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少しだけお休みをください

度々申し訳ございません。
やっとお仕事PCが復旧いたしまして、それまで溜まっていた業務が雪崩を打ってやってまいりました。
無粋な理由で申し訳ないのですが、落ち着いて原稿も書けず・・・少しだけお休みをくださいませ。
出来るだけ早く戻って参りますね。

SnowWhite 55

太ももを伝うぬめりは白絹の長襦袢を濡らしてしまいはしないかと・・・気がきではありませんでした。先ほど高梨さんにつまみ上げられた乳房の先端は、滑らかな絹地の感触さえ疼きを与えるほどに敏感に立ち上がっておりました。
そして口唇は・・・ねぶるほどに大きさを増すかの様な高梨さんの皺袋の中身さえ・・・欲しはじめていたのです。

「もう、いいぞ。」
幾度も顔を傾げ・・・いつの間にか瞳を閉じて・・・わたくしは無心に高梨さんをねぶり続けていたようです。
満足げな彼の声に、ゆっくりと唇の狭間からやわらかな皺肉を解き放ち・・・羞恥に顔をうつむけて次のご命令を待ったのです。
「そんなに、美味しかったのか?」
「・・・はい」
高梨さんの声に、淫媚な響きが交じっていることはわかっていました。冷静にカメラを構えていたこの方には、わたくしの淫らに染まってゆくからだの様子など・・・全てお見通しだったことでしょう。
前に立つ高梨さんの着物は、もう元の通りに全てを覆い隠しておりました。
ただ一カ所・・・先ほどまでわたくしの唇と顔を辱めていた部分に盛り上がりを見せて居る他は何一つ今日の昼間の彼と変わるところはなかったのです。
「さぁ、次はどうするかな。」
そう口にされた時には、もうお気持ちは決まっていた様です。
いつの間にか手にされたリードをくい・・・と、立つんだというように上に引かれたのです。
「はい・・・」
わたくしは、無言の命令に小さく答えてその場から立ち上がりました。
「ふふ、動くだけで祥子の香りがするな。」
「・・ぃゃ」
顔を伏せたまま、わたくしはきつく眼を閉じてしまったのです。どれだけ蜜を溢れさせているかは、高梨さんに言われなくても十分に自覚していたのです。
「いやじゃないだろう。本当のことだ。仕方あるまい。」
高梨さんの声が動いていることにその一瞬、気がつきました。
「あっ・・」
次の瞬間、わたくしは暗闇の中に一人取り残されたのです。
あのサイドテーブルの上にはなかったはずの、目隠しをされていました。頭の後を走るゴムの感触・・・頬の高さを完全に覆うフォルム・・・柔らかな感触。それは何かを代用したものではなく・・・目隠しそのものだったのです。
とんっ・・・
「やっ・・・」
視覚を奪われていたわたくしは、背中を高梨さんの大きな手で突かれて簡単にバランスを崩したのです。
前によろけてそのままベッドの上にうつむけに上体を倒れ込ませてしまったのです。
ガチャ・・チャ・・・
「だめっ・・」
無意識に顔の両側についた手は、高梨さんにそのまま絡めとられてサイドテーブルの上にあった白いフェイクファーに包まれていた手錠で後手に留め付けられてしまったのです。
彼は無言のままわたくしのリードを掴み、ベッドの上を大股に移動して・・・わたくしが知らない場所へと、リードの先端を固定してしまったようでした。

SnowWhite 54

「祥子、こっちを見るんだ。」
唇の狭間に高梨さんの熱い塊を咥えたままで、わたくしは濡れた瞳を声のする方へと向けたのです。
カシャ・・ カシャ・・
その音がシャッター音だと気付くまでに、ほんの少しかかりました。
わたくしの瞳の先にあったのは、Nikon F6のレンズでした。
「そのまま動くんだ。俺を見上げたまま。」
ぁ・・ゃぁ・・・ 口腔で膨れ押し込まれる塊は、わたくしの声を籠らせました。
カメラを見つめたまま・・・唾液と高梨さんのぬめりに光る唇を・・・縮れた茂みにまで往復させないといけないなんて・・・

