらフロントへ。それでは、失礼致します。」
夜の10時近くに宿泊の荷物も持たずに飛び込みでくる二人連れ。
お行儀よくその関係を察したベルボーイは早々にわたくしたちを二人きりにしてくれたのです。
そのお部屋は、帝国ホテルのいままでのイメージとはちがうオフホワイトとダークブラウンで構成されたモダンなインテリアが特徴でした。八角形のテーブルの上に置かれたプリザーブドフラワーの赤が、アクセントになっていました。
夏にご一緒したお部屋よりは少しだけ小さかったでしょうか。それでもリニューアルして間もないお部屋ならではの、美しさに溢れておりました。

「急だったから、あまりいい部屋がとれなかった。申し訳ないね。」
お部屋に案内されて、窓辺に立ち尽くしているわたくしに仲畑さんはそうおっしゃいました。
「いえ、素敵だわ。帝国のイメージとは随分ちがうのね。それに、禁煙のせいかしら空気が違うみたい。」
「ははは。そう言ってもらえればほっとできる。さ、コートを脱いで寛ごう。実はいいものがあるんだ。」
わたくしからシェアードミンクのテーラードコートを受け取ると、ご自分のコートと合わせて、クローゼットに掛けてくださいます。
「何か飲むかい?」
「コーヒーがいただけるとうれしいわ。」
わたくしは、さきほどのデザートで甘くなっておりました。上質のシャンパンの後にこれ以上のアルコールをいただくよりは、温かなコーヒーを飲みたくなったのです。
「それは、いいね。」
早速ルームサービスに電話をして、コーヒーを二つ取り寄せてくださいます。
「お酒はここにも少しあるし。他に欲しい物は?」
「いえ、充分ですわ。」
1人掛けのソファーに腰掛けていたわたくしの顎を、ついと引き上げると、仲畑さんは唇を寄せたのです。
「ん・・・ぇ・・・」
この方は、どんなに優しく紳士的に見えても・・・Sの性質を持った方でした。
その行為は迷いがなく、わたくしを見事にリードしてくださるだけのものを備えていたのです。
「甘い、キスだ。」
コン・コン・・・ ドアをノックする音がしなければ、これ以上のことを求められていたかもしれません。
コン・コン・・・ 「いま開けます。」二度目のノックに仲畑さんはわたくしをジッとみつめてから離れると、ドアを開けたのです。

第九 in the MOVIE 6

「思ったよりも重症だったかな。」
釜で炊き上げられたつやつやのお米と、赤出しが二人の前に並べられました。
ここまでのお料理でお腹がいっぱい・・・と思っていましたが、香りのよい新米はするんと喉を下りていったのです。
コクのあるお料理で奢っていた口の中がすっきりと清められてゆくようでした。
「いえ、そんなことはないんです。あのとき仲畑さんにご無理をしてお付き合いしていただいて、随分気持ちが変わったんです。本当にありがとうございました。」
「いや、大した事はしてないですよ。」
「彼の事はもう過去のことです。でも、どうすれば恋ができるのか忘れてしまっているみたいな感じなんです。」
「もったいないな、祥子さんみたいな人が。」
「いえ、そんなこと。」
「本当に恋人はいないんだね。」
「ええ。」
「それじゃ、今夜祥子さんを独り占めしても許されるね。」
仲畑さんは、夏の時と同じに直球を投げてらっしゃいます。
「誕生日の夜だと知っていて、祥子さんを一人にするなんてできない。」
わたくしは、どう答えていいのか・・・迷いました。
映画館で仲畑さんとお逢いしたときから、こうなる予感はしていたのです。お食事をご一緒してしまったら、きっと一人で夜を過ごすことが淋しくなってしまう・・・と。
同時に、そんな気持ちで男性に身を任す女性をこの方がお好きでないことも存じ上げておりました。

「デザートでございます。」
「まぁ、素敵。」
答えを躊躇っていたわたくしのまえに、美しいプレートがまいりました。
「厨房から些細ですが、バースデープレゼントです。」
選んでください・・・と言われた4つのデザート。そのうち、わたくしと仲畑さんの選んだブリュレは2つ。あとは1つずつ、5つのデザートが盛り合わされておりました。
「ありがとうございます。お料理もとても美味しかったわ。お礼を言っておいてください。」
「恐れ入ります。板長も喜びます。」
わたくしと、仲畑さんの前に取り皿とお茶を並べて下がられました。

「違うな。」
黄色が美しいマンゴープリンに手をのばしかけた時、仲畑さんがそうおっしゃったのです。
「なにがですか?」
「あ、好きなものをとってください。そういう意味じゃないんです。」
「ふふふ、仲畑さんがマンゴープリンが大好物なのかと思いました。」
「私は和栗のブリュレがあればいいですよ。」
そうおしゃって、最初のオーダー通りのデザートに手を伸ばされたのです。
「栗、お好きですか?」
「ええ、この時期なら新栗でしょう。きっと美味しいはずです。」
「それじゃ、わたくしも。」
バニラアイスクリームののったブリュレは、優しく豊かな味わいでした。
「美味しい。それにこんなにいろいろのデザートをいただけるなんてうれしいわ。」
「良かったです。祥子さんにこんなに喜んでもらえて、私もうれしい。」
「仲畑さんは、あとは何を召し上がる?」
「ははは、甘い物は祥子さんにお任せします。どれでも好きなものを選んだらいい。」
「はい、それじゃお言葉に甘えて。」
こんなに甘いものをいただいたら、キスが甘くなっちゃうわ。
わたくしはそんな風に考えていました。
まだ、仲畑さんにお返事もしていないのに。今夜一人で過ごさなくてはならないことが・・・いやになっていたのです。

「祥子さん。」
「はい?」
「私が祥子さんと、1年に1日しかない祥子さんの誕生日を一緒に過ごしたいんです。ご一緒してもらえますか?」

第九 in the MOVIE 5

温物はずわい蟹のニョッキでした。ブルーチーズのソースは、和食というよりはフレンチのテイストを感じさせる出来です。2杯目をお願いしたシャンパンにもぴったりの風味です。
再会すると、早急にベッドに誘い肌を交わすことで相手を思い出させようとされる方も少なくはありません。でも、こうして会話で仲畑さんのフォルムを思い出させてくださる・・・そんなこの方の暖かさを、わたくしはお料理とともに噛みしめておりました。
「祥子さんは、いまのあなたがどうあれちゃんと自分を認めている。年齢などというものは単なる記号の1つで、私は私だとちゃんと示せるだけの自分を持っている。だから、なんのこだわりもなく私の質問に答えられるんです。素晴らしい。」
「ありがとうございます。そう言っていただけるだけでうれしいですわ。」
口直しの甘海老のスープ蒸しをいただきながら、微笑み返しました。決して意識してしていたことではないのですが、言われてみれば仲畑さんのおっしゃる通りなのです。

「でも、誕生日に祥子さんを一人にするなんて、新しい恋人は一体どんな男性なんだい?」
メインディッシュが並べられたところで、仲畑さんは思わぬことを口になさいました。
「えっ、恋人?」
「祥子さんのことだ。もう恋人の一人や二人いるんだろう?」
「いいえ、おりませんわ。」
わたくしはきっぱりとお返事をいたしました。
あんなに沢山の男性と肌を重ねておきながら・・・あまりに不誠実な答えでしたでしょうか。
それでも、わたくしには・・・。
「恋愛に臆病になったかな?それとも男嫌いにでも? あまりにもったいないがね。」
ふるふると・・・わたくしは首を横に振りました。
「言いよる男がいないわけじゃないでしょう。」
「ええ。」
「祥子さんのお眼鏡に叶わないレベルの男ばかりか?」
「いいえ。皆さん素敵な方ばかりですわ。」
「それでも?」
今度はわたくしは首を縦に振ったのです。
仲畑さんはとても不思議そうな表情をなさいました。
多分・・・そうなのでしょう。さきほど仲畑さんがおっしゃったように、いまのわたくしは恋人もいない淋しげな様子など微塵もなかったからでしょう。
「祥子さんは、嫌いな気に入らない男に肌を許すような女ではないしね。」
「いえ、どなたも本当に素敵な方なんです。好きな方達ばかりです。ご一緒しても刺激的で・・・わたくしにはもったいないくらいなんです。でも、まだ・・・」
「あの彼ほどは愛せない、か。」
こくん。わたくしは素直に頷いたのです。
「どうしてなのかわかりません。でも、気持ちがまだ動かなくて。」
「ん~~。」

「お味はいかがですか?」
難しそうな顔で首を傾げる仲畑さんに、熱いお茶を持って来てくださったサービスの女性が問いかけます。メインが出てからの話題に渋い表情をつづける彼に、お料理の味が悪いのかと・・・心配したようでした。
「美味しいですわ。北寄貝をこんな風にいただくのははじめてです。」
「ああ、いい味だね。この時期は北の食材が本当に美味しい。」
「ありがとうございます。この後御食事のご用意になりますが。」
「はい。お願いします。」
メインのお料理もそろそろ終わりになっていました。
「ご用意させていただきます。どうぞごゆっくり。」
サービスの女性に余計な心配を掛けていたのでしょう。ほっとした顔で厨房へゆく彼女に心の中で・・・ごめんなさい・・と呟きました。

第九 in the MOVIE 4

「お料理でございますが、メインをお選びいただけますでしょうか。」
「そうだな、祥子さんはどうしますか?」
「お肉も捨てがたいのですが、北寄貝も美味しそうですね。」
「ええ、今日はいい貝がはいっておりますので、おすすめです。」
「それでは、Bで。」
「はい。お食事はご飯とお蕎麦のどちらになさいますか?」
「夢ごこちの新米がいただきたいわ。」
「それじゃ、そちらにしましょう。」
「デザートは、4つからお選びください。」
「和栗かな。」「わたくしも。」
「ありがとうございます。それではアミューズからご用意させていただきます。」
カウンター越しに見えるセミオープンになったキッチンに、オーダーを取って下さった女性が下がってゆかれます。

