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初雪 46

さらっ・・ 背後で畳まれた長襦袢を広げる衣擦れの音がいたしました。
「失礼します」 
「ぁ・・ん・・」 
髪を結い上げたうなじに望月さんの熱い息がかかります。バスローブの襟を掴むとそのまま下に剥き下ろされてしまったのです。
抗議の声を上げる間もなく、肩には淡いブルーの長襦袢が着せかけられました。
「肌襦袢は?」 
「申し訳ございません。今夜はご容赦ください」 
湯文字を纏うなら、当然のように上半身にも同じ機能を果たすものを身に着けると思っていたのです。なのに・・・。
望月さんは、箱根での時のように・・・張りのある絹でわたくしのGカップの乳房を覆い・・ボリュームを抑えるように巧みに着付けてゆくのです。
贅沢な重みのある綾絹の長襦袢でした。
真珠色の伊達締めで整えられると、まるでそれだけでも充分な装いであるかのような見事さが際立ちます。
流水の地紋が織り出された重みのある絹は、所々に・・・墨絵のように淡彩で白の侘助が描かれていたからです。裾と袖だけに配されたその白侘助は・・湯文字の赤が透けて・・裾だけはほんのり淡いピンクの花弁に見えるのです。
半襟は白地に白糸と銀糸で雪輪を刺繍した・・シンプルで上品で・・滅多に手にいれることのできない美しいものでした。
「すてきだわ。もったいないこと、これが長襦袢だなんて」
「恐れ入ります」 
わたくしの背に回った望月さんは言葉少なに答えます。 
彼の実家が京都の呉服問屋だとはいえ、これだけのものを用意するのは決して簡単なことではなかったでしょう。
 
「祥子様」
鏡の中の襦袢に見とれていたわたくしの肩に、今度は着物が着せかけられました。
「本来でしたら伊達襟をあしらうと一層引き立つのですが・・今夜はご容赦ください」
この着物でしたら、紅か翡翠色の伊達襟を添えると一層豪華になったことでしょう。
でもこれからの時間を思うと・・・伊達襟を付けた装いは邪魔でしかないのです。
肌襦袢を着ることを許されないのと同じ理由で・・・。
どれほど美しく・見事に装っても、装った姿を鑑賞していただくことがこの方達の最終目的ではないからです。
この装いは三人の紳士と・・そしてこの望月さんの手で・・剥がれ・辱めるために用意されたものだからです。
まるで今朝のランジェリーやパンティストッキングのように。
「いえ、このままでも充分だわ」
「そう言っていただけるとほっとします」 
このことは暗黙の了解なのです。気を取り直して、鏡の中で整えられて行く着物に瞳の焦点を合わせたのです。
襟元の雪輪とやわらかく・淡く描かれた淡雪が見事に調和し・・・これまでの淫楽にまみれた時間にやつれたわたくしの顔さえも、明るくみせてくれていました。
襟元を整え・腰を決め・2本の紐で瞬く間に着付けてゆくのです。
綺麗に抜けたうなじ・・・上品に合わせられた襟元。箱根の時と同じ品があるのに艶やかな着付けでした。
裾から袖に描かれた紅侘助が白い雪の世界に・・・はっとするほどの彩りを加えているのです。そして花のそばにきっかりと描かれた常緑の葉が清冽な美しさを際立たせます。

「お食事もありますから、あまり苦しくないように着付けさせていただきます」
そういって袋帯の手をわたくしの左肩に預けるのです。
「お願いします」 
半折りにした帯の手を押さえました。
金箔のたっぷりとした袋帯に帯板を挟み込み胸高に二巻きし、後で手とたれを結びます。
「苦しくはありませんか?」 
「ええ、大丈夫です」 
望月さんはわたくしの真後ろに立ち、いまはもう鏡越しにわたくしに問いかけます。
しっかりと巻かれ、結ばれていても不思議と不快な圧迫感がないのです。祇園で男衆さんから習ったという彼の着付けは・・・盛装になるほど際立つ見事さでした。
「これをお願いします。仮結びでかまいません」 
背後から渡されたのは、帯枕を包んだ深緑の帯揚げでした。金の松葉を散らしたシックなものです。
「はい」 
わたくしはきゅっとひと結びし・・・かるく片蝶に止めました。
「帯締めをおねがいします」 
丸ぐけの帯締めが後から渡されました。しっかりと花結びをして房が上に向く様に左右の脇に挟み込みます。
お太鼓の形を整えた望月さんが、わたくしの前にいらっしゃいました。
ただ一つ仮結びされていた帯揚げを整えると・・・帯の中に入れて・・今夜のわたくしの着付けが終わったのです。
 