視線を反らせればよかったのです。
でも、高梨さんの深くて丸い声の命令と、カメラのレンズ越しの彼の眼差しに背くなんていうことはできませんでした。
わたくしはもう先ほどのように無心に行為を続けることは出来なくなってしまいました。
カメラのシャッター音が、レンズごしの強い視線が、わたくしの羞恥心を否応無しに揺さぶったからです。
カシャ・・
「こんな簡単なことさえ、お仕置きされないと出来ないのか?」
お仕置き・・・ わたくしは、その言葉にゆっくりと頭を動かしたのです。カメラを見つめたまま。
高梨さんがその言葉を口にしたとき、必ずそれを実行するとわかっていたからです。
それでも、彼を見上げたままの体勢での口戯・・・というのは酷く難しいことでした。
カシャ・・・ カシャ・・ 
わたくしはつい、いつものように瞳を伏せて・・・長い髪で口元を隠すように首をかしげて前後に動かしつづけたのです。

カシャ・・・
リズミカルだったシャッター音が途切れたとき、高梨さんが新たな要求を口にされたのです。
「今度はいつものように玉も舐めるんだ。カメラを見たままで、な。」
ちゅぽっ・・・ 深く咥え込まされていた塊は唇の狭間から抜け落ちる時でさえ淫らな音を強いました。
見上げたまま、皺袋をねぶる。
それは顔の上に高梨さんの・・・わたくしの唾液にぬれそぼった塊を・・・載せた形で見上げるしかありません。
「うっ・・」
ちゅるっ・・・啜り上げ、片方の繊細な玉をまるまる口内に収め・舌を這わせながらわたくしは高梨さんの望むポーズをしたのです。
カシャ・・・ カシャ・・・
わたくしの鼻筋に添って、長大になった高梨さんの塊は額へとわたくしの顔の左側を覆いました。口元は、先ほどからの口戯で濡れ光る茂みに没しているはずでした。
顔面に男性の猛り立った塊を載せている・・・はしたない姿であることを解っていながらカメラを見つめる、それはあまりに破廉恥な仕打ちでした。
口元は柔らかで繊細な高梨さんのもう一方の皺袋を顔の向きを替えて含みねぶりながら、わたくしの身体はカメラという第三の視線に否応なく反応してしまったのです。

SnowWhite 53

「っく・・・」 ちゅぷ・・・
今日はまだ一度も口づけを交わしていないわたくしの唇を、高梨さんの塊が喉奥まで一気に犯してゆくのです。
わたくしは両手を高梨さんの腰にあて、歯を当てない様に唇を巻き込み、舌を塊の快感ポイントへと這わせるだけで精一杯だったのです。
ちゅ・・く・・・ぺちょ・・・
低い・・・高梨さんの塊を決して全て口元から出すことができないほど低い位置に握り込んだリードを固定されて、わたくしは頭を上下することさえ難しくなっていたのです。
数の子天井のようだと喜ばれる上顎も、柔らかな子宮口のような感触の頬も、複雑な花びらのあわいのような舌の裏側まで・・・口腔の全ての粘膜に高梨さんの感触を教え込ませるように、ねっとりと擦り付けていったのです。
「上手いな。また、上手くなった。」
くちゅ・・・ちゅ・ぷ・・・
舌を男性の先端の敏感な合わせ目からほんの少し下・・・大きく添った部分の裏筋へと這わせ集中的に刺激します。
「あぁ、そこだ。」
ぺちゅ・・・ちゅ・・・
高梨さんはリードをほんの少しだけ緩めると、その分後ろへと両手を突いてゆっくりと腰を浮かし・・・回しはじめました。
「いいね。」
ん・・っちゅ・・ぺちゃ・・・
少しずつ引かれてゆくリードのせいで唇は、高梨さんの茂みにまで達しておりました。
喉奥にはかりの張ったおおきな先端がつきささり・・舌は塊の中程から根元あたりを彷徨うしか出来ません。
「祥子の口は性器そのものだな。」
金色のリードと腰の両方を使って、まるで昨晩わたくしを犯しながらカメラに痴態を曝け出させていたときと同じ様に・・・一番奥を・・・今夜はわたくしの唇の・・・高梨さんのぬめりを塗り付ける様に動かしてゆくのです。
ぅっく・・・
「ふっ、苦しいか。」
一層深く押し込められる塊に、噦きそうになるわたくしの喉の動きさえ高梨さんには快感なのでしょう。その声は、一段と淫楽の響きを加えておりました。
ほんの少しだけリードを緩め・・・そして次に引くときはもっと深く・・・
わたくしは口元から溢れる唾液をすすり上げる間もないほどに口内を嬲られ続けていたのです。