背筋の伸びた黒のジャケットとタイトスカートの背中には、お正月まえの静かなひと時でもピーク時と変わらない緊張感を保っているようでした。
わたくしの視線を追っていらしたのでしょうか。
仲畑さんに向き直ったところで、彼はにっこりと微笑んでグラスを取り上げてくださったのです。
「お誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「こんな日に祥子さんに再会できるなんて、私は神様に愛されているな。」
「ふふふ。さぁ、どんな神様なのでしょうね。」
笑っているうちにアミューズが、そして前菜が届けられます。酒盗の和え物に白胡麻豆腐の生雲丹添え。なだ万らしい繊細で美しいお料理です。
いただきます、とわたくしは両手を合わせて箸を取り上げました。
白胡麻でつくられた葛寄せ豆腐はなめらかで、豊かな香りがいたしました。
おいしい、一口目で、わたくしはその香りに思わず微笑んでしまいました。

「聞いていいかな。幾つになったんですか?」
「はい、44歳になりました。」
「いい年齢だね。ほんとうに、いい年の取り方をしている。」
「はずかしいですわ。そうですか?」
「ああ。年齢を聞かれて、祥子さんは躊躇わずに口にしたね。」
「ええ、だって本当の年齢だもの。」
「実はね、多くの女性はその<本当>を言いたがらない。」
「若く見られたいから?でしたらわたくしもそうですわ。」
冷菜です、と届けられたお造りも本鮪の豊かな味わいが見事でした。
「若く見られたい、若くありたい・・・っていうことはいい事だと思っているんですよ。でも、それは年齢を詐称するのと意味が違う。私はね、自分の年齢をありのままに口に出来ないのは<今の自分を認めてない>んだと思うんです。」
「認めてない?」
「そう、いま眼の前にあるこの自分しかないはずなのに、それを認めないでどこか他にある別の自分ばかりを探してる。若くて夢想している年代ならともかく、年齢を重ねてきちんと自分と向き合わなくてはならない大人になっても、まだ<ここにはない何か>ばかりを探している女性を見ると、がっかりする。」
そうでした。この方は、女性に対して辛辣な面があったのだということを思い出しました。でもその辛辣さは、苦いばかりではないのです。きちんと理の通ったお話はわたくしも学ぶところの多いお話でした。

閑話休題(インターミッション) 15 -2

つい先ほど、アンケートを締め切らせていただきました。
ご協力ありがとうございました。

<EVE>のつづき、読みたいですか?
総投票数70票を頂戴いたしました。



1位/美貴さん・望月さん二人の続きを両方読みたい 41票/58.6%
過半数以上の投票を頂戴しました。
掲載時期はまだはっきりとは決めておりませんが、2007年上半期に2つの物語をお届けしようと思います。

2位/望月さんとの続きが読みたい 22票/31.4%
望月さんファン!!強し、です。

3位/このまま終わりでいい 4票/5.7%
このご意見は0かと思いましたが・・・。
クリスマスの余韻を楽しんでいるのに、「野暮なこと言いなさんな」というご意見でしょうか。

4位/美貴さんとの続きが読みたい 3票/4.3%
僅差で4位ですが・・・ん~。

ということで、2007年の作品の2つの逢瀬が決まりました。
まだ、何も書いていない状態なので・・・登場は楽しみにお待ちになってください。

第九 in the MOVIE 3

「待たせたね。」
映画館のほうから、独特の仲畑さんの声がいたしました。
さすがに声優さんです。多くのひとが会話を交わす中でもひときわ耳を捕らえます。
「いいえ、わたくしも少し前に降りて来たところです。」
「よかった。お腹も空きましたね。さ、行きましょう。」
隣に寄り添う仲畑さんは、わたくしを銀座方面ではなく日比谷へとエスコートされるのです。
「どちらへ?」
「急だったので、ありきたりのところしか予約できなかったんですよ。」
照れた様におっしゃる仲畑さんがわたくしを連れて行ってくださったのは、帝国ホテル本館中二階にある和食レストランでした。
「いらっしゃいませ。」
「先ほど予約した仲畑だけど。」
「お待ちしておりました。」
サービスの女性はわたくしと、仲畑さんのコートを預かってくださると席へと案内してくださいました。
和食とはいっても、シルバーとブラックで整えられたシックな内装です。
お正月にむけて飾られた<和>のオーナメントが鮮やかなアクセントになっています。

「飲み物は、シャンパンでいいかな?」
「はい。」
この方と以前お逢いしたときは、わたくしの気持ちを宥める為にと白のワインをお付き合いくださったのです。
あまりにショッキングにはじまった間柄によく考えれば、互いの好みさえよくわかっていないことに気づきました。
「ご用意しているのは、パイパーエドシックですがよろしいですか?」
「はい。グラスで。あとは、お料理に合わせて考えましょう。」
「承りました。」
テーブルは、窓際のお席でした。4つの椅子のうち隣り合う2つに腰掛けて、窓外の日比谷の人の流れを見る事ができました。
「祥子さんにぴったりなシャンパンでよかった。」
「そうなんですの?わたくしは、あまりまだいただいたことのないシャンパンなんです。」
「日本ではあまりポピュラーじゃないかもしれないね。実はね、マリリンモンローが愛飲していたと言われるシャンパンなんだ。」
「ふふふ。素敵ね。」
「今夜はモンローよりも魅力的な祥子さんと飲めるんだから、ぴったりだよ。」
「お世辞が過ぎますわ。」
あまりに大げさなお世辞には、もう笑って済ませるしかありません。
メニューをご覧になりながら、わたくしを見上げる仲畑さんを目線だけで軽く睨みます。
それを解っていらしてさらっと交わす仲畑さんに、大人の余裕と優しさが漂います。

「お決まりになりましたか?」
2つのグラスを並べたサービスの男性が下がると、最初に案内してくださった方がオーダーをとりにいらっしゃいます。
「華のコースにしましょう。今日は彼女の誕生日なんですよ。」
「おめでとうございます。」
「ありがとう。」
ホテルマンらしい華やかな笑顔の一言に、わたくしも思わず嬉しくなってしまいます。

第九 in the MOVIE 2

「ははは、やっぱりあんな偶然はないんですね。」
「ふふふ、そうですね。」
「祥子さん、今夜この後の予定はなにかあるんですか?」
「いいえ。特に決まってはいませんの。今日はわたくしのお誕生日なので、どこかでお食事をして帰ろうと思っておりました。」
「そうなんですか。」
仲畑さんは、少しだけ考える様にされたあとでこうおっしゃったのです。
「私でよかったら、お祝いをさせてください。映画が終わった後、そうですね・・・この映画館の前の広場のゴジラの前ではどうですか?」
ふふふ。入れ替えのための人でごった返す映画館の中や、最終回で並ぶ入り口ではなくこんな場所を選ぶなんて、流石に映画関係者のお1人だとわたくしはつい心の中で微笑んでしまったのです。
「あっ。解りませんか?ゴジラ。」
「いいえ、解りますわ。あのスターの手形がならぶ広場にあるゴジラの銅像の前ですね。」
「はい。そうです。それじゃ、後ほど。」
前の回の上映が終わり、ほぼ満席だったお客様が一気にロビーに出てらしたのです。
人波に、仲畑さんは入場待ちの後ろの列へ回ってゆかれました。

今夜は、第九に合わせて白のシルクのブラウスに黒のロングスカートを合わせていました。映画を見て、お食事をいただいて・・・暖かな場所を移動するだけでしたので、ブラウスの上にはカシミアの黒のストールと刈毛ミンクの黒のテーラードカラーのロングコートを着ておりました。足元は黒のショートブーツ。
深く後中心に入ったスリットを意識して、ストッキングはシーム入りの黒のものを、パールホワイトのサテンのスリーインワンで吊って、ショーツは同じ素材のハイレグのラインの目立たないものを選びました。
装う前に鏡の前で見たまるで花嫁のためのようなランジェリーは、黒のシーム入りのストッキングのせいでその清楚さを僅かに損なっているようでした。
まさか、仲畑さんとご一緒することになるとは夢にも思っておりませんでした。
もし、この姿をお見せすることになってしまったら・・・がっかりなさるかしら、と考えているわたくしがおりました。
この前にお逢いした夜は・・・わたくしが普通の状態ではありませんでした。泣きじゃくるわたくしを慰める為に、仲畑さんはわたくしと一夜を過ごしてくださったのです。
今夜の出逢いも偶然でした。
映画が終われば19:00近く。
お食事をご一緒して・・・その後・・・。
ふっ・・と会場の明かりが落ちて、わたくしは意識をはじまったばかりの映画に戻したのです。

地味に、淡々と・・・それでもベートーベンの生きた1800年代に、女性の持つ能力や才能を認め・側におかずに居られなかった人間としてのベートーベンの苦悩と、野獣と言われる彼を理解してその才能を尊敬し・惹かれずにはいられなかったアンナ・ホルツが描かれた映画でした。
23歳の女性が倍に近い年齢の男性に傾倒してゆく様・・・身体を交わしはしないのですが、重ねられる日常が二人の関係を示しておりました。
第九の演奏は、物語の中盤だったでしょうか。
予想通り第四楽章だけでしたが、第九の持つ聖なるイメージだけではない新たな物語を感じさせるシーンが印象的でした。

最終回ではありませんでしたから、どのお客様もあわてて席を立たれたのです。
わたくしは、映画館の反対の端に座っているはずの仲畑さんを目で探したのですが、見つける事ができませんでした。
待ち合わせは屋外だったのです。お待たせしてはいけないと・・・わたくしはエレベーターを待たずに、階段をつかって映画館を出たのです。

ゴジラの前には仲畑さんはまだいらしておりませんでした。
三々五々映画館から近隣の劇場へと向かう人波をコートの襟を掻き寄せて見つめておりました。
一人の贅沢な夕食も、それはそれでわたくしの大好きな時間でした。
でも、せっかくの一日。ご一緒に祝ってくださる方のいる幸せを・・・わたくしはしみじみと感じていたのです。

