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ジューン・ブライド 3

「店長、あっちの席に移ってもいいですか?」
トモくんはカウンターの椅子を引こうとしたわたくしの手を押しとどめると、まだ空いていた少し死角になるボックス席を指差したのです。
「はい、どうぞ。そのままお身体だけ行って下さい。あとはこちらでお持ちします。」
彼はすでに何度かこのお店にきたことがあるのでしょう。店長さんは快く答えてくださいました。
「お飲物はなにになさいますか?」
トモくんのグラスとおでんの皿と真新しい箸を運んでくださった店員さんが、ミンクのコートを脱ぎスーツスタイルになったわたくしのオーダーを聞いてくださいます。
「そうですね、熱燗をいただけますか。トモくんも飲む?」
「ん~まだいいかな。僕は、エビ黒を1本。」
「それじゃ、お酒は1合でお願いします。」
わたくしのオーダーの声に、カウンターの向こうの店長は無言のままで徳利に日本酒を注ぐと、銅の鍋のとなりのお燗場に首までとっぷりとつけました。
「祥子さんは好き嫌いはなかったよね。」
「ええ」
「じゃ、おでんは見計らいでお願いします。それと、べったら漬け。とりあえずそんなところで。」
 
ありがとうございます、店長・・・ 
オーダーをカウンターへと向かいながら復唱する店員さんの声を背に、わたくしは久しぶりに逢うトモくんへにっこりと微笑んだのです。
「お燗が上がるまで、ビールでもどう?」
わたくしの前に置かれたグラスに、届いたばかりのエビスの黒を注いでくれます。
「ありがとう」
グラスの8分目ほどまで注がれたところで、軽く上げてもうこれ以上はいいわ・・・と合図をします。
「もう松も明けちゃったけど、改めて。あけましておめでとう、祥子さん」
「おめでとう、トモくん」
チン・・・ 瞬く間に埋まってゆくカウンターの穏やかなざわめきの中で、彼と久しぶりの乾杯をしたのです。

「こんな風に一緒にお食事するの、はじめてね。」
「うん、そうだね。ビールを一緒に飲むのははじめてじゃないけどね。」
いつも車で移動する彼とは、ベッドに入る前に・・・1本の缶ビールを分け合うことは幾度かありました。
ただし<いつも>ではなかったのは・・・ビールを手にする間もなく、ベッドへとなだれ込んでしまうことも少なくはなかったからです。
「いいお店を知っていたわね。」
「ああ、ここ。いつかね、祥子さんを連れて行けるお店がないかと思って探しておいたんだ。祥子さんをいつも仲間と行く居酒屋なんかには誘えないからね。」
トモくんの視線がチラとわたくしのコートに走ります。ミンクのコートを着たわたくしと逢うのはもう3度目のはずです。前の2回はもう1年も前のことでした。
「ふふふ そんなこと構わないのに。ほんとうにいいお店ね、さすがだわ。」
いつも逢うなりそのままホテルへと車を走らせる彼が、こんなことを考えてくれているとは思ってもいませんでした。
「それに、こんなデートをしようとトモくんが思ってくれているなんて意外だったわ。」
「もちろん、いつも考えていたよ。でも、祥子さんとは逢っても時間が遅いし、なかなか逢えないから顔を見ると我慢できなくなっちゃって。」
トモくんは照れた様に笑うと、テーブルに届けられた熱々の徳利を取り上げます。
あち・ち・・・と口にしながら、わたくしの杯に注いでくれました。
「もう、まるでわたくしがいけないみたいな言い方ね。」
「そんなんじゃないってば」
あはは・・・明るく笑う顔は、屈託のない彼のものだったのです。
 
「で、こうして差し向かいで飲みたかったからあんなに強引に誘ったの?」
「それだけじゃないけど」
「話があるなら、酔う前に聞くわよ」
一瞬、トモくんの表情が堅くなった、やはりなにかあるのね。
「話はまず食事をしてから。いいでしょう、祥子さん」
「そうね、暖かいうちにいただきましょうか」
彼が自然に話し出せるタイミングになるまで・・・わたくしは待つことにいたしました。
テーブルの上に並べられた湯気の立つおでんに、わたくしたちは揃って箸を伸ばしたのです。
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コメント
一緒に食事するって、実はsexするのと同じ
くらい大事だったりするよね。女性が食べてる
姿見てるのって好きだな。

でも彼の話って何だろうね。今更好きだなんて
シンプルな話じゃないよね、きっと…。

2006/06/16 22:19| URL | eromania  [Edit]
一緒に食事をしてる時に見る
美味そうに食べてる表情って
いいですよねぇ……(*´_ゝ`)

しかしおでん‥だしがよく染みてるであろう
大根‥真夏日の声も出るこの時期だけど‥
なんか無性に食いたくなったのは俺だけ!?

2006/06/16 23:03| URL | HAIREI  [Edit]
梅雨入りと同時に典型的な梅雨空。
この雨が恵の秋をもたらしてくれることを祈って
少し不快なこの時期を一緒に楽しみませんか?

eromania様
男性と一緒にお食事をするのって、
とてもエロティックな行為に思える事もございますね。
わたくしは男性のお食事のマナーと
ベッドの上のマナーは同じに思えるものですから
ひっそりと観察させていただいております(笑)。
お気に入りの年若い彼の<お話>。
どうぞ続きをごらんください。

HAIREI様
美味しそうな表情♪
それはある意味での官能の表情なのかもと思います。
五感をフルに動員して味わう・・・お食事。
セックスと同じですものね。

このお店は、いまは1年中大根をご用意されていますが
以前は冬しか大根を出さないというほどに
<旬>を大事にするこだわったお店だったんですよ♪

2006/06/17 08:29| URL | 祥子  [Edit]
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