もうこのまま、今夜はわたくしのお口でまず逝かれるのだとばかり思っていたとき、思わぬ声を掛けられたのです。
「立つぞ。」
わたくしに、大きな塊を咥えさせたまま高梨さんはゆっくりと立ち上がったのです。
動きに添って緩められるリードに、喉を浮かせた分立ち上がり・・・また一番奥まで突き上げるのです。
高梨さんが真っすぐに立たれるまでに、わたくしの睫毛には喉を突かれる苦しみの涙が浮かんでいたのです。
ジャラっ・・・・ 引かれ続けていたリードが彼の手から落ちたのです。
わたくしはそれを、自由に動いて彼を逝かせるための合図だと思ったのです。
くちゅ・・・ぷちゅ・・・ちゅく・・・
仁王立ちになった高梨さんの足元で、わたくしは口唇を大きくスライドさせ、両手をひんやりとする皺袋に這わせて、いつもこの方がお望みになるような激しい口戯をはじめました。

SnowWhite 52

いくつか並べられたものの中から、わたくしは高梨さんがパリから買って来てくださった、金の鈴が付いた桜色の首輪を取り上げたのです。
そして、ベッドに腰を掛ける高梨さんの前に跪くとそれを両手で差し出しました。
「ご主人様、祥子に首輪を付けてください。お願いします。」
「ああ。」
わたくしの手の上から首輪を取り上げると、高梨さんは長襦袢の襟の中に潜める様に、桜色の皮を巻き付けたのです。
「いつから、大きくしている。」
「あぅっ・・」
ちりん・・・ 白絹の長襦袢の上から突然摘まれた乳房の先端に、わたくしは大きく呻き・身を反らせてしまったのです。
「返事は!」
「あぁっ・・・わかりま・せ・ん・・・」
今度は左も・・・でもわたくしには、心当たりはありませんでした。
この部屋に入るまでは、白の長襦袢の胸元はそんなふうにはしたなく立ち上がっては居なかったのです。
カメラを向けられたせいでしょうか・・・それとも、ここに来てはじめてMとしての作法通りに高梨さんに振る舞わなくてはならなかったせいでしょうか。

でも、昂っていたのはわたくしだけではありませんでした。跪いたわたくしの前に座る高梨さんの着物の前も・・・もう彼の昂りを隠し切れてはいませんでした。
「ふっ ゆうべ甘やかし過ぎたかもしれないな。」
じゃら・・・ 袂から引き出したのは、首輪とお揃いの金のチェーンでつくられたリードでした。
ちり・・りん・・・ 
「やっ・・・」
「いやじゃ、ないだろう。牝猫はどこに逃げ込むかわからないからリードで繋いでおかないとな。」
鈴の音を響かせながらふるふると首を横に振るわたくしの首輪を、高梨さんの大きな手が掴みます。
カチャっ・ ちりん・・・ 桜色の首輪は、今度はまるで高梨さんに繋がれることを喜んでいるかの様に小さく鈴の音を鳴らすのです。
「おとなしくします。だから酷くしないで・・・」
首輪だけでなくリードを繋いだということは、わたくしのことをいずれは拘束するおつもりなのです。あの春のベランダでの陵辱の時と同じに。

「さぁ、今夜はまず咥えてもらおうか。」
高梨さんはわたくしの哀願の声すらも聞こえなかったかの様に、ベッドに浅く腰掛け直すと着物の前を開いたのです。そこには、既に昂った塊がぬっとそそり立っていたのです。
レジデンス棟のお部屋のソファーの足元に居る時のように、わたくしの長襦袢に覆われた身体は高梨さんの両脚の間にありました。
じゃ・らっ・・ 
自ら頭を伏せるよりも一瞬早く、高梨さんは強引にリードを引いたのです。
バランスを崩したわたくしは、頬から彼の膝元へと崩れ込んでしまったのです。熱い塊がわたくしの頬に当たり・・・頬から唇まで、ぬめりの筋を付けてゆきます。
巧みなリード捌きで、高梨さんはわたくしの口元に熱く滑らかな先端を導いたのです。