第九 in the MOVIE 1

日比谷の街へ着いたのは、午後4時まであと少しといった時間でした。
冬至も過ぎ陽の落ちるのも遅くなったとはいえ、公園に残るわずかな紅葉を楽しむには日差しは物足りない時間帯でした。

毎年、誕生日には席を押さえて楽しむ<第九>。
今年は仕事に追われ、気づいた時にはいつものオケのチケットは完売していたのです。最初は他のオーケストラのコンサートを探そうかと思いました。
でも、クライアントへ向かう地下鉄の中である映画のポスターを見かけたのです。
<Copying Beerhoven/邦題:敬愛するベートーベン>でした。
『1万人の第九』を指揮する佐渡 裕氏のコメントまで加えられていたそのポスターに、わたくしは随分と気持ちをそそられてしまったのです。
初演の時と同じ構成で演奏される<第九>。フルで演奏すれば、上映時間中全てをこの演奏で埋めなければならないのでそれは無理でしょうけれど、合唱つきの第四楽章は充分に楽しめそうだったのです。
年末まで、まだいくつかプレゼンは続いていおりました。わたくしは映画という気軽な媒体で今年の第九を楽しむ事に決めて・・・ゆったりと28日を過ごすために気がかりな仕事をてきぱきとこなすことに専念することにしたのです。

日比谷公園から帝国ホテルの前を通って、宝塚の東京劇場へ左折。その先の小劇場型のシネマコンプレックスでその映画は上映されていました。
クリスマス時期ならともかく、年も押し迫ったこの時期にあまりお客様もいらっしゃらないだろう・・・。そう思っていたのは大きな間違いだったようです。
指定席を取る都合で、上映時間の40分前に1階の受付に行ったわたくしは220席ほどの劇場のいいお席はほとんど埋まっている事を聞かされたのです。
「前の方のお席と、一番後ろの両サイドでしたらございますが。」
チケットブースの女性にそう言われて、わたくしは一番後ろの左側の席をお願いしたのです。
指定席なら急ぐ事はありません。
向かいの専門店街のお気に入りのお店をウインドショッピングして、上映されている5階の劇場に入場したのは、開場の15分前でした。
一昨年も、27日ごろにこちらの劇場にうかがったことをロビーで前の回が終了するのを待ちながら思い出していました。あのときは、ハリウッドで一世を風靡したミュージカルの作曲者の方と奥様の生涯を描いた物語でした。同じ様に待っているお客様の年齢が、想像以上に高かったのです。
今年は、たしかにあのときと同じような趣味人風の大人のお客様も多かったのですが、同時に若いカップルも随分見かけました。それも手に手に・・楽器ケースのようなものを持っている方も少なくはありません。
そんな方達が決まって口にするのが「のだめでね・・・」という言葉でした。
そう、コミックスの原作をドラマ化された『のだめカンタービレ』の影響なのでしょう。たった1作のドラマが、こんなにも来場者の層を変えるのかとちょっとびっくりしていた時でした。

「失礼します。祥子さんですよね。」
エレベーターから流れてきたお客様の一人がわたくしに声を掛けられたのです。
ヒールのショートブーツを履いたわたくしとほとんど同じ目線に、半白の髪と、ブラックメタリックの眼鏡と、キャメルのピーコート姿の男性が立っていました。
「仲畑さん?」
「ああ、そうです。覚えていてくれましたか。」
今年の夏。やはり映画館でお逢いしたその方は良く通る丸くて柔らかい声で微笑むようにお返事を返してくださったのです。
「その節は・・・」
「いえいえ、あのときのことは言いっこなしです。」
随分と年上の方のはずなのに優しい少しはにかむような微笑みも、記憶のままでした。
「また映画館でお逢い出来ましたね。」
「はい。まさか、この間みたいに隣の席っていう偶然はないでしょうね。」
「わたくしは、このお席ですわ。」
「どれ・・・。」
列は同じでした。でも座席番号はそれぞれ右と左の端を示していたのです。

閑話休題(インターミッション) 15

クリスマス・ウィークエンドの一夜を描いた<EVE>お楽しみいただけましたか。
二人の男性とのちょっと甘いバーでの一時。
やきもきしながらご覧になってらした方もあるかと思います。

『えっ~ここで終わりなの?』
そう思われた方のために、27日までの1日半期間限定でアンケートを実施します。
題して・・・
<EVE>のつづき、読みたいですか?


皆様からのアンケート結果で、2007年のどこかのタイミングで(もちろんあまり遅くならないタイミングで・・・ですが)ご希望のつづきをお届けしようと思っております。
ぜひ、皆様のご意見をお聞かせください。


それと・・・もう一つお知らせがございます。

EVE 7

「サンタじゃなくても、こんなに素敵なのに。解っているでしょう。」
今夜美貴さんとご一緒すれば明日迎えにきてくださるのは望月さんなのです。
いま、ここで『望月さんは?』と口に出せば・・・美貴さんは望月さんも引き入れて・・・結局二人きりの時間は持てなくなるでしょう。
それくらいなら、今夜望月さん以外の男性に乱される姿を見せる事なく、明日の夜をたとえつかの間でも望月さんと二人で過ごしたいと思ったのです。
「それとも、美貴さんと一緒がいいの?」
望月さんが首を横に振ります。
「ね、明日の朝迎えに来て。明日は一緒にいられるわ。」
今度はわたくしが望月さんの耳元に唇を寄せたのです。彼にだけ聞こえる声で・・・。
「わかりました。」
わたくしに向かってはっきりおっしゃった答えは、美貴さんがこちらに戻ろうとされていることを教えてくれたのです。

「ん~、仲がいいなぁ。」
「美貴さん、酔ってらっしゃるでしょう。いつもと変わりませんわ。ねえ、望月さん。」
「はい。」
「そうかなぁ。」
美貴さんは首をかしげながら、カウンターに腰を下ろされました。
いつのまにか奥のボックス席は満席になり、カウンターの反対の端には2組のカップルが座っていたのです。
「マスター、最後の乾杯のシャンパンを頼む。」
「はい。」
「望月さんはいらしたばかりなのに。」
きっとホテルの手配も取れて、移動のためのタクシーもこちらに向かっているところなのでしょう。
「いいよな。」
「はい。もう随分いただきましたから。」
振り向くわたくしの瞳を見つめて、望月さんはそう答えたのです。
「祥子様、今年のお正月は?」
「今年は、田舎で過ごす予定ですの。」
「そうですか。いえ、ばたばたしていてお誘いできなかったので、どうなさるのか気になっていたんです。」
「お気遣いありがとうございます。」
「今年はご一緒できないのか、淋しいな。」
「はい。」
1年前のあの4日間を、まだお二人ともに忘れていらっしゃらないのがわかりました。
「もう、これからご一緒するのに。」
「あははは・・・欲張りだね。」
「そうですわ。」

お待たせしました マスターが3人の前に3つのシャンパングラスを並べてくださいます。
「これからの祥子さんとの時間に。」
「皆様のご活躍に。」
「メリークリスマス♪」「メリークリスマス♪」「メリークリスマス♪」


祥子からの手紙ー18

今日三度目の乾杯でグラスを開けるとほぼ同時にタクシーが到着したと知らせがありました。
わたくしは来たときと同じにミンクを羽織り、クラッチバックだけを持って地下のバーを後にいたしました。
待っているタクシーは2台。
その1台にわたくしは、美貴さんと二人で乗り込んだのです。
「明日電話する。迎えに来てくれ。よろしく頼む。」
「はい。」
美貴さんは望月さんにそれだけを言うと、見送ってくださる彼を置いていつものタワーホテルへタクシーを向かわせたのです。

翌朝。まだバスローブだけを纏っているわたくしに、シンプルな黒のドレスとランジェリーの一式を揃えて持って来てくださったのは望月さんでした。
二日酔いだったのかもしれません。
まだ少し眠りたい・・・とおっしゃる美貴さんを置いて、わたくしは望月さんにセルシオで送っていただきました。
もちろん、自宅の前に望月さんのお部屋に寄り道いたしましたけれど♪

お二人との夜のことは、また機会がございましたらお話いたしましょう。
 (もちろん、知りたいっていうリクエストがございましたら・・・ですが(笑))
クリスマス・イヴ・イヴの物語は、ここまでです。
みなさまも素敵なクリスマスの思い出ができましたでしょうか。

EVE 6

「はい。」
ブルーの袋の中には7センチ四方の奥行きは3センチほどでしょうか。箱がブルーのラッピンングペーパーで包まれていました。
留められたシールは、わたくしが思ったブランドのものでした。
ゆっくりとシールを剥がしてゆきます。
中にはブルーの化粧箱がありました。
「さぁ、開けてみてください。」
わたくしの手もとを二人の男性と、正面に控えた女性のバーテンダーがご覧になっているのは解っていました。
箱だけを取り出すと、まっすぐに蓋を・・・開けたのです。
「わぁ・・・綺麗ね。」
ダークブルーの箱の中には、クリスタルの雪の結晶が1つ入っていました。4センチくらいの大きさのクリスタルの塊は、輪郭のカットだけでなく、面もいくつかに研磨されていて動かすたびに虹色の光をまき散らしたのです。
「これは、今年のデザインね。」
台紙を引き上げると、それは細い黒のベルベットがネックレスのようにトップに付いていたのです。
「そうですよ。今年のクリスマスオーナメントです。ジュエリー用ではないので、脆いかもしれませんが、年末から年始の一時だけを楽しむならこれでもいいでしょう。」
望月さんがわたくしの手からペンダントを取り上げると、首に掛けて・・・ちょうど鎖骨の少し下に雪の結晶がくるくらいにリボンを結んでくださいました。
「お客様の肌の上でもきらきらして、綺麗ですね。」
わたくしに、マッカランを注いだショットグラスを出しながらバーテンダーの女性がペンダントヘッドから眼をそらさずにそうおっしゃいます。
「今日は襟のあいたものを着て来てしまったから。きっと黒のハイネックの上だともっと綺麗に見えると思うわ。」
「いや、祥子さんの雪白の肌にぴったりだ。雪の女王だね。」
「ほんとうです。お似合いです。」
望月さんまでが、わたくしを覗き込むようにしてご覧になります。
「ありがとうございます。嬉しいわ。お二人とお逢い出来ただけでもうれしいのに、こんなプレゼントまで。本当に、うれしい。」
ひんやりとしたクリスタルの肌触りが、お酒で火照りはじめたわたくしの肌をそこだけ冷やしてゆくようです。
「祥子さんが喜んでくれればそれで充分です。」
カラン・・・ 美貴さんの手もとのカルヴァドスが空いたようです。
次のお酒をマスターが勧める前に、美貴さんは手で制して立ち上がりました。
「ちょっと電話してきます。待っていてください。」
「ええ。」
多分、あのタワーホテルへ・・・でしょう。わたくしは美貴さんの後ろ姿を微笑んで見送ったのです。

