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桜陰 9

「久しぶりの祥子の肌は相変わらずいい香りだ。仄かな薔薇の香りがする。」
わたくしの肩を軽く抱く様にしてゆっくりと歩きはじめました。はずされたコートの釦の下の肌に少し冷たい空気が触れてゆきます。
「しらない・・・いじわる・・」
高梨さんの肌へのキスの快感が、わたくしを最初から羞恥の淵へ突き落としたのです。
「そうして拗ねている祥子も可愛いよ。そそられるね。その肌をもって桜色に染めるまで・・・辱めたくなる。」
耳元に口を寄せて囁く高梨さんとわたくしを見れば、大人なのに人目を気にすることもない熱烈に愛し合う、そんなカップルに見えたに違いありません。
「しないで・・・もう・・」
わたくしは瞳を潤ませて・・・高梨さんを見上げると・・・弱々しくお願いをしたのです。

10代の方達の様に路上で抱き合ったり、キスをしたり・・・そんなことはわたくしの美意識にはありません。たとえ誘われても、二人きりになれる場所までいなして・・・ようやく許すものなのです。それを、こんな公道の真ん中でなんて・・・。
次の桜にたどり着くのを少しでも遅らせたくて、気もそぞろなのに立ち並ぶショップのウィンドウを覗こうと・・・彼の腕を引くのです。
でも、いずれ3本目の桜はやってくるのです。

「さ、3本目だよ」
立ち止まった高梨さんは、その場でわたくしを引き寄せると・・・性急に唇を重ねました。
「ん・・ん・・くぅ」
3本目の桜はオープンカフェの大窓のすぐ側でした。天気のよい今日は、咲き誇る桜を楽しめる開け放たれた窓の側に2組のカップルがお茶を楽しんでいたのです。
でも、わたくしはその姿に気づく間も与えられなかったのです。
先ほどとは逆に、カフェに背を向けて・・・車道に向かうように高梨さんに抱かれていたからです。
 
覆いかぶされる彼の顔の下で、わたくしは顔をあおのけて唇と舌の洗礼を受けていました。
「ん・・ぁ・・・」
ちゅ・・ぷ・・ 絡まり合う舌と舌・・交わされる唾液の淫らな音までもが、わたくしの背後にあるお店の中にまで聞こえてしまいそうな・・・キスです。わたくしが最初に恐れていた、セックスの一部としてベッドで与えられるようなディープキスなのです。
「・・・く・・んぁ」
なのに、高梨さんの手は背中を腰に向かって這い回ることさえしないのです。愛しい宝物を抱きしめ、どうしても我慢が出来なかったとでも言う様に強く・きつく、わたくしの背をに腕を回したままでした。

わたくしの背では、カフェの二組のカップルがほどなくこちらに気づいたようでした。
大人の2組のカップルはそれぞれに小声で囁き交わすと、一組は二人の世界に戻ってゆき・・・もう一組は固唾を飲んでわたくしたちの様子を見つめておりました。
最初は互いテーブルの上に置かれていた手がいつの間にか重ねられ・・・女性の身体は男性の肩へと・・・すこしづつしなだれかかっていたのです。
「・・ぁ・・は・・ぁぁ・・」
じゅ・・ちゅ・・ぅ・・ 舌を繰り出させられ高梨さんの唇で吸い上げられる・・・あまりに恥ずかしい行為に・・・彼に抱かれたわたくしの身体から、ふと力が抜けてしまったのです。
くずおれそうになる身体を高梨さんの腕が支え続け、でも唇を離してはくださらないのです。
「も・・ぉ・・・ぁぁ・・ん」
高梨さんの舌がまるで自分のものだと印を付けるかの様に・・口腔の全ての粘膜を舐り・・・撫でるのです。
ガタっ・・タっ・・・ 背後の2つの椅子が鳴る音に、わたくしは身を堅くしました。見えない背中が人のいる場所だったと初めてわかって・・・蕩けかけていた理性を取り戻しました。
「・・だ・め・・ぇ・・」
唇の間から漏れる声に、濃厚なキスはストップされました。
と、同時に高梨さんは立ち止まったときと同じ唐突さでその場を離れるように・・わたくしの背を押したのです。忘れずに反対の手でコートの第二釦を外しながら。
 