SnowWhite 51

「支度をしておいで。今夜は俺の望み通りに抱かせてもらう。後ろも可愛がるつもりだから、きちんとしてきなさい。」
「・・・はい。」
お食事までの朗らかで優しいだけの表情から厳しいSの高梨さんへ、ほんの少しの間に変貌されていました。
いつもの、わたくしの逆らうことができない声で・・・この先の行為の予告すらなさったのです。
「夕食の後片付けは俺がしておく。支度をしてその長襦袢だけを着て、部屋においで。わかったね。」
「・・・はい。」
「違うだろう、祥子。」
何が違うのか・・・わたくしには解っておりました。
「ありがとうございます、ご主人様。支度に下がらせていただきます。」
カシャ・・ カシャ・・ カシャ・・ 
今朝と同じに正座をして三つ指を突いて頭を下げたわたくしを、高梨さんの瞳を見上げるまでカメラはずっと捉えておりました。

わたくしの荷物を置いてある客間へ向かい、万一を考えて持って来たもので時間を掛けて姫菊の奥を清めたのです。そして、改めて自宅の檜づくりのお風呂も頂いたのです。
予感はありました。
桜の咲く季節に、レジデント棟のベランダでパリからの土産だと見せられた象牙の取手の鞭のせいでした。あの時、高梨さんはおっしゃったのです。
「牝猫・祥子のしっぽにぴったりだと思ってね。ソファーの僕の足元に戯れつく牝猫に今度は付けてあげよう。」と。
淫らなお写真を撮られたことを除けば、昨夜の高梨さんとの交わりは優しく・あまやかなものでした。でも、Sの行為でなければ満足できないとおっしゃる高梨さんにとっては、心の底から納得した時間ではなかったのかもしれません。
暖かな湯に浸かりながら、わたくしは肌が粟立つのを止めることができませんでした。

「お待たせいたしました。」
カシャ・・ カシャ・・
純白の長襦袢を伊達締めだけできっちりと着込んで、わたくしはメインベッドルームの扉を開けました。
カシャ・・ カシャ・・ カシャ・・
無言のまま、ベッドに座った着物姿のままの高梨さんがわたくしに向かってシャッターを切り続けます。
長い黒髪は、高い位置でポニーテールにまとめたのです。カメラと高梨さんの視線から逃れようと顔をうつむけても、羞恥に染まる瞳を隠すことはできませんでした。
「白の長襦袢だったはずだが、祥子が身につけると薄く紅を佩いた様になる。さぁ、なにからおねだりするんだい、祥子。」
高梨さんの視線がベッドサイドテーブルへと移ります。
「ぁっ・・・」
思わず息を飲んでしまったのです。
テーブルの上には、わたくしが想像していたもの達が記憶にある禍々しさ以上の気配をまとって存在していたからです。
「祥子、どうした。お仕置きをされたいのか?」
「申し訳ございません。」
驚きに止まってしまった身体を動かして、サイドテーブルへ向かいました。

SnowWhite 50

ベランダから、白雪のためのドッグフードと食器を運んで・・・わたくしが水をお持ちすると、ありがとうと言う様に一声、わん・・と吠えるのです。
「召し上がれ♪」
美味しそうに食事をはじめた白雪を置いて、高梨さんとわたくしもお夕食にいたしました。

昼間、出掛けている間中。
運転している以外の時間、高梨さんはカメラを手放さなかったのです。
神社の参道を歩く間も、お賽銭を入れて一年の無事を祈る一瞬も、白雪と戯れるひとときも、わたくしのまわりからシャッター音が途切れることはありませんでした。
昨夜、ベッドの中で淫らな姿を写されていたのとは、明らかに空気も高梨さんの緊張感も違いました。
なのに、わたくしは繰り返されるシャッター音に次第に瞳が濡れてゆくのを止めることができませんでした。
「祥子も大分カメラ慣れしてきたみたいだね。」
これもうまいな・・・ そうおっしゃりながら、高梨さんはちらし寿司を召し上がってらっしゃいました。
「そんなことありません。もう、お外であんな風に写真を撮ったりしたからとっても恥ずかしかったです。」
「いいじゃないか。俺の仕事のことは皆知っているし、それにまともな写真しか撮らなかったろう。」
「まともじゃない写真まで撮るつもりだったんですか?」
「さぁな」
ははははは・・・・ 高梨さんは無邪気な笑い声を上げていました。
「春に逢った時の祥子は、全くカメラに慣れてなかったからね。被写体としてどこまで俺に染まってくれるか、半信半疑だったんだよ。今日は本当に綺麗だった。ゆうべの荒療治が効いたみたいだね。」
「もうっ・・いぢわる」
「帰るまでには見せて上げるよ、写真。祥子だけにはね。」