「サンタさんをしてたんですって?お疲れさま。」
今度は望月さんに向き直って、改めてそうお声掛けしたのです。
「もう、そんなことまでバレちゃってるんですか。恥ずかしいな。」
「いいえ、そんなことはないわ。きっと似合ったでしょう。素敵なサンタさんだったと思うわ。わたくしのところにもそうして来てくださったらいいのに。」
ふふふ・・・ 小さなグラスの中のマッカランを唇に流し込みます。
凝縮された香りが、口腔の粘膜に触れる事で花のような香りを無限に広げてゆくのです。
「サンタの姿で来たら、今夜を僕と過ごしてくれましたか?」
耳元に寄せた望月さんの唇が、熱い吐息とともにそんなことをおっしゃるのです。

いらっしゃいませ メリークリスマス・・・
どよどよと団体のお客様のいらっしゃる気配が背中にいたしました。
お二人いらっしゃるバーテンダーさんも、マスターもこのときばかりは新しいお客様にかかり切りになっていたのです。

ちゅっ・・・ わたくしは微笑んで振り向いて・・・望月さんの唇にキスをしたのです。
本当に、触れるようなキス。
でもそれは約束のキスでもありました。

EVE 5

「いまの社長にあたる石塚さんのお兄さんには子供がないそうなんです。石塚さんは離婚したとはいえ、息子が一人。何を思ったか、会長である父上から息子を日本へ連れ戻せ・・・と命令が下ったみたいです。
もう、耕市くんも立派な大人ですからね、クリスマスを過ごしに行ってあげないといけないわけでもないのでこの数年は足を向けなかったらしいですが、今年はそうは行かないようでぶつぶつ言いながら3日前に旅立ちましたよ。」
「そう、大きな会社の社長さんも大変ね。」
「ええ、それで石塚さんが留守の今日、祥子さんと過ごしたと知ったらあとで酷く悔しがるでしょう。」
「ふふふ、そんなこと。で、山崎さんは?」
わたくしはもう1人の方の消息を訪ねたのです。
今日は左に座る美貴さんも、右に座る望月さんもわたくしに触れてはいらっしゃいません。大人しくお行儀よくされてらっしゃいました。
それでも、なぜかお二人からは熱気のようなものが流れ出して来て、心地良くわたくしを包んで下さいました。
「山崎様は中国です。今回は北京の少し奥だとおっしゃってました。」
望月さんの前には、2杯目のお酒が置かれていました。今夜はリラックスされているのでしょう・・・すでにラムのオンザロックを召し上がっていました。
「中国っていうことはお仕事なのね?」
石塚さんがプライベートでカリフォルニアなのです。山崎さんは違うのではないかも・・・と思いながらつい確かめてしまいます。
「ええ、縫製工場の業務提携のための訪中だそうです。このごろ中国の南では工賃も上がってしまうので、北の奥の方にも進まざるを得ないみたいですね。」
美貴さんが詳しく聞かせてくださいました。

「それは・・・たしかに中国は旧正月だから、クリスマスだ年末だといってもいつもの週末や月末と変わらないとは聞いていますけれど。そんな時期まで大変だわ。」
「国際電話で、祥子さんのいまの言葉を聞かせてやったら、山崎のことだから感激して帰ってくるかもしれませんよ。石塚さんにも掛けてみましょうか。
国際電話で、いやがらせ。いいな・・。ふたりの悔しがる顔が眼に浮かぶようだ。」
本気ともつかぬ真面目な顔で、美貴さんがそんなことを口にします。
「もう、そんなことなさらなくたって宜しいじゃないの。」
「いや。この一年の間、僕以外のだれかが祥子さんと一緒だと聞かされるたびにどれだけ悔しい想いをしたことか。やっとその想いをあの二人に・・・。」
「わかりました。それじゃ、今夜は美貴さんの気が済むまでわたくしがお付き合いいたしますわ。」
カウンターの上、ロックグラスの脇になにげなく置かれた美貴さんの大きな手に、わたくしは左手を重ねたのです。
「石塚さんも、山崎さんも大変な想いをなさっている時に、そんな電話なんてしちゃだめよ。わたくしに免じて・・・お願い。」
右隣の望月さんの表情は、背中になっていてわたくしにはわかりませんでした。
今夜を美貴さんと過ごすと口にしたわたくしに嫉妬を感じさせるような表情を浮かべているのでしょうか?それとも、アイスドールのような無表情でわたくしたちをご覧になっているのでしょうか。
「祥子さんにそこまで言われたら、我慢するしかないじゃないですか。もう、勝てないな。約束ですよ。」
「ええ。」
わかったわ、というふうにわたくしは頷きました。
たしかに美貴さんのおっしゃるように、石塚さんや山崎さんや望月さんとはお逢いしていましたけれど・・・美貴さんだけとは一度もお目にかかれなかったのです。
この週末。溜まった疲れを取ろうとお休みするつもりでおりました。
この方とご一緒なら、それなりの楽しい時間を過ごせることでしょう。
望月さんへは・・・いえ、彼ならわたくしのこの気持ちをきっと理解してくれることでしょう。

「ああ、そうだ。望月、持って来てくれたか?」
「はい。これですね。」
望月さんがカウンターのわたくしの眼の前に置いたのは、小さなブルーの紙袋でした。
見覚えのあるシルバーのスワンのマーク。
「祥子さんにクリスマスプレゼントです。」
「あら、本当に?」
「思いついて手に入れたものなので、高価ではないですがきっと似合うと思って。開けてみてください。」

EVE 4

「いやいや、ご謙遜だね。」
「ふふふ、そういうことにさせてください。ところで、石塚さんと山崎さんは?」
そう・・・いつもなら、もうご連絡がいって階段の上のドアが開く音が聞こえるころです。
まるでこの空間を魔法で閉じ込められてしまっているみたいに、今夜はまだどなたもお越しにならなかったのです。
「石塚さんはね・・・」

パタ・ン・・・ ほんの少しだけ空気が動いて、重い靴音がいたします。
「おっ来たね。お疲れさま。」
「お待たせしました。ご無沙汰しております、祥子様。」
「サンタ役、おつかれさまでした。」
わたくしを案内してくれたのと同じ女性のバーテンダーさんは、今度は望月さんをわたくしの右に座らせたのです。
左に美貴さん、右に望月さん。
なんて素敵な両手に花でしょう♪
「まずは、乾杯かな。」
「ええ。」
「お待たせいたしました。」
マスターが持って来て下さったのは、2つのシャンパンのグラスと・・・今度のわたくしのグラスには鮮やかなオレンジ色のマンゴーがカットされておりました。
「オーストラリア産の完熟マンゴーが入荷しましたので、香りが強いのですが味はあまり癖がないのでこうして楽しんでいただくには最適かと思いましてご用意しました。」
シャンパンゴールドの中に浮かぶ、オレンジゴールドのキューブ。
苺とはまた違うポップに美しいグラスでした。
「ありがとうございます。うれしいわ。」
「それじゃ、改めて。Merry Christmas!」
「Merry Christmas!」
「Merry Christmas!」
色と気泡を楽しむ為に極薄に創り上げられたシャンパンのためのグラスを眼の前に掲げ・・・立ち上る泡越しに視線を交わすのです。
望月さんの優しい微笑みは、夏のあのとき以来でした。・・・いえ、一層魅力的になっておりました。

「お話途中だったのではないですか?」
望月さんが、いらっしゃった時の二人の話し声から推察したのでしょうか。そんな風に、場を元に戻してくださいました。
「そうそう、石塚さんと山崎のことを話していたんだ。」
カットされたマンゴーを口に放り込みながら、美貴さんが話を続けます。
「石塚様はカリフォルニアですよね。」
「カリフォルニア?」
「そうなんですよ。実は離婚した奥さんが子供連れでアメリカへ行ってしまいましてね。」
「それで、ご家族で過ごす為に?お子さんはまだお小さいんですの?」
「これだけは習慣みたいなものだそうです。耕市くんが小さいときに、自分のところだけはクリスマスなのに他の家と違って父親がいないと泣いたそうで、それ以来クリスマス休暇だけは離婚した奥さんと息子と年に1度だけ水入らずで過ごす事にしたそうです。」
「まぁそうなの。」
「でも、もう今年23かなぁ。たしか耕市くんは。」
「はい、カリフォルニアで建築系の大学を卒業後院へ進んで、いまはハーバードでMBAを取得しているところだとおっしゃってました。」
望月さんが、美貴さんの言葉をフォローしてくださる。相変わらずの・・・阿吽の呼吸だわ。
「今年は、日本へ帰る様に口説きに行っているはずなんですよ。」
「えっ。」
「石塚さんの会社のことは、祥子さんご存知ですよね。」
「ええ、パーティにうかがってはじめて。お父様とお兄様にもご挨拶させていただいたわ。」

