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初雪 30

そろそろと駐車スペースを探し、漸く小型車エリアのはずれに停めたのです。
「おつかれさまでございました。甘楽です。10分ほどでよろしいですか」 
「ありがとう。結城くんは疲れないか? もう少し休んでもいいんだよ」 
こんな姿のまま、パーキングエリアで過ごさなくてはならないのでしょうか。でも山崎さんのおっしゃるように結城さんは運転し続けているのです。 
「私は大丈夫です。それでは10分後に」 
バックミラーごしに後を振り返ることもなく答えます。それもわたくしとは、一度たりとも視線を合わせようとせずに。

山崎さんが右のドアを開けました。
「さぁ、祥子さんも行きますでしょう」 
「ええ」 
そう返事をしながらも、わたくしは動けずにいたのです。
「せっかく暖まった車の中が冷えてしまう。行きましょう」 
山崎さんに手を引かれて・・ミドル丈のコートの裾を乱さないようにそろり・・と車外に出たのです。
「ふふっ・・」 
バァゥッ・・と閉めるドアの向こうに石塚さんの含み笑いが聞こえました。

雪が多いと聞いていましたが、パーキングエリアの中には雪は見当たりませんでした。
綺麗に除雪された足元が、日陰ではかすかに凍っているのがわかりました。
気温も嵐山とは比べ物にならないほど下がっていました。
「あっ・・・」 
先ほどまでの淫戯に濡れそぼった太ももの間のストッキングが・・・一気に冷たくなっていきます。
外からはわからないと思いながら・・・コートの下のはしたない姿を思うと・・恥ずかしさに身を隠したくてわたくしは山崎さんに一層寄り添ってしまうのです。
次のサービスエリアよりは規模が小さいとはいえ、思っていたよりも利用客の方は多かったのです。それも男性のお客様が。
ロングブーツにシャドーフォックスの豪奢な毛皮を羽織り、たかだかパーキングエリアの中なのに男性に腕を取られてエスコートされるわたくしは目立つ存在だったのでしょう。
化粧室に行くまでにも、幾人もの男性から・・・見られていることはわかっていました。
立ち居振る舞いを含めて、この場にあまり相応しくない姿だからなのは解っていました。
なのに、こちらを見ている他の車の男性達にまで、わたくしのコートの下のはしたない姿や、ここまでの痴戯さえも・・冷たくなったストッキングのことさえも知られているのではないかと思われてならなかったのです。
「祥子さん」 
石塚さんが後から下りて来てわたくしの左隣に並んだのです。
「はい?」
「あんなにシートを濡らしちゃだめですよ」
「いやっ・・・」 
腰を抱く様にしてわたくしを引き寄せると・・・耳元にこそっとつぶやくのです。
わたくしの腰のところのシートが濡れていたのでしょうか。
まさかあのオフホワイトのシートに、恥ずかしいシミが出来てしまったのでしょうか。
わたくしは顔を赤くして、山崎さんのコートの肩に顔を埋めるように俯いてしまいました。
「また何を言ったんですか?」 
とがめるような口ぶりで石塚さんに話しかけます。でも左腕はすがるわたくしの身体に一層押し付けられていました。山崎さんの腕にふれる乳房の感触がコート1枚に遮られているだけのものだと、知っているのはお二人だけなのです。
楽しませていただいてますよ・・・山崎さんの引き上げられた口角がそう告げているようでした。
サービスエリアの化粧室まですぐです。
山崎さんの腕から手をほどき女性用へ、わたくしは1人だけ向かいました
「きれいにしてきてください。」 
淫らな意味の籠る言葉を、明るく大きな声で石塚さんがかけるのです。
「ゃぁ・・」 
まわりの誰が聞いていても不思議はない状況でした。
意味の解るわたくしは・・・真っ赤に俯いて・・・化粧室へ急ぎました。

パンティストッキングはわたくし自身の愛液と石塚さんの口戯で・・太ももの中程まで濡れそぼっていました。
化粧室の個室の中で、わたくし自身の身体だけでなくストッキングそのものも幾度となく拭いました。
どれだけ拭っても・・・あれほどに薄い素材なのに濡れた感触はなくならず、ただ1枚はしたない姿を隠すために身に付けた、ファーコートのすべすべしたサテンの裏地が素肌を・乳房をこする感触は・・・わたくし自身の身体から新しい蜜を汲み出す役目しかしてはくれなかったのです。
それでも・・・数分を費やして、ハンドバックの中のウェットティッシュまで使って・・・出来るだけ身体を清めて二人の男性の元に戻りました。

「いつも通り碓氷軽井沢で下りる様に結城くんには言っておいたよ。彼女の腕なら問題ないだろう」
「あぁこの車だし大丈夫でしょう」 
お二人はこの先のルートを話し合っていたようでした。
「お待たせいたしました」 
日差しがあるのに冷たい空気の中に二人の男性は優しく微笑んで迎えてくださいました。
「綺麗にしてきましたか?」
「そんなこと 仰らないで」 
意地悪な石塚さんの問いに、わたくしはやはり山崎さんに縋る様に腕を絡めてしまったのです。
「やっぱり山崎のほうが好きですか?」
「石塚さんがいじわるを仰るからです」  
冗談とも真面目ともいえない表情で石塚さんがわたくしの頬を撫でるのです。
羞恥に熱くなっている頬を知られてしまったでしょうか。
「それにいじわるなことも・・・もう、止めてください」 
パンティストッキングだけしか身に付けていない姿で毛皮のコートを羽織り・・・男性の利用客が多いパーキングエリアで立ち話をする、そんなはしたなさに潤んでしまう瞳でお二人を見つめてお願いをしたのです。
「美貴にだけあんな姿を見せた罰です」 
山崎さんがきっぱりと言い放つのです。
「僕たちにも僕たちだけの祥子さんを見せてください。それともこの旅行の後で僕たち一人一人とデートをしてくれますか?」 
どうして・・・わたくしだけがこんなに責められなくてはならないのでしょう。
「そんなこと・・・お忙しいのでしょう。お約束できないわ」 
お二人とも素敵な方です。だからといって口先だけの約束は、わたくしには出来ませんでした。
「それじゃあと数時間は僕たちの思うままにさせてください」
「でも・・おねがい。結城さんのいらっしゃるところでもう・・なさらないで」
同性の女性が居る場所での淫戯にわたくしは耐えられなかったのです。声を抑え反応を堪えることで・・・疼きはよりいっそう体奥に蓄積されてしまうのです。
ここで休憩をとられなければ・・・わたくしはシルクのスカーフで抑え切れない喘ぎを上げてしまったことでしょう。

「この先で僕たちに写真を撮らせてくれますか?」 
山崎さんが唐突にこんなことをおっしゃいました。
「えっ・・・写真ですか?」
「ええ、ちょっとした植栽があります。そこで」 
左手のショップとカフェテリア棟の向こうに樹々が植えてあるスペースがあったのです。こじんまりとしたカフェテリアの窓から見えるあの小さな植え込みのことでしょう。
「いいですね。撮らせてくださったらこの後は紳士的に別荘までお連れしますよ」
連れ立って、石塚さんがおっしゃる方向に歩き出しました。
「お写真なら・・・構いませんが。お二人とですか?」
どちらかと携帯電話のカメラを使って、記念撮影のようなものを撮るだけだと思っていたのです。
お二人のどちらの手にもカメラらしきものがなかったからです。
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