昨晩、メインベッドルームで撮られた写真がどんなものだったのか、わたくしは全くわかりませんでした。今朝目覚めた時には、ベッドの上に向けてセッティングされていた筈の5台のカメラはどれ1つ見あたらなかったからです。
きっと、わたくしが眠っている間にカメラを取り外し・データをPCに落としたのでしょう。
あんな痴態を晒すことになるのを解っていて・・・わたくしは、どうしてお写真を撮ることを許してしまったのでしょうか。
お食事の途中でこれ以上の淫媚な雰囲気にならないように、わたくしは眼の前の今日2本目の徳利を取り上げました。
今夜のお酒は、熱燗の剣菱でした。テーブルの上に置かれた小型の火鉢に掛けられた鉄瓶に、1合徳利を漬けて・・・お燗番は高梨さんがなさってくださいました。
わたくしは、昼食のおよばれにも随分お酒をいただいていたのです。ほろ酔いのままにお夕食になって、それほどお酒は進みませんでした。
ずっと運転をなさっていた高梨さんの杯に、徳利を傾けます。
「ありがとう。魚の煮付けには、熱燗だね。」
「眼の前でお燗ができるなんて、こんな素敵な方法で楽しめるとは思わなかったわ。」
「そうだろう。こうして置けばあまり酔っぱらわなくてもいいしね。」
「譲さんは、昼間は全く召し上がってらっしゃらなかったのに。」
「今夜はとことん祥子を可愛がるつもりだからね。酔ってしまうわけに行かない。」
ごちそうさま 高梨さんは、全ての器のお料理をきれいに召し上がるとそうおっしゃって箸を置いたのです。

SnowWhite 49

「お腹も一杯になったし、初詣にでも行って、大きな温泉にも行ってみるか。」
「ええ。」
わ・わん・・・
「白雪も一緒?」
「ああ、置いて行ったら奴に怒られそうだからな。」
「わかりましたわ。それじゃ20分だけ時間をください。お片づけをして、出掛ける準備をしますわ。」
「ゆっくりでいいよ。急ぐわけじゃない。のんびりテレビのバラエティを見るのもたまにはいいもんだ。」
「もう♪」
わたくしは食事の間外していた割烹着を身に着けて、下げた食器の洗い物をはじめました。それから、今夜のお夕食のためのお米を少し早いけれどといで・・・・。
キッチン以外のいろいろな支度をされる高梨さんと白雪と、神社に向かうパジェロに乗り込んだのはそれから30分後のことでした。



村の鎮守の・・・という童謡がぴったりと似合いそうな神社に白雪と一緒にお参りをして、お昼はそこでお逢いした村のお仲間のお宅にお呼ばれして、『数馬の湯』という地元の温泉で・・・その間だけは白雪はパジェロでお留守番でしたけれど・・・たっぷり暖まって。
元旦の一日をわたくしたちはそうして過ごしました。

木組みのこの家に戻ったのはもう陽も暮れた頃。
白雪と一緒にちょっと昼寝をすると囲炉裏端に横になった高梨さんをそのままに、わたくしは夕食の支度をしたのです。
お昼も地元のお料理をたっぷり頂いてしまいました。
だから、今夜はちらし寿司と岩のりのお味噌汁・水菜とお揚げのおひたし・そして金目鯛の煮付けといったさっぱりしたお料理にいたしました。
気持ち良さそうに眠る二人の男性と同じ屋根の下で、味わってくださる方のためにお料理をする、その久しぶりの喜びをわたくしはじっくりと噛みしめておりました。
「譲さん、そろそろお食事にしませんか?」
驚かせないように毛布を掛けた肩をゆっくりと揺すって起こします。
「ん~~~、何時だ。」
「そろそろ7時になります。」
「そっかぁ、良く寝たな。白雪は、あぁこいつも良く寝てる。おい、白雪起きろ、飯の時間だぞ♪」
くぅぅ~~ん 高梨さんに起こされた白雪は、前脚をずっと前に伸ばして腰を高く上げて・・・めいっぱい伸びをしました。
「もう、食事はできるのか?」
「ええ。でも、これから白雪をベランダに出すのは可愛そうね。」
「ああそうだな。とはいえ、ここに置いとくとゆっくりと食事もできないから今日は白雪は玄関だな。」
わん♪
「いま白雪の食事を準備するから、それまでもう少しまってくれ。」
「はい。」
高梨さんは白雪に改めてリードを付けました。
そして、リビングの外。玄関の扉をロックして引き手のバーにリードを括り付けたのです。