EVE 3

「いまはどちらなの?望月さん。」
「ああ、品川ですよ。ここで旨い酒を飲むのに、セルシオってわけにはいきませんからね。車を置いて、サンタの服装を着替えてここに戻ってくることになってたんです。家を出る前でよかった。」
「サンタさん?望月さんが?」
あのがっしりとした上背のある姿でサンタさんなら・・・きっと素敵だったでしょう。
「実はね、今日は大使館関係のホーム・パーティに招かれていたんですよ。彼らは、クリスマスイブとクリスマスは家族で過ごすので、僕たちみたいな仕事関係者は今日招待されて食事でもっていうケースが多いんです。」
「大使館ですか。素敵ですね♪」
「大抵は本国に帰ってしまうんですが、何人か日本びいきの大使や外交官もいましてね。アメリカ・イギリス・イタリア・フランス・ドイツ・オーストラリア・・・あたりの大使館のパーティを今日一日ではしごです。」
外為のディーリングをお仕事になさっている美貴さんならではの、人脈なのでしょう。
大きな為替市場のある国を中心に・・・こんなお付き合いもなさっているのだと、はじめて知りました。
「大変でしたのね、お疲れさまです。」
「いや、まぁ楽しかったですけれどね。どちらの大使館にもお子さんがいらっしゃるので、セルシオで行って、望月が大きな袋を担いでサンタの姿でプレゼントを渡すんです。」
「まぁ。それじゃ、人気は望月さんがひとりじめね。」
「ええ、子供達は25日の朝まではプレゼントを開けられないのでじりじりしてましたけど、ツリーの下に飾って嬉しそうでしたよ。その後、軽くそれぞれのお国料理をいただいて・・・もちろん、望月は別室でですけどね・・・で次の大使館へ。」
「パーティのはしごね。」
「望月は、運転をしないといけないので酒を飲ませる訳にはいきませんでしたから、全部終わったところで僕をここに下ろして、車を置いて一緒に飲もうと・・・まあ、そんな約束になっていたんです。」
「ふふふ。見たかったわ、望月さんのサンタさん。」
「イギリスの大使がたしか写真を撮ってましたから、今度お見せしますよ。」
「楽しみだわ。」

「次はいかがしましょうか。」
美貴さんがはしごをしてらした、大使館のパーティの様子をうかがううちにわたくしの前のシャンパングラスは空いておりました。
「そうね、望月さんとも乾杯がしたいからもう一杯シャンパンをいただけます?」
「はい。承知いたしました。」
マスターが、バカラのグラスに氷をうかべたチェイサーを用意するとフルートグラスを持って下がってゆかれました。
「美貴さんとは、お正月以来ですね。その節はお世話様でした。」
「いえ、あのあと山崎や石塚さんや望月からも祥子さんのことは聞かされてて、悔しい想いをしてたんですよ。」
「山崎さんとご一緒の時は、たしか石塚さんと祇園でらしたんでしょう。」
「ええ。『うちらを呼んでおいて、上の空なんていけずやわぁ。』って馴染みのお姐さんになじられましたよ。」
「いけない人ね。」
「石塚さんに夏にパーティにお誘いいただいた時には・・・」
「NYで野暮用をこなしていました。」
「でしたね。望月さんがそうおっしゃっていましたものね。」
「海外には良く行かれるの?」
「いまはもう随分少なくなりましたね。以前はちょくちょく出向いていましたが、業務提携もスタッフに任せられる様になりましたからね。年に2・3度っていう感じでしょうか。祥子さんは?」
「わたくしはたまに。会社員時代は良く海外出張をさせられましたけど、いまはもうほとんど自分の好奇心任せで・・・っていう感じですね。」
「語学は?」
「お恥ずかしいのですけれど、日本語だけ。英語はきわめてブロークンですの。学生時代に真面目にお勉強しなかったせいだわ。」
本当に外国語は苦手だったのです。実際に現地に飛んでしまえばあまり困る事はないのですけれど・・・語学が出来るというよりは、勘がいいという類いなのでしょう。

EVE 2

「久しぶりだね 祥子さん。」
「ご無沙汰しております。美貴さんはお元気そうね。今夜はお1人?」
「勿論。」
美貴さんの右側の椅子・・・はじめてこのバーにうかがったときに座った椅子を薦められたのです。
バーテンダーさんに引かれた椅子に、わたくしはすとん・・と腰を下ろしました。
「いらっしゃいませ」
こちらのマスターが・・・お逢いするのは梅雨時に山崎さんと伺ったとき以来でしょうか。熱いおしぼりをお持ちくださいました。
手袋の苦手なわたくしには、ほっとする温かさです。
「マスター、日頃の行いがいいと、ほらこうして素敵なプレゼントが貰える。」
「わたくしがプレゼントですの?」
「祥子さんに逢えたことが、さ。」
いつもは厳しいオーナーの、嬉しそうな顔にマスターも笑みを浮かべてわたくしの前にコースターを置いてくださいました。
「私共からは、こちらをプレゼントさせていただきます。」
まるで手品のように・・・マスターは、今度はフルートグラスにカットした苺を入れたシャンパンを出してくださったのです。
「Merry Christmas!」「Merry Christmas!」
「ははは、イヴ・イヴだけどね。」
「ふふふ♪
美貴さんはカルヴァドスの香り漂うロックグラスを上げました。
わたくしはもちろんシャンパンでお応えしたのです。
週末の土曜日。まだ23日でしたが、ちょっとこんな風に乾杯がしたくなる楽しい気分が漂っておりました。

「祥子さんこそ1人で、珍しいですね。」
「ふふふ、わたくしはいつもこちらに伺うときは1人でしょう?」
「あはは、そうでした。今夜は?」
「お友達とパーティをした帰りなんです。」
「ほう。」
「若い女の子達ばかり10人で、ね。みんな優しい恋人が迎えにきたので、わたくしはひとりこちらでお酒を楽しもうと思って伺ったのよ。」
「祥子さんだって、その気になれば迎えにきてくれる男性の一人や二人簡単に用意できたでしょうに。」
特にオーダーもしないのですが、わたくしの好みをご存知のマスターがフルーツと生ハムを使ったオードブルを並べてくださいます。
先ほどのパーティでいただいたマムよりも、少しドライなドンペリニョンにぴったりのお味でした。
「ふふっ、そんな素敵な恋人はおりませんもの。ところで美貴さんは?」
「ああ、僕はね。」
「お電話繋がりました。」
話しかけた美貴さんはマスターから電話の子機を受け取ると、わたくしにごめん・・と手を上げて電話に向かって話しはじめました。

「いま、どこだ?」
「ん、ちょうど良かった。前に預けていたブルーの紙袋あったろう。セルシオのグローブボックスにしまっておいたやつ。」
「そう、それ。持って来てくれ。」
「ああ、ここにいらしている。ああ、祥子さんだ。」
「それだけでいいよ。気を付けて来てくれ。」

「どなた?」
多分・・・美貴さんのお話様でだいたいの想像はついていました。
「望月です。そうですね20分くらいで来るかな。」
「ふふふ、よかったわ。誰かお約束の美女からのお電話かと思ってドキドキしちゃった。」
「そんな電話なら繋がないよな。」
「はい。」
美貴さんから子機を受け取って、マスターがおどけた返事をなさいます。
もう・・どこまでが本気なんだか♪

EVE 1

クリスマス・イブ・イブ。
いつのころからかしら、12月の23日をこんな風に呼ぶ様になったのは。
キリスト教の信者の方には怒られてしまいそうですけれど、今上天皇のお誕生日がたまたまその日になった18年前から、翌日のクリスマス・イブと合わせて25日までの3日間は恋人達のための休日になってしまったみたいです。
わたくしは12月に入って久しぶりの休日になったこの日を、年下の素敵な女友達とのクリスマス・パーティに当てていました。
とはいえ、わたくし以外は皆さん素敵な恋人さんがいらっしゃる魅力的な方達ばかりです。本格的な恋人との時間の前に、ちょっとした女同士の楽しい時間・・・そんな趣旨の恒例のパーティでした。

キュートな装いのお嬢さんたちとご一緒でしたので、今年のわたくしはレースとオーガンジーのおおきなフリルカラーがポイントになったノースリーブのブラウスと、同じ素材のフレアスカート、それにベルベットのジャケットを羽織りました。
スカートは裏地がついているので透けたりはしないのですが、ブラウスはそうはゆきません。いつもでしたら黒のランジェリーなのですが、女性のお友達と一緒ならと肌に近いヌーディなシャンパンベージュのサテンのスリップに同じ色のレースのブラとハイレグのパンティ、そして柔らかなスカートの素材を考えて薄手のパンストを選んだのです。
パーティなのでリボンをアクセントにした革のバックストラップパンプスとクラッチバッグだけが今日のアクサリーです。20日の声を聞いてから急に冷えて来た気温に合わせて選んだミンクのコートは、いまはクロークにお預けしてあります。
シャンパンで乾杯をして、フレンチの粋を尽くしたオードブルとデザート。生ガキとローストビーフは相変わらず出色の出来でした。
話題は多種多様です。今夜のファッションから今年の恋人へのプレゼント、仕事の悩みもちらほら・・・。そんな相談にのるのも楽しいものです。
全員で10名ほどでしょうか。わりとオープンな雰囲気のパーティでしたから、話の途中でそのまま恋人へのプレゼントを買いに行くコもいたりしました。
気の置けないレストランに無理を言って、午後3時からスタートしたティー・パーティは、午後6時すぎ・・・祝日の土曜日にもお仕事をしている多忙な恋人を持つ女性達を王子様が迎えに来てくれる時間にはお開きになったのです。

若くて楽しい女友達とのひとときはとても楽しく過ごせました。
ですが・・・宴の後のもの寂しさがわたくしを、久しぶりにあの地下のバーへと向かわせたのです。
クリスマス連休の初日。
きっと素敵な女性とご一緒に思い思いに過ごされていることでしょうから、多分あの方達はいらっしゃらないでしょう。
いつものようにバーから連絡が行っても、駆けつけてくることなど出来ないはずです。
もしどなたかのお顔を見る事ができたら、軽くご挨拶だけして失礼するつもりでした。
どなたもいらっしゃらなくても、美味しいお酒を頂戴して、贅沢な空間で疲れている心とからだをそっと癒せればいいと・・・そう思ったのです。

隠れ家のような雰囲気の入り口のバーは、クリスマスの今夜も特にツリーなどを飾る事もなく、いつもの通りのひっそりとした佇まいを見せておりました。
急な階段をゆっくりと降りてゆくと、その先にはシンプルなツリーが飾ってあるのが見えました。
まだ時間が早いせいでしょうか。人のざわめきも聞こえてきません。
本格的なバーにお客様がいらっしゃるまで、まだしばらくお時間が必要なのでしょう。
こんな時間にひっそりとお酒をいただく・・・わたくしの大好きな贅沢な時間でした。
「いらっしゃいませ。」
わたくしのパンプスの音に気がつかれたのでしょう。女性のバーテンダーさんが声を掛けてくださいました。
「お久しぶりでございます。いらっしゃいませ。」
「ご無沙汰しちゃったわ。お席ある?」
「ええ、もちろんです。コートをお預かりします。」
さりげなく後ろに回ってミンクを受け取ってくれるのです。
そうして、ふと見やったカウンターには美貴さんがお1人で、こちらを向いて座ってらしたのです。

閑話休題(インターミッション) 14

クリスマス・ウィークの金曜日。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
大切な方に差し上げるプレゼントはもう準備できましたか?

