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ジューン・ブライド 4

お食事はさすがなお味でした。
江戸風の濃くて甘いまったりとしたおでんは、日本酒にぴったりで、後半はトモくんも熱燗を一緒に楽しんだほどでした。
 一通りお食事の終わったテーブルの上には熱燗のセットと、お漬け物だけが並んでいました。
「祥子さん」
トモくんがいつにない真剣な声でわたくしに呼びかけたのです。
「なぁに?」
ほんのりと目尻が紅く染まるほどに酔ったわたくしは、とうとうお話してくれる気になったのね・・・と思いながら彼を見つめたのです。

「結婚する事になったんだ。」
いまここで、あらためて心を決めたかのような言葉がトモくんの口から出て来たのです。
「あら、おめでとう。良かったわね。」
26歳・・・あと数ヶ月で27歳です。付き合っている恋人がいるなら、<結婚>という話が出るのは時間の問題でしかなかったはずです。
「ありがとう。」
陽気に返したわたくしの言葉に、図に乗ってのろけを口にしないところが・・・トモくんの良いところです。正しく躾けられた、素性のいい素敵な男の子。
「お式はいつなの?」
「6月の予定だよ」
手元で空いたままになっていた杯に日本酒を注ぎました。彼は上の空の体で満たされた日本酒をぐい・・と一息に飲み干したのです。
「そう、ジューン・ブライドね。素敵だわ。幸せになってね。」
わたくしは徳利を手にすると、再び空いた彼の杯に改めてお酒を満たしたのです。
「それじゃ、もう逢う訳にはいかないわね。いままでありがとう。トモくんに出逢えて楽しかったわ。」
奥様のいる男性とお付き合いするつもりは、わたくしはありませんでした。彼が結婚をするというのなら、それは二人の関係の終わりを意味しました。
わたくしたちは、ただのセフレなのです。互いのことを何も知らないほどに・・・
 
「もう逢ってくれないの?祥子さん」
「ええ。新婚さんのご主人とお付き合いする必要なんかないでしょう。」
「そう言うだろうと思ってたよ、でも別れたくない。結婚してもいままでみたいに逢ってほしい。」
トモくんの視線も声も・・・本気でした。
わたくしは当然のように首を横に振ったのです。
20代の前半であろう若くてかわいい新妻から夫を寝取る、不倫相手に成り下がるつもりはまったくありませんでした。
「ごめんなさい。せっかくだけど、もうお付き合いはできないわ。不倫しなくちゃならないほど、相手には不自由していないのよ。」
わたくしは、もう日本酒の杯には手を付けませんでした。
お食事が終わったのを見計らってテーブルに届けられた暖かい日本茶を、ゆっくりとすすったのです。
「いやだ。いままでと、なにも変わらない。祥子さんに淋しい不自由な想いはさせないから、これからも逢ってほしい。」
「だめよ。」
この話はもうおしまい。そんな意味を込めて、わたくしはこの一言を口にしたのです。
トモくんは手元のお酒をぐいっと煽りました。そして、コートと伝票を掴むと・・・わたくしの耳元に囁いたのです。
「出ましょう。祥子さん。」
 



「どうしたの、ねえさん。黙りこくって。」 
鎌倉の紫陽花寺の境内は、植え込みに沿って奥の院の手前まで竹の手すりが渡された回遊路が出来ていました。前日の雨のせいで滑りやすくなった脚元への配慮なのでしょうか・・・。
「いいえ なにも。綺麗ね、ほんとうに。」
わたくしは脳裏の中の雪のちらつく夜のトモくんの横顔を意識の中から振り払いました。
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コメント
はじめましてです。

改めて、訪問させていただきました。「ジューン・ブライド」のシリーズを拝読させていただきました。マジ話のように捕えてしまいましたが、妄想なんですか?

日々お忙しいとは思いますが、お時間のあるときに、訪問していただければ、幸いです。
今後ともよろしくお願いします。

2006/06/18 00:25| URL | kei  [Edit]
kei様
ようこそお越しくださいました。
ふふふ・・・そんな風に思われましたか。
事実は、ご想像にお任せいたします。

これからもどうぞお時間がおありの時にはぜひお越し下さいませ。
わたくしもkeiさんのブログに立ち寄らせていただきます。

2006/06/18 11:30| URL | 祥子  [Edit]
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