SnowWhite 48

「はい、熱いですから気をつけてくださいね。」
お代わりのお椀を差し出して、わたくしもあらためて高梨さんの隣に座ります。
「このお着物は、どうなさったんですか?」
「おふくろの若い頃のものなんだ。あの年代の人にしては大きな人だったから祥子でも着られると思ったが、正解だったね。」
「はい、まるで誂えたみたいです。それに着心地が良くて。いい感じに練れたお着物だったので。」
「祖母が手縫いしてね、正月にここに来る息子夫婦のために縫ってくれていたらしい。何度か着て、もうそのままになっていたみたいだけどね。よかったよ、虫に喰われてなくて。」
「高梨さんがお召しになっているのは、お父様の?」
「いや、これは祖父のものらしい。」
「あら、まるで対のようだからてっきりご夫婦で誂えられたんだとばかり思ってました。」
「実はね、親父は俺よりも小さくてね。俺はだから祖父の隔世遺伝だな。」
「ふふふ、だから可愛くてらしたのね。あなたのことが。」
高梨さんの少年のころに過ごした家で、ご家族のお召しになった着物を着て。
想い出話を通していままで知らなかった高梨さんのことが少しずつわかってきます。

「ゆずるさん、ってどうゆう字を書くんですか?」
「分譲マンションの譲だよ。」
「ふふ、その喩えが・・・おかしい」
「そうか。なんでそんなことが気になるんだ。」
「だって、ゆうべ教えてくださったのは呼び方だけだったから。」
「そうか。仕事仲間は皆、ジョーって呼ぶんだ。」
「それで写真集のサインがJoeだったのね。」
「見てくれたのか、写真集も。そうだね、なかなか外国人にyuzuruって発音してもらうのが難しくてね。漢字表記はそのままに、Joe Takanashi と仕事上の写真にはサインしている。」
「ええ、だからゆうべ譲さんだって聞いて、ちょっと不思議な気がしたのよ。」
「ああ、それは気付かなかった。」
ははは・・・。
プレートに盛り合わせた祝い肴を綺麗に召し上がりながら、大きな声で笑ってらっしゃるのです。お料理の味に負けないように、しっかりと入れたお煎茶を美味しそうに召し上がってくださいます。
このあとお出掛けがなければ、お酒を出して差し上げたいほどでした。
「高梨さん・・・」
「ん、もう名前で呼んでくれないのかい?」
「だって・・・」
ベッドの中で、快感に狂わされながら教えられた高梨さんの名前には、昨晩の淫らな香りがまとわりついているようでした。
口にする度にその記憶が蘇るようで・・・わたくしは、香り付けにお屠蘇に入れた日本酒に酔ってしまったように頬を染めたのです。
「ここにいる間だけでも呼んでくれると嬉しい。」
わかっています。高梨さんが、無邪気にそう思ってらっしゃるだけだということくらい。
「譲さん・・・ふふふ、照れちゃうわ。」
「ははははは、それは俺の台詞だろう。」
わん・わん・・わん・・・ 室内の楽しげな様子がわかるのでしょうか。ベランダで仲間に入れろと言いたげに白雪が鳴いています。

SnowWhite 47

片手で、注がれるお屠蘇。構えられるカメラ。
カシャ・・ カシャ・・ カシャ・・
シャッター音が始まりました。斜めから、朱塗りの杯とわたくしの指先とそして露になった頤から喉元までをレンズがなめているのがわかります。
そのリズムに合わせる様に、わたくしはゆっくりと久方ぶりのお屠蘇をいただきました。
カシャ・・ カシャ・・
わたくしがカメラの向こうの高梨さんに向かって微笑むまで、シャッター音は続いたのです。

