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夏の終わりに

薄紅の花脈が透ける花びらはまるで括られた女性の乳房のようだった。
微かな風にゆれるその姿は男の視線に身悶えするあの女性の身体のようだった。

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もうしばらく触れていないその女性を思い出したのは、徹夜仕事明けに通り抜けた不忍の池の畔だった。

いつもの黒いシャツの背中に当たる日射しが強かった。
疲れているせいだろうか・・・汗が滲む。
部門長として設計に携わるようになってからは、仕事の現場で汗をかくことはほとんどなくなった。

私が汗をかくのはたった一人、あの女性を責める時だけだった。
他の女との時には、そうだ・・・汗をかいた記憶すらない。

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あの女性の時だけは、助手席に彼女を座らせただけで身体が上気するのがわかった。
他の女なら20分以上咥えさせてはじめて立ち上がるものさえ、あの女性なら隣に居るだけで疼き出すのだ。

今年のような酷暑の夏も、あの吸い付くような肌は白いままだろうか・・・

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あの女性の肌はどんな季節でも白かった記憶しかない。
日に焼けたと恥ずかしげに顔を伏せた時でも、その肌は微かな赤みを浮かべただけだった。

そのくせ、縄や鞭には敏感に反応する肌だった。
赤い縄は解いてもいつまでもあの女性から離れるのを拒むように、縄の痕を鮮やかに残していた。
他の女の肌にはかすかな赤みすら残さない柔らかな革の鞭でも、あの女性の肌にはくっきりと軌跡を残した。
まるで、あなたの印の残っている間はあなただけのモノだと言っているかのように。

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背に残る鞭の名残を愛でるように、吊るしたままのあの女性を後から激しく責め立てたこともある。
乳房の根本に残る縄の痕をねぶりながら、やめてと喘ぐあの女性を貪るように貫き続けたこともある。

あの女性の胎内の感触は格別だった。
つぶつぶとした・・・いや蓮の花の花芯に惑わされてるのかもしれないな。
言葉では顕しきれない。
他の女なら1時間以上も責め立てられる身体のはずなのに、あの女性だとそうはいかない。
どれほど責め立てた後でもあっという間に追い上げられ・・・何度肌の上の紅い痕の上に振りまこうと決めていても、それを果たす事はできなかった。

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あの女性の中は・・・ だめだ 我慢ができなくなる。
他の女をどれほど酷く責め立てても、私のS性を満たす事はできない。
あの女性でなければ・・・

あの女性は、いまどうしているだろうか。
まさか他の男のものになってはいないだろうか。
連絡を・・・して みようか・・・

祥子・・・






ひまわり

都心からたった30分。
なのに・・・そこは油蝉の鳴き声が騒音のように響きわたっていた。
木立の幹に隠れるように擬態する無数の蝉の、声だけの存在感がただでさえ暑い気温を2℃ほど押し上げた様な気がした。
何か目的があったわけではない。
ふいに訪れたただ一日のお休みをエアコンの効いた自宅に籠って過ごすのが嫌になったから、カメラだけを手に外出を決め込んだだけだった。

なんということもない住宅街の中にある高校の塀を超えたそこに、それはあった。

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一面のひまわり。
わたしですら見上げるほどに丈高く伸びた姿はまるで自然の要塞だった。

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息苦しいほどの緑の薫り。
あんなに煩かった蝉の音すら遠ざかっているような気がする。
替わりにまとわりつくのはミツバチの羽音。
よく見るときちんと整地された中に植えられているひまわりの群れの中に、わたしは足を踏み入れた。

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圧倒的な高さ・きらめくような花の色。
映画<ひまわり>の中でソフィア・ローレンがはじめてモスクワのひまわり畑を見た時に一瞬声を失っていたことをフラッシュバックのように思い出した。
無限につづくひまわり畑を見ても暑さを感じる事もなく、とめどもない悲しさにわたしも襲われた。

あの映画は悲しい物語だった。
ひまわり畑が実は敵兵を処刑した跡地に作られたものだったことも・・・
ずっと独りで帰りを待っていた愛する男性が、敵地で救ってくれた女性と家庭を持ち子供を作っていたことも・・・
戦地に赴き帰ってこない彼を待つ間の、彼女のやるせない気持ちに世間が向けた敵意も・・・

夏休みの象徴のような・・・能天気な花が、少し怖くなったのはあの映画をみたのがきっかけだったろう。

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そしてもう一つは<冬のひまわり>。
五木寛之氏の短編小説。
せつない・・・せつない恋の物語。
このヒロインは新たな恋のきっかけを手にできずに彼女を守る家庭に戻っていった。
それが自分にとっての幸せと信じて。

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途切れることのないと思われたひまわり畑は・・・・やがて住宅街へと姿を変えた。

白昼夢のようなひととき。
ひまわりにもう無邪気な夏を感じられないと悟った・・・そんな午後。