「いかがですか?」 
望月さんがわたくしの背を鏡の方に向けました。
「素敵だわ・・・」 
定番のお太鼓結びなのに・・・その着物は帯を加えられたことで、格段に華やかな装いに変わっていました。
髪に刺されたかんざしの椿さえも、まるで着物から抜け出した様なのです。
「お綺麗です。祥子様は花の柄が本当に良くお似合いになります」
「ありがとうございます。こんなに素晴らしいお着物、うれしいわ」 
わたくしを見つめる望月さんの瞳には、別荘で迎えてくれたときには見られなかった喜びの表情が溢れていたのです。それに・・・彼なりの控えめで誠実な欲望さえも。
「祥子様 私にご褒美をいただけませんか?」
これから起こるであろう時間が、二人の脳裏をよぎりました。
わたくしは・・多分明日の朝まで・・・三人の男性に嬲られつづけることになるのです。
「ええ、これでよろしいの?」
望月さんの方へ向き直り・・・わたくしから口づけをしたのです。
少しでも穢れる前に・・・こんな素晴らしいプレゼントを用意してくれた彼に、わたくしを感じてほしかったのです。
「んぁ・・っぅ」
彼の口づけは濃厚なものでした。
扉の向こうには、主である美貴さんをはじめとしたお三方がリビングに寛いでいるはずです。
主とそのお仲間の想い人とのディープキス。
まるで秘めた二人きりの時を彼らには渡さないと・・・全て貪るような激しさでした。
「ありがとうございます。祥子様」 
名残惜しげに身体を離すと、耳元に熱い吐息とともに望月さんの囁きが届いたのです。
そして彼との戯れが・・・わたくしのさきほど清めたばかりの身体を、またはしたなく潤わせてしまったことに気づいたのです。
 
「お食事が用意してあります。参りましょう」
たとう紙をたたみ重ねると、望月さんはリビングへつながるドアを開けたのです。
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コメント
雨上がりに、栗の花の香りが漂う季節となり、彼の味を思い起こさせ、胸の底がざわめきます…。
今はお月様。今日、夕食を一緒にしましたが、何も出来なくて…。
先日コシノヒロコさんの”襲(かさね)”というお着物の展示会に伺いました。そこにいらした彼女は竹久夢二の様にゆったりとした着物の着こなしでした。憧れます。

2006/04/28 22:46| URL | るり  [Edit]
 二重太鼓!しかもちゃんと結ぶ形の帯ですね!
結ぶのは自分ではやりにくいですもんね。
さやかは袋帯は苦手なのです。
でも、やっぱり、名古屋帯ではくるくるくるが出来ないですよね。
祥子さんは下着を着けないで着れるの。いいなぁ。
さやかは、お腹にタオルを巻かないと
綺麗に帯が結べないんです。
彼がほどいたら・・・・タオルがポトって・・・・!
( ̄□( ̄□( ̄□ ̄;)!!ガーンガーンガーン………
き、着物では、プレイできないかも。


2006/04/28 23:04| URL | さやか  [Edit]
涼やかなGWの始まりです
東京は朝の日差しが嘘の様に薄曇りな空模様になってきました。
GWの初日、皆様どうお過ごしでらっしゃいますか?

るり様
「栗の花の香り」 この身に熱い迸りとして教えられるまで
男性が複雑な顔であの花の下を歩くのがどうしてなのかわからないままでした。
いまでは・・・・熱い夜を思い出させることを知りましたけれど・・・

コシノヒロコさんの着物の着こなしは
きっと彼女のゆるぎない存在感と女としての自信に裏付けられているのでしょうね。
るり様のお気持ち・・・とても良くわかります。

さやか様
さやか様のスレンダーなお身体だと
ついタオルなどを沢山当てたくなってしまうのでしょうね。
着付けの時に、無闇に付属を使わないようにわたくしは気をつけています。
だって、わたくしたちの祖母や曾祖母の時代、
毎日着物を着る度にあんなにたくさんのいろんなものを当てていたなんて
どう考えても不自然ですものね。
くびれたウエストの部分はおはしょりの下前を上に上げてカバーするとか
帯を半幅帯にして少し下目で結んでみるとか
初歩的な工夫で「着物プレイ」が可能になるかもしれませんね♪

2006/04/29 13:53| URL | 祥子  [Edit]
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