「祥子のキスは甘いね。美味しかったよ。」
「ぃゃ・・・」
キスを解かれて歩き出す時に・・・わたくしの背後にあったのがカフェだったことをはじめて知ったのです。
それも、あの時に視界を横切ったカップルだけじゃない・・・席を立った二人もいたわけですから、それに他にも・・・それだけの人たちの目前で・・・あんなキスを。
「あの二人は、きっとこんな時間からホテルだな」
わたくしにあんなキスをしながらも、周囲をも見ていたらしい高梨さんが可笑しげに告げるのです。
「僕たちのキスに当てられて、男の手が最後は彼女のスカートに潜り込みそうになっていたからな」
わたくしたちを窺っていた二人は、キスに夢中のはずのこちらに見られているとは思ってもいなかったのでしょう。
「もう そんなことになっているなら、もっと早くやめてくださればいいのに」
「この美味しい唇を離すわけがないだろう。いまでもキスしたままで歩きたいくらいだ。」
ははは 冗談ではないよ、と笑う高梨さんの眼には確かに欲望が滲んでいました。
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コメント
祥子さん、こんにちは。

昨日はありがとうございました。
早速素敵な画像に差し替えました。
月を目立たないようにさりげなく取り入れるその感性が祥子さんらしいですね。
私は月明かりのイメージばかりで思いつかなかったです。
又一つ勉強させて頂きました。
これからも、宜しくお願いします。   ・・縄指導・・

2006/07/24 12:54| URL | 縄指導  [Edit]
祥子さんは意外な事と恥ずかしい事されると身体の奧が感じるのですね!

2006/07/24 16:40| URL | 才蔵  [Edit]
夜になって急に気温が上がってきました。
今夜は蒸す夜になりそうです。

縄指導様
喜んでいただけて幸いです。
もっと大きな画像にしたら、別の効果が出ていたかもしれないですね。
素敵な女性の肌の、青白い月の光の演出が素敵でした。

縄指導様はいまご自分のブログで官能小説をスタートさせています。
いままでは、ご自身の行為の記録でしたが
新たな境地を切り開かれていらっしゃいます。
フィクションとノンフィクションの狭間の・・・甘美な一時を
ぜひお楽しみにいらしてくださいませ。
縄指導様のブログは右のリンク集の中にございます。

2006/07/24 21:04| URL | 祥子  [Edit]
才蔵様
恥ずかしいことは、女の気持ちを動揺させますもの。
でも一番大切なのは何よりも信頼できる・・・好きになれる方がお相手でいることだと思いますの♪
そういう方でなければ、意外な行為は単なる精神的な暴力以外のなにものでもありませんわ。

2006/07/24 21:06| URL | 祥子  [Edit]
男にとってはKISSはKISS。
でも女性にとってはdokidokiしたり、うれしかったり、はしたないけど感じる行為なんですね。

もちろん気持ちが高梨さんに向かってればこそ、ですが。

2006/07/24 21:30| URL | eromania  [Edit]
eromania様
そうなのですか・・・男性のキスはたった一つだけですの?
挨拶のキス、可愛いねのキス、好きだよのキス、愛しているのキス、
感じてるのキス、気持ちよくなってのキス、逝くんだよのキス
そんないろいろなキスが
男性の唇が下さるものだと思っていましたのに♪

2006/07/24 22:46| URL | 祥子  [Edit]
祥子様

そうですよね。キスはいろいろ。

おはようのキス、愛おしいって抱きしめられてのキス・・・・・

ほら・・・舌を頂戴って言われて熱いキス

うふふ。祥子様 おやすみなさいのキスです
☆チュ(^・^*)

2006/07/24 22:59| URL | 桜草  [Edit]
桜草様
今朝のおはようのキスも素敵でしたわ♪

2006/07/25 07:24| URL | 祥子  [Edit]
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