さて、今夜から25日まで、クリスマススペシャル<EVE>をお届けします。
これは、前作とは違ってセクシャルなところがほとんどないかもしれません。でも、淑やかな彩ファンの皆様にはきっと楽しんでいただける、ほんわかとハッピーな雰囲気の物語になっているはずです。
物語終了時から48時間限定でアンケートも実施する予定です。
どうぞお楽しみになさってください。

FC2の12月は、このブログを立ち上げて以来初めての試みとして、全て書き下ろしでお届けしております。
ほとんど推敲もなしでアップさせていただいているので、お見苦しい点もあるかと思いますがどうかご容赦くださいませ。
それでは、年内アップ予定の残り2作にも、どうかお付き合いくださいませ。

閑話休題(インターミッション) 13

50万アクセス記念の切なくてハードなSMテイストの物語 <サファイアの夜>いかがでしたでしょうか。
全10話。予想よりも少し長くなってしまいましたが、まだ多くの素敵な男性の方達と出逢う前の至らないわたくしの様子など、お楽しみいただけたら幸いです。

さて、実は最近こちらにお越しいただいているお客様のお1人、岬ゆうき様のアロマテラピーそして性感マッサージに、わたくしの作品を寄贈させていただきました。

<洩れる色声>。
<夢のかよひ路>で望月さんと過ごした下田の朝に、彼のマッサージの手の動きに思わず告白させられてしまった朴先生の治療の様子を少し書かせていただいたものです。
岬ゆうき様からいただいたお題が『マッサージに関わる官能小説』だったのですが、あまり露骨にセクシャルではないかもしれません。
<サファイアの夜 10>に、岬様からはトラックバックをいただいております。よろしければぜひ、ご覧になってみてください。
ご感想は、岬様のブログでも・・・こちらでも♪
楽しみにお待ちしております。

サファイアの夜 10

「あぁぁ・・・」
子宮を抉るような奥を責める突き上げに・・・わたくしはもう数える事さえ出来なくなった頂きへとまた押し上げられはじめた時です。
プルルルル・・・プルルルル・・・プルルルル・・・
耳元で携帯の発信音が致しました。
「なに?」
右手でわたくしの両手を掴み、左手で携帯を耳元に押し当てている男性に、わたくしは驚きの声を上げたのです。
「祥子の携帯だよ。お仕置きだ、祥子の逝く声を元の主に聞かせてやれ!」
プルルルル・・・プルルルル・・・プルルルル・・・
留守番サービスまであと4コールのはずです。
もう深夜のこの時間、お誕生日の夜・・・あの方も奥様とベッドで・・・かもしれないのです。
マナーモードにしていることを・・・もう熟睡して・・・携帯などには出ない事を・・・祈る・・・あぁぁぁ
「どうした、もっと感じろ!!祥子! 調教を忘れられずに悶える淫らな自分を受け入れるんだ!」
身体はもう限界でした。
プルルルル・・・プルルルル・・・ プッ
『もしもし、祥子?』
「ぁ・あぁぁ・・っ・・・いくぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
わたくしは、電話の向こうのあの方の声に、淫らな絶頂の声を堪える事ができませんでした。
「逝くぞ!祥子!」
わたくしの携帯をベッドの端に放り投げると、男性は最後の抽送を開始したのです。
「ぁぁ・・・・っ・・・・ぁ・・・・」
逝き続けるわたくしは、もう・・・声すら出ませんでした。
一番お電話などしてはいけないと決めた日に、時間に・・・あの方に・・・それも他の男性に逝かされる声を聞かせてしまった・・・・
本当に、2度とあの方に顔向けが出来ない事をしてしまった絶望感の中で・・・わたくしは責め立てる男性の与える淫楽に縋ったのです。
「また・・・もうだめ・・・いくっ・・いっちゃぅ・・・」
「逝く!」
わたくしの最後の収縮を確かめてから、男性は塊を引き抜き・・・淫らに揺れるGカップの乳房に、熱い精液を吹き掛けたのです。



・・・っ・く・・ひっ・・・
絶頂から醒めたとき、わたくしは自らの腕で顔を覆い堪え切れない嗚咽を漏らしておりました。
男性は、熱く絞ったタオルで精液でコーティングされたようになった白い乳房と、白く濁った愛液で濡れそぼった太ももの狭間を拭うと、シーツを掛けてくださって・・・そのまま男性は浴室へ向かわれました。
かつて愛した方に、たとえどれほど酷く捨てられたからといって・・・決してしてはならない無様な真似。それをしたくないばかりに、初めてバーで隣り合わせただけの人にこの身を任せたはずなのに・・・。
もう、この先あの方に愛していただくことなんて・・・こんな真似をしたら出来なくなってしまう。これだけは、したくなかったのに。
涙は、止まりませんでした。

次に男性が戻っていらしたときは、バスローブをお召しになっていたようです。
カラン・・・氷の音がするグラスがサイドテーブルに置かれました。
「もう泣くのは止めなさい。」
わたくしを抱き起こすと、広い胸に受けとめてくださったのです。
「祥子、つまらない男は忘れるんだ。君ほどの女ならこれからいくらでも望んでくれる男は現れる。君を捨てた男の呪縛に囚われるんじゃない。いいね。」
・・・っ・く・・
わたくしは嗚咽を堪えながら、男性を見上げたのです。
「素敵だったよ。もっと早く知り合いたかった。従順で感じやすくて好みの身体をしていて、知性も理性も勝っている。私好みのいい女だ。」
思わぬ言葉に、わたくしはふるふると顔を横に振ったのです。
そうなら・・・どうしてあの方は、わたくしを捨てたのでしょう・・・。
「囚われるんじゃない。君はもっと幸せになれる。悲しい顔は似合わない。男を翻弄する女に、男を虜にできる女に君ならなれる。本当だ。」
ちゅ・・・・ そして、はじめて唇を重ねてくださったのです。
「乱暴なことをして悪かった。祥子のバッグから携帯が転げ落ちていたんだ。最初に気を失ったとき、2度と逢えないと言っていた男の名を呼んだだろう。それで腹立ち紛れにアドレス帳を見てみたんだ。そうしたら、その名が有った。
祥子は、あんな風に言いながらまだ忘れてないと、まだ心はその男のものなのだと思った。それじゃ、新しい恋はできない。
こんなに素敵な女性なのに。だから荒療治をさせてもらった。
頼む、もう泣かないでくれ。」
ちゅ・ぅ・・・ 二度目のキスは、舌を絡めるような・・・優しい愛撫のキスだったのです。
「明日、10時にチェックアウトする。それまでなら、ここにいていいからね。今夜は眠りなさい。」
わたくしを右腕に抱えたまま、男性は身を横たえると室内の明かりをゆっくりと落としていったのです。
「おやすみ、祥子。君はほんとうに素敵だった。」
ちゅ・・・ 最後のキスは、わたくしの額に・・・でした。

サファイアの夜 9

「はぁぁぁ・・・あぁん・・・」
男性の大きさは・・圧倒的でした。
わたくしの蜜壷の中の襞を全て押し開くかのように・・・あちこちを刺激しながら蹂躙しつづけるのです。
その上、はじめてのわたくしの身体のことも全て知られてしまっているようでした。感じやすいポイントを的確に・・・突き・嬲り・こすり立てるのです。
「あぁ..いい・・いいですぅぅ・・・ごしゅじん・・さまぁ・・・」
「勝手に逝くなよ、祥子。」
「あぁ・・こんなの・・・だ・めぇぇぇ・・・いっちゃ・ぅ・・・」
「だめだ!」
そうおっしゃりながら、男性の腕はわたくしの両脚を肩に担ぎ上げ、一層深くへ・・・大きな塊を突き入れるのです。
「ゆるして・・・ぇぇ・・・ごしゅじん・・さまぁぁ」
「そんなに締め付けて、もっと欲しいのか!」
「あぁぁぁ・・・いぃぃ・・い・・くぅ・・」
最奥まで押し込んだ上で、担ぎ上げた脚を掴んでわたくしの腰を揺らすのです。
「まだだ!きちんとお願いしてみろ、祥子」
「ごしゅじんさ・・まぁぁ・・・しょう・こ・・を・・」
ここまで口にしたところで、男性は今までにないスピードで腰を使いはじめたのです。
「・・・あぁぁぁ・・・いくぅぅぅぅ・・・いっちゃ・ぅぅぅぅ」
指で一度絶頂を迎えた身体は、大きな塊の刺激を堪えることができませんでした。
許しを請う前に、上り詰めてしまったのです。

