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夢のかよひ路 28

「浴衣なの?」
「ええ。」
「ドライブに?」
「そうです。ちゃんと座りやすい帯の形に結びますし、万が一着崩れても僕がち直してさし上げます。」
白地に浅葱で染め抜かれた蜻蛉の柄がすゞやかな着物でした。合わせる半幅帯は黒地にほおずきの朱と緑が鮮やかに映えています。
浴衣というよりは一重の着物と言った方が似合いなほどに、一般的な小紋などと変わらない格を持った品であることは一目瞭然でした。
どこに出掛けるにしても、黒のレースのパーティドレスではいまの望月さんには不釣り合いでしょう。
用意されているのがこの着物なら、着替えるしかありません。
「わかりました。望月さんの寝室をお借りしてもいいですか?」
もう、21時をまわっておりました。
ドライブにゆくならあまり遅くならないほうがいいでしょう。
帯は彼に任せるにしても、ドレスから着物に着替えるところを彼には見られたくありませんでした。

「だめです。ここで着替えていただきます。さぁ、立って。」
「いやぁ・・・」
煌々と明かりの灯るこの部屋で、彼の眼の前で着替えろとでも言うのでしょうか。
「お願い、ここでなんて恥ずかしいわ。」
「見せてください。石塚様がどんなことをなさったのか、その痕跡くらい確認させていただきます。」
「何も、ないわ。」
「何もですか。本当に?」
「だったら、余計に構わないじゃないですか。素直に僕にその身体を任せてください。」
「だめ・・・」
「逃げないように括らないと、僕のいうことを聞いてくれませんか?」
押し問答でした。
望月さんだって、石塚さんから今夜わたくしを招待したのが会社主催のパーティだと聞いていたはずです。
たとえどんな理由だったとしても、わたくしを呼び寄せて指一本触れないでいることはない。石塚さんをよくご存知の望月さんなら、当然のようにお考えになったことかもしれません。でも、その疑惑と嫉妬は先ほどのキスで帳消しになったとばかり思っていました。
いえ、そう思っていたのはわたしだけだったようでした。
これ以上逆らえば、せっかくの石塚さんの最後の忍耐やわたくしの気遣いが無駄になってしまいます。
「お願い、明かりを落としてちょうだい。」
わたくしは、それだけを眼の前の素敵な若い男性にお願いしたのです。

「わかりました。」
わたくしが、身体の力を抜いたのを感じたのでしょう。
腕を掴んでいた望月さんの手の力が緩みました。
「ちょっと待っていてください。」
望月さんが向かったのは、テレビの隣で咲いている青紫の鉄線の下の棚でした。
そこからなにかを出すと、鉄線の鉢の側とローテーブルに置いたのです。薄紫の蝋燭でした。彼の大きな手の中に握り込まれたもう一つのものは、マッチのようでした。
シュッ・・・・ ぽゎと灯った2つの明かりからは、優しいラベンダーの香りがただよいはじめました。
「ハーブキャンドルね。」
振り向いたわたくしからは、キッチンからの逆光にシルエットになった望月さんが見えました。
「これならいいですか?」
「ん・・恥ずかしいけど、許してはくれないのでしょう。」
半年前の時には、彼の前でプレゼントされたランジェリーに着替えることに羞恥するわたくしを、最後にはさりげなく1人にしてくれたのです。
なのに今回はここまでするのです。
許していただくのは、無理のようでした。
「ええ、さぁ着替えましょう。」
わたくしの後に立った望月さんは、潮風になぶられていた髪を片手にまとめ、ファスナーに手をかけたのです。
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コメント
 縄の技術を持っている以上
望月さんも結局はSさんなのね。
だんだんと仮面がはがれて
本当の嗜好があきらかになっていくのでしょうね。
その時祥子さんはどうするのかしら。

2006/10/29 15:36| URL | さやか  [Edit]
さやか様
人にはSの部分もMの部分もございます。
いままで、美貴さん達とご一緒の時にはあの方達のS性からわたくしを庇う様になさってらっしゃいました。
でも、今夜の望月さんは一人きりです。
技術の有無ではなく、なにか彼のS性を刺激してしまうことがあるのかもしれません。
それが・・・わたくしの存在なのかもしれなくても。

2006/10/29 19:21| URL | 祥子  [Edit]
望月さんの事知りたくて、
過去のお話を遡って、やっとおいついてきました。
この後ふたりはどうなってしまうのでしょう?わくわくします。
リンクさせていただいてもよろしいでしょうか?

2006/10/29 21:43| URL | UMI  [Edit]
UMI様
ありがとうございました。
望月さんの登場した過去のお話・・・本数はさほどでもないのですが、実は長編が多いのです。それを読んでいただけたなんて、ありがとうございます。
このあと・・・わたくしも、こんな望月さんを見るのは初めてなのでドキドキしています。
一緒に楽しんでくださいませ。