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Fireworks 4

わたくしを招待してくださった石塚さんは・・・石塚専務は・・・今日のおもてなしの中心人物のおひとりのようでした。
きっとわたくしだけにかまけていることなど出来ないのでしょう。お呼びしたお仕事関係の方達とお話しするのが、あの方の今夜のお仕事の一環なのですから。

人のざわめきや、語り交わす方達を見ているのは、それだけでも充分に楽しめました。
ましてや、わたくしにはお仕事上まったく関係のない業界の方達なのです。
どなたにも気を使う必要がないのなら・・・はじめて知る建築業界の方達のパーティを、わたくしなりの好奇心で気ままに楽しむつもりになっていたのです。
花火と客船での夜景の綺麗な東京湾クルージンング。
石塚さんとご一緒に居ることができなくても、シチュエーションだけで充分に優雅な一時に、わたくしはシャンパンの一口目からほんのり酔いはじめていたのです。

「祥子さん?祥子さんですよね。」
「えっ・・」
赤ワインのグラスに手を伸ばしかけたサービステーブルで、わたくしは思わぬ方に声を掛けられました。
昨年の夏、蝉時雨の降る庭で催されたジャズライブでお逢いした・・・長谷川さんでした。
今夜も記憶にある彼の姿と同じイメージの黒のお召し物で、さらさらしたアッシュグレイの髪も記憶に残っているままで・・・わたくしの隣に立ってらしたのです。
「お久しぶりです。思わぬところでお逢いしますわね。」
「どうして、こんなところにいるんですか?」
極めて限定された業界の、招待客しかいない場所に、わたくしが居ることに驚いていらっしゃるのは解りました。
ということは・・・この方も少なくとも建築業界の方なのでしょう。
「知り合いにご招待いただきましたの。長谷川さんは、今夜はお1人?」
「いや・・・」
そうおっしゃって振り向かれた先には、以前ジャズライブの会場にもご一緒にいらしていた3人の男の方達がいらっしゃいました。
「祥子さんは、どなたと?」
「ふふふ、わたくしは1人なんです。」
サービスの男性が差し出してくださる少し冷えた赤ワインを受け取りました。
お友達とご一緒なら、わたくしが長谷川さんを独り占めするわけにはいかないでしょう。
それでも、どなたも知り合いの方がいらっしゃらないという状況よりは、ほんの少しだけ気持ちが浮き立つのを否定することはできませんでした。
「そう。どの席にいるんだい。ちょっと待っていてくれないか、一緒に飲もう。」
「ご一緒にいらした方達は、よろしいの?」
「ああ、同じ事務所の部下達だからね。久しぶりなんだ、いいだろう。付き合ってほしいな。」
「ええ、長谷川さんがよろしいのでしたら。」
あちらよ・・・。
わたくしは長谷川さんに先ほどまで1人で座っていたテーブルを指差しました。幸い、少し死角になる小さなテーブルは、まだどなたも座ってらっしゃいませんでした。
わたくしは、立ち話を始めた上司を気にしてこちらをご覧になっている長谷川さんのお連れの方達に会釈をすると、夏らしく少し冷やされた赤ワインを手に一足先にテーブルに戻ったのです。

「おまたせ。」
長谷川さんがいらしたのは、本当にまもなく・・・でした。わたくしはほんの一口二口・・・ワインを楽しんだばかりだったのですから。
お酒だけを前にしているわたくしのために、彼の手にはいくつかのお料理を盛りつけた2つのお皿がありました。
「ふふふ、これくらいの時間なんて、待つうちになんて入りませんわ。」
「ああ、彼らも祥子さんのことを憶えていたからね。こちらに行くといったらすぐに解放してくれたんですよ。」
スタイリッシュな3人の部下の方達が、こちらのテーブルをごらんになっておりました。
「僕が誘ったんじゃないかとからかわれた。」
少しだけシニカルに見える微かな笑みも、記憶のままでした。
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コメント
会話って香りがするのですね。
「甘く危険な香り」が…。

山下達郎の曲の受け売りですが
eromaniaは感じます…気配が。



2006/09/23 19:44| URL | eromania  [Edit]
eromania様
長谷川さんとの会話は始まったばかりです。
でも、おっしゃる様にこの方は一筋縄ではいかないのです。
クレバーで繊細で大胆な・・・真性のSとしての空気を黒衣とともに纏ってらっしゃるこの方は
こうした普通の会話でさえ、わたくしを追い上げてゆくのですから。

2006/09/23 21:53| URL | 祥子  [Edit]
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