男性は、わたくしの蜜壷の中へ長大な塊を全て納め激しい収縮をじっと堪えていらっしゃいました。
男性の顔の横で・・・力を込めて丸まる足指の緊張がゆるまるのを確認してから、ゆっくりと左右にわたくしの脚を下ろしたのです。
「私は、許していないよ。なのに勝手に逝ったね、祥子。」
はぁ・・はぁ・・・ わたくしは、まだ肩で息をしておりました。
「もうし・・わけ・・ございま・せ・ん」
「罰を受けなくちゃならない。解っているね。」
「はぁ・・ぃぃぃ・・・ぁあぁ・・」
返事は、すぐに淫らな色彩を帯びるのです。男性の塊は力を失うことなくわたくしを突き続けるのです。
「あぁぁ・・・だめ・・・ぇぇぇ」
大きな塊の圧力に、わたくしの身体はじりじりとヘッドボードへ上がり・・・ついに頭がオークの背板にぶつかってしまったのです。もう逃れることは、出来ませんでした。
「いいのぉぉ・・・あぁ・・・いい・・・・また・・・いくぅぅ・・」
「私を置いて1人だけでいくのか?」
「おゆる・・しぃぃ・・くださぁぁ・・いぃぃぃ・・・・いっく・・・」
正常位で貫かれ、頭をベッドの背板に押さえられたわたくしはGカップの乳房を押し上げるように背を反らして絶頂に耐えるしかありませんでした。
「まだ、私は逝ってないぞ。」
「ああぁぁぁ・・・・」
長引く緊張の後の一瞬の弛緩しか、わたくしには与えられなかったのです。
男性は、また激しく腰を動き始めさせました。

「おねが・・い・・ゆるし・・て・・・」
「大きな胸をぶるぶると動かして、もっとと誘っているつもりか!」
「あぁ・・いくぅぅぅぅ」
男性の左手が、わたくしの乳房を鷲掴みにするのです。
白い皮膚に食い込むしなやかな指の強さが・・・わたくしをまた絶頂へと押し上げました。
「こんなに大きくて、白い胸は踏みつけたくなるな。」
「あぁぁ・・」
あの方と同じことをおっしゃるのです。そして、かつてされたその行為をわたくしの身体は思い出し・・・また、花びらの奥を締め付けてしまうのです。
「はっ、経験があるらしいな。縄もか?」
「いやぁぁぁあ・・・」
わたくしは、塊の大きさだけでなく、男性の声にも過去の記憶にも・・・同時に責め立てられ・・・とまらない・・絶頂に意識を白く蕩けさせはじめていたのです。
「本当に縛ったら、縄酔いで逝きそうだな。」
男性の息も、もう荒くなっていました。一段と太さを増した塊に・・・わたくしは、逝き続けるという責めからの解放を・・・一瞬予感したのです。
「いぃ・・あぁぁ・・もう・・だめ・・・・またぁぁ・・」
でも、意識できたのは本当に一瞬でした。微かに弱まった抽送が再び激しく始められて・・・わたくしの中は、淫楽と喘ぎでいっぱいになっていったのです。
「ゆるして・・いくぅぅぅ・・」
「まだだ!!」
男性の上体がわたくしに被せられてきたのです。
筋肉質の胸板も腹筋も・・・汗で濡れておりました。
「またぁぁ・・・いやぁぁ・・・」
「欲しいか!祥子。私の精液が欲しいのか!!」
あぁ・・・また・・あの方と同じことを
「ください・・・しょうこに・・・あぁぁ・・・ほしぃ・・・ぃぃ」
「くれてやる!!逝くんんだ!!」

サファイアの夜 8

「上手いな。フェラチオもその男の仕込みか。」
わたくしを仰向けにベッドに横たえると、そのままに覆い被さり・・・わたくしの唾液に塗れた塊を・・・花びらに押しつけたのです。
「あうっ・・ぁぁぁぁ・・・」
窓辺での指戯に蕩かされた身体は、激しいイラマチオでまた新たな蜜を湧き出させておりました。いままで受け入れたことのない・・・元の夫よりも・お慕いしていたあの方よりも・・・大きな塊は、みしっと蜜壷を押し広げながらわたくしの中に入り込んできたのです。
「ふふ、この大きさは初めてか?」
眉間に寄せられた苦悶の表情に気づかれたのでしょう。
わたくしは、声を上げる事もできずにただ首を縦に振ったのです。
「そうか、でも流石に熟した身体をしている。ほら、これで」
ず・ん・・
「あう・・っ」
大きな・・・指などとは比べ物にならないほどの質量と熱が子宮を突き上げたのです。
「全部入った。私のを全部飲み込めない女も多いんだが、祥子は流石に淫乱だな。」
「ちが・・うぅ・・ぁぁぁ」
大きなストライドで男性の塊の抽送が始まったのです。
わたくしの否定の言葉は、そのまま淫らな喘ぎに変わっていきました。

「はぁぁぁ・・・あぁん・・・」
男性の大きさは・・圧倒的でした。
わたくしの蜜壷の中の襞を全て押し開くかのように・・・あちこちを刺激しながら蹂躙しつづけるのです。
その上、はじめてのわたくしの身体のことも全て知られてしまっているようでした。感じやすいポイントを的確に・・・突き・嬲り・こすり立てるのです。
「あぁ..いい・・いいですぅぅ・・・ごしゅじん・・さまぁ・・・」
「勝手に逝くなよ、祥子。」
「あぁ・・こんなの・・・だ・めぇぇぇ・・・いっちゃ・ぅ・・・」
「だめだ!」
そうおっしゃりながら、男性の腕はわたくしの両脚を肩に担ぎ上げ、一層深くへ・・・大きな塊を突き入れるのです。
「ゆるして・・・ぇぇ・・・ごしゅじん・・さまぁぁ」
「そんなに締め付けて、もっと欲しいのか!」
「あぁぁぁ・・・いぃぃ・・い・・くぅ・・」
最奥まで押し込んだ上で、担ぎ上げた脚を掴んでわたくしの腰を揺らすのです。
「まだだ!きちんとお願いしてみろ、祥子」
「ごしゅじんさ・・まぁぁ・・・しょう・こ・・を・・」
ここまで口にしたところで、男性は今までにないスピードで腰を使いはじめたのです。
「・・・あぁぁぁ・・・いくぅぅぅぅ・・・いっちゃ・ぅぅぅぅ」
指で一度絶頂を迎えた身体は、大きな塊の刺激を堪えることができませんでした。
許しを請う前に、上り詰めてしまったのです。

男性は、わたくしの蜜壷の中へ長大な塊を全て納め激しい収縮をじっと堪えていらっしゃいました。
男性の顔の横で・・・力を込めて丸まる足指の緊張がゆるまるのを確認してから、ゆっくりと左右にわたくしの脚を下ろしたのです。
「私は、許していないよ。なのに勝手に逝ったね、祥子。」
はぁ・・はぁ・・・ わたくしは、まだ肩で息をしておりました。
「もうし・・わけ・・ございま・せ・ん」
「罰を受けなくちゃならない。解っているね。」
「はぁ・・ぃぃぃ・・・ぁあぁ・・」
返事は、すぐに淫らな色彩を帯びるのです。男性の塊は力を失うことなくわたくしを突き続けるのです。
「あぁぁ・・・だめ・・・ぇぇぇ」
大きな塊の圧力に、わたくしの身体はじりじりとヘッドボードへ上がり・・・ついに頭がオークの背板にぶつかってしまったのです。もう逃れることは、出来ませんでした。
「いいのぉぉ・・・あぁ・・・いい・・・・また・・・いくぅぅ・・」
「私を置いて1人だけでいくのか?」
「おゆる・・しぃぃ・・くださぁぁ・・いぃぃぃ・・・・いっく・・・」
正常位で貫かれ、頭をベッドの背板に押さえられたわたくしはGカップの乳房を押し上げるように背を反らして絶頂に耐えるしかありませんでした。
「まだ、私は逝ってないぞ。」
「ああぁぁぁ・・・・」
長引く緊張の後の一瞬の弛緩しか、わたくしには与えられなかったのです。
男性は、また激しく腰を動き始めさせました。

サファイアの夜 7

「は・・ぁぃ・・・いぢめ・・て・・いただ・・きたか・った・・です・・ぁぁああ・・い・・くぅぅ・・・」
「勝手に逝くんじゃない。解っているだろう。勝手に逝ったらお仕置きだからな。」
「ゆるし・・て・・・いっても・・いぃぃ・・ですぅぅかぁぁ・・・ごしゅ・・じん・・さまぁぁぁ・・・」
「良く躾けられているな。もう一度だ。淫乱な祥子をご主人様の指で逝かせてください、とちゃんとお願いするんだ。」
「はぁぁ・・いん・・らんな・しょうこ・・を・・ぉぉ・・ごしゅじ・・ん・・さまのぉ・・ゆびでぇぇぇ・・・いかせ・・て・・・・ぇ・・くださぃぃぃぃぃ」
「よし、逝け!祥子。」
「あぁぁぁ・・・・いくぅぅぅ・・・いっちゃ・・ぅぅぅ・・こういち・・さぁ・ん・・・・」
わたくしは、男性の言葉責めと指のもたらす淫楽に・・・忘れられない・・・2度と逢いしていただくことが出来ないと思っていた方の名を呼びながら・・・絶頂を極めてしまったのです。

ジャァァ・・・・
バスルームからの水音でわたくしは気がつきました。
窓に向かって、絨毯の上に獣の姿勢を取らされて男性の指で達したはずなのに・・いまはベッドの上にシーツを掛けられて横たわっておりました。
ストッキングとガーターベルト以外の全てのランジェリーは剥ぎ取られ、首元のサファイアのペンダントも、サイドテーブルの上に置かれていました。
わたくしの携帯とお財布だけを入れたクラッチバッグもコートも、それから窓辺で脱がされた衣服も・・・ベッドから見る事の出来る場所にはなかったのです。
「気づいたね。」
腰にタオルを巻いた男性がベッドの近くまでいらっしゃいました。
わたくしが想像した年齢相応に貫禄を帯び、年齢よりも引き締まった筋肉質な身体をしてらしたのです。
掛けられたシーツを胸元で押さえて、わたくしは上体を起こしました。
「申し訳ありません。全部していただいて。」
逝き果てて意識をなくしたわたくしの大柄な身体をベッドに運び、こんな姿にして衣服を片付けてくださったのです。どれほど、大変だったことでしょう。
「いいんだよ。感じやすいんだね。あそこまで逝ってくれてうれしいよ。」
ベッドサイドに立った男性は、わたくしの側に立つと腰のタオルを外されたのです。