「粋だね。祥子の飲み方は。」
「ふふふ、お上手ね。カメラに夢中になっているとお雑煮が冷めますわ。」
「ああ、いただきます。」
「どうぞ、召し上がれ。」
カメラを脇に置いて、大振りのお椀に高梨さんが手を伸ばします。
そのまま、まずお出しを味わって・・・ふうっとため息を吐かれたのです。
「お味が違いましたか?」
「いや、うちの味にあんまり近いんでびっくりした。」
「よかったわ。そう言っていただけて。」
お雑煮はその家・その家で味が違います。
基本となるお出汁の味はうかがうことが出来ても、取り合わせる具で随分味がちがうものです。
五品の具材を合わせた今朝のようなものから、具材には小松菜だけで花鰹を沢山掛けるという家もあれば、小松菜と里芋と鶏肉だけというお宅もあるのです。
まだもう一日、お雑煮を作るチャンスはありましたから、もし取り合わせが違っていたら高梨さんのお好みをうかがって明日は合わせてさし上げようと思っていました。
「ん、おふくろのより随分上等だ。」
おかわり、早速2つのお餅を平らげた高梨さんが空になったお椀を差し出します。
「はい。お餅はいくつにしますか?」
「2つ、だな。」
「はい。」
オーブントースターでお餅を焼きます。
本当は炭火で焼くと香ばしくて美味しいのですが、じっと見ていなくてはなりません。
今朝は祝い膳をご一緒したかったので、ちょっとだけ手抜きです。

「そんなことをおっしゃったら、お母様に叱られますよ。」
「ははは、九州にいるんだ。聞こえやしないよ。」
「もう、お正月から罰当たりだわ。」
「おふくろはね、ほんとうに料理が下手だったんだ。だから正月はこの家に来て、祖母のおせちを食べた。親父が銀行勤めをしてたから転勤が多くて、長男の嫁なのに祖母から料理を習う間もなかったんだろうな。ここで食べるおせちは、普段のうちのご飯より何倍も旨かったよ。」
「そうでしたか。」
高梨さんの家庭のお正月の味は<お祖母様の味>だったようです。
このお正月、少しでも曾ての想い出を楽しんでいただけるなら、こうしてお料理させていただけて良かったと思えました。
「ん、この味ならブリーダーの中野さんも文句なしだな。」
栗きんとんを口に運び、嬉しそうに笑う高梨さんの顔なんてきっとアシスタントの方は見たこともないでしょう。

SnowWhite 46

「お食事の準備ができましたわ。暖かいうちにいただきましょう。」
「わかった。白雪をベランダに上げてから行くよ。」
「はい。あっ、あの。」
カシャ・・ カシャ・・
玄関に入りかけて振り向いたわたくしの姿までカメラは捉えてゆくのです。
「なんだい。」
「お餅はいくつ?」
「とりあえず、3つかな。」
「はい。じゃいらしてね。」
カシャ・・ カシャ・・ カシャ・・
シャッター音は玄関の扉が閉るまで続いていました。
お餅を3つとおっしゃっていましたが、一度には盛り切れません。美味しく焼けるように冷蔵庫からあと2つお餅を出して常温に戻しておくことにしました。
そして、ピッチャーに入れた水をベランダにある小テーブルに出しておきました。
きっとこれで気付いてくださるはずです。
わふ・わふ・・・わん・・
まってろよ。
ベランダに白雪と高梨さんの声がします。
白雪の朝ご飯の支度をして、高梨さんが戻ってらっしゃるおつもりなのでしょう。
昨日のようにベランダからいらっしゃるのかと思いましたが、高梨さんは玄関から入ってらしたようです。そして10分ほど、リビングにはお戻りになりませんでした。