「さぁ、解っているね。」
その方の塊は・・・とても大きなものでした。
記憶の中のあの方のものなど比べ物にならないほどに・・・大きく・猛々しく・・・。わたくしは、シーツを落とすとベッドの上で正座の姿勢で男性に向き直り、頭をゆっくりとすべすべとした先端へと下ろしていったのです。
くちゅ・・・
唾液をたっぷりと乗せた唇で、熱い・・先端に触れました。
ちゅるぅぅ・・・
口腔に溜めた唾液を細く垂らす様にしながら・・・太くながい男性の側面に塗り付けていったのです。
くぷぅ・・・
それから、花びらの様に輪にした唇の中心に、塊を飲み込んでいったのです。ゆっくり、先端を上顎にこすりつけるようにしながら・・・喉奥まで。
「うっ・・いいな。上手い・・」
ちゅぷ・・
頭を上下に動かしながら、舌先を男性の裏筋にそって動かしていったのです。
あまりの大きさに奥へ飲み込むたびに噦きそうになりながら・・・それでもわたくしはあの方もお好きだった唇でのご奉仕を止めることはいたしませんでした。
あの方はソファーに腰掛けて、いいというまで何時間でもわたくしに口唇奉仕をさせました。そして・・
「美味しいか?祥子。」
「ぁ・・ぅ・・」
そうお聞きになるのです。はい、と答えたつもりの声もあまりに太くて大きな口枷のせいでまともな言葉になりませんでした。
いつしか男性は、わたくしの頭に両手を添えて、ご自分の腰を使い出したのです。
まるで・・セックスをするように・・・奥まで・・男性自身から透明に滴る蜜を垂らしながら・・・。
「あ・・ん・・」
そして唐突に、わたくしの頭を引き離されたのです。

サファイアの夜 6

「元の主の名前を教えてもらおうか。」
「・・ぃや・・」
「拒否は許さないと言ったはずだ。私の夜を独占するんだ。その原因になった男の名前ぐらい教えても罪にはなるまい。」
「・・・・・」
パ・ン・・・
「ぁう・・・」
黙ったままで首を横に振るわたくしにまたスパンキングが飛んだのです。
「それほど私は愚かな男じゃない。君との事も今夜あったことも、この場限り2度と口にはしない。それに、もう当分日本には帰ってこない身だからね。」
「あぁっ・・」
ぐいっ・・・男性が俯いているわたくしの髪を鷲掴みにし、窓へと・・真っすぐに向かせるのです。
「もう一度聞く。元の主の名を教えなさい。」
「こういちさん・・・です。高瀬康一さんとおっしゃいました。」
「そうか。その男の指が忘れられなかったんだな。」
「あっ・・・」
とん・・・ と男性はわたくしの背を突き飛ばしたのです。

思わずよろけたわたくしは両手をガラスに突き、揃えて立っていた脚をほんの少し開いてバランスを取るしかありませんでした。
「あ・ぁあ・あぁぁぁ・・・」
その隙だらけの、腰を突き出したわたくしの花びらの狭間を・・・細いTバックのクロッチをかいくぐって中指が沈み込んだのです。
すでに太ももまで湿らせるほどに愛液を溢れさせた蜜壷ははしたないと思うほどに、男性の指を飲み込んだのです。
「これが、忘れられなかった指か?」
「・・ぁあ・・・だ・め・・ぁぁ・・・」
男性の手でTバックは脇にずらされしまいました。かき回された蜜壷は、花びらから白濁した蜜を滴らせるほどに・・・激しく動く指に応えてしまっていたのです。
「もっとか?」
「ゃあ・・ぁぁ・・・・」
一度引き抜かれた指が2本になって奥まで差し込まれます。
男性の中指が最奥の子宮口に触れた途端、わたくしは膝を折ってしまったのです。
「ここが弱いのか?」
「ゆるし・・てぇぇぇ・・・」
ホテルの部屋の絨毯に・・・腰だけを高く上げて頽れたわたくしに、指がまた追いかけてくるのです。今度は3本になって。
「あぁ・・・い・っぱぁ・・いぃぃぃ」
出し入れされるしなやかで力強い指に・・・わたくしはあきれるほどに蜜を滴らせ・・・男性の指を押し戻すほどに・・・中から、不規則に締め付けていたのです。

「随分丹念に調教されているようだな。ここもか?」
「だめ・・ぇぇ・・・」
「息を吐け!」
半ば引き抜いた3本の指に小指を添わせるようにして、ねとつく蜜を纏い付けた男性は、そのままゆっくりと姫菊へ・・・小指をやさしく突き立てたのです。
あの方も・・・こうして指戯をなさいました。小指から薬指の先ほどまでで嬲り・・・排泄器官としての役割しか知らなかったわたくしの身体に、はしたない快感を植え付けて・・・そのままわたくしを捨てられたのです。
「ふふ、飲み込むな。」
「あぁぁぁ・・・・は・ぁぅ・・」
わたくしが息を吐出した一瞬に男性のほっそりとした小指の先は、姫菊のすべらかな内壁を通り抜け・・・第二関節近くまでを埋め込ませたのです。
「この指がいいのか?祥子。」
「あぁ・・・いい・・いいのぉ・・・・」
わたくしの身体は<祥子>と呼ぶ男性の声に、蜜壷を収縮させて・・・言葉よりも先に答えてしまったのです。
絨毯に顔を伏せ、男性に全てを委ねたわたくしは・・・あの方とそっくりな声と指に・・・酔っておりました。
「ここまで調教しておいて放り出すとは、残酷だな。」
「ああぁっ・・・」
蜜壷と姫菊を蹂躙されて溢れ出した蜜でぷっくりと大きく蕩けている真珠と、絨毯に擦り付けられて一層敏感になった右の乳房にまで・・・男性の手が這っていったのです。
「だ・め・・いぃ・・・あぁ・・おかしく・はぁぁん・・なぅ・・・」
「なればいい。なりたかったんだろう、祥子。この手で虐められたかったんだろう?どうなんだ、返事をしなさい!」
蜜壷とアナルの指は、間の薄い皮膚の存在を確かめるように淫らに動きます。中指は子宮口を撫で上げ・・・人差し指は数の子状の壁をこすり上げるのです。そして・・真珠と乳首は・・・答えが遅いと責め立てるように・・・指が与える事の出来る極限の快楽を送り続けるのです。

サファイアの夜 5

窓ガラスの鏡面にうつるわたくしの姿は、濃紺のミニのスリップドレスを身に着けている様でした。
ふくらはぎから太ももに掛けては、ダークネイビーのストッキングが上品に肌を覆い隠しておりました。
ただ1つ、いつもよりも短いスリップの裾とストッキングの間に、太ももの白い肌とガーターベルトのストラップと留め具が見えていることが・・・わたくしの心の奥に潜んでいる疼きの在処を告白しているようでした。
「どんなに上品な奥様なのかと思ったが、随分だな。」
「ちがいま・・す・・あっ・・・」
左手でスリップのストラップを引き下ろされます。
先ほどまで、男性の手で嬲られていたハーフカップのブラからはみ出させられたたゆんとした乳房がくっきりと窓に映し込まれるのです。
「どこが違うんだ、ここか?」
「いゃ・・っ・・」
肩口から回された男性の手が窓のガラス面から流れる冷たい夜気に一層立ち上がった乳首を嬲るのです。いけない・・・と思いながらも、わたくしは淫らに腰をくねらせてしまったのです。
「ぁあっ・・・おくさまなんかじゃ・・な・い・・ ゃぁっ・・・」
感じやすい左の乳房をいらいながら、髪から手を離した男性は右のスリップのストラップを落としました。
自らの重みでサテンはするすると滑り落ち・・・腰の・・・わたくしの腰の丸みにたくって引っかかりそこで止まりました。
「そうか、てっきり人妻が危ない男と浮気をした挙げ句のことかと思ったが、違ったのか。」
「ちがいます・・・ぁ・・みちゃ・・やぁ」
窓ガラスには、ハーフカップのブラには収まり切らないと主張するようにすこしひしゃげ・・・脇の膨らみにブラのストラップを食い込ませた淫らなGカップの乳房が映っておりました。
乳房の重みを支えて・・・正面にくっきりと立ち上がったはしたない乳首を真っすぐに向けさせるためだけに、サファイア色のブラは存在しているようでした。青というよりも黒く・・・映るランジェリーは、まるで影の男に命じて淫らに白い乳房を支えさせているようにも見えたのです。
こんな、乱れた姿を晒されるくらいなら、まだ乱暴に全てを剥ぎ取られた方がましです。

「眼をそらすんじゃない。」
お慕いした方と同じ声が、その方が一番お好みになるだろう淫乱な姿をしたわたくしに・・・望む命令を与えるのです。
「おねがい・・ゆるして・くだ・さ・い」
わたくしの哀願の声は、語尾に向かうほどに掠れ・・・小さくなってゆきました。
「私が何をした。どう許せというんだ?」
「おねがい・・みない・で・・・」
「さっき無作法にこの私の手を見つめ続けていたのは祥子だろう。」
「ぁぁあっ・・・」
また左手が、ブラのカップの上に無様にはみ出させられた乳房とその先端をいらうのです。
「もうしわけ・・ござい・ま・・・せん」
「随分従順に躾けたものだな。いまは誰にも仕えていないのか?」
「・・・は・い。」
「もったいないな。これほどの奴隷はそう手に入るもじゃない。」
パシッ・・・
「はぁ・・っ・・」
「いい声で鳴く。嗜みも悪くなさそうだな。」
「だ・・めぇ・・・・ひぃっ・・」
パァン・・・
スリップを捲り上げ、Tバックの露になったヒップを確認するとその裾をガーターベルトのウエストに挟み込んで、真っ白な素肌に赤い手形が残るほどのスパンキングを加えたのです。