「ありがとう。出しておいてくれたんだね。」
そういって、リビングにいらした高梨さんは着流し姿でした。
「あら、お似合いだわ。」
「ははは、恥ずかしいな。とにかく食事にしよう。」
照れた風に頭を掻いている高梨さんに、紺のウールのお着物はとてもお似合いでした。
暖かなお雑煮のお椀をテーブルに運んで、わたくしは昨晩と同じ席に正座をすると三つ指をついてご挨拶をしたのです。
「あけましておめでとうございます。」
「・・あけましておめでとう。今年もよろしく頼みます。」
一瞬、高梨さんが戸惑われたのがわかりました。
それでも落ち着いた、甘くて丸いあの声できちんと新年の挨拶を返してくださったのです。
「お出掛けするっておっしゃったから、形だけお屠蘇です。」
掘りごたつのようになったリビングのテーブルに脚を下ろして、わたくしは塗りの器を高梨さんに差し出したのです。
「ありがとう。こんなきちんとしたお正月は本当に久しぶりだよ。」
「わたくし流なので、手抜きですけれど。」
一番大きな杯を手にした高梨さんに、お屠蘇を注ぎます。
「ご返杯。いや、この杯でいいだろう。」
一気にお屠蘇を飲み干した高梨さんは、彼の選んだものよりも一回り小さい杯に手を伸ばしたわたくしにご自分の使われた杯を差し出したのです。
「礼儀には叶わないかもしれないが、そうしてくれたら、嬉しい。」
「はい。」
同じ器から・・・同じ場所から同じものを頂戴する。
ただそれだけのことにこだわる高梨さんのお気持ちを微笑みながら受け取ったのです。

SnowWhite 45

この素材のものは、最近ほとんど見かけません。昭和40年から50年ころには、わたくしも祖母に良く縫ってもらっていた懐かしい着物です。
いまでは、ポリエステルや絹地の着物が沢山出回っているのですっかり影を潜めているのでしょう。
それでも、フォーマルなお出掛け着ではなく普段着のように気軽に着こなすのには、暖かく最適なお着物だと、わたくしは思っておりました。
お湯をいただいて昨日の残滓を全て洗い流して、髪を昨晩のように結い上げてお着物をまといました。
いつものように、普段のランジェリーは一切まとわずに、それでもウールの着物はわたくしの身体をほんわかと暖かく包んでくれたのです。
昨晩のナイティとランジェリーは、わたくしが持って帰ることにいたしました。
この次高梨さんとお逢いする時に、お持ちすればいいでしょう。

元旦のお膳を準備しなくてはいけません、一緒に用意されたいた羽織を手にしてわたくしはキッチンへと向かいました。
白雪は、昨晩はとてもいいコにしていたようです。
キッチンの木製の柵を悪戯した様子もなく、柵のこちら側はきれいになったままでした。
それに、リビングはすでに高梨さんの手でお掃除がされているようでした。白雪が歩き回ったなら白い毛が散っているだろうと思っていましたが、リビングの床もテーブルもとても綺麗になっていたのです。
食事を終えたら、初詣に行こう。
高梨さんはそうおっしゃっていました。たしか、最寄りの神社でも歩いてゆくのにはそれなりの距離があります。車を運転していただくには、お酒を召し上がっていただくわけにはまいりませんでした。
形ばかりのお屠蘇だけを用意して、お煎茶の支度もします。
お雑煮のお野菜を切って・・・今日は大根と人参と小松菜とかしわ、そしてごぼうのささがきを少し・・・それぞれにゆがきます。
柚の飾り切りをつくって、お餅を3つ焼きました。
昨晩準備したおせちの祝い肴を、白磁の大きなパーティトレイに少しずつ盛りつけてゆきます。
まめに・数々・立つ様に・・・黒豆と数の子と田作りトレイの中央に、花の形の紅白の酢蓮とともに飾ります。
右には小鉢に盛ったお野菜の煮付け、鮪の昆布巻き、くわいの煮物。左には栗きんとん、紅白のかまぼこ、芝えびを擂って作った厚焼き卵、伊達巻き・・・。
各々の取り皿と、祝い箸を用意してテーブルに並べます。
焼き上がったお餅とお雑煮の具を器に盛って、お出しの火を止めてわたくしは高梨さんを呼びに玄関へ向かいました。

「おっ、似合うね。」
カシャ・・ カシャ・カシャ・・
ウールの着物の上に割烹着を付けたままでつっかけで玄関を出たわたくしを、いつ持って出たのでしょう。高梨さんのカメラが捉えるのです。
わん・・わん・・・・
白雪の声が随分遠くから聞こえます。いったいどんな遊びをしていたのでしょうか。
「もう、こんな格好を撮らなくたって。」
カシャ・・ カシャ・・ 
「いや、なかなか撮れないからね。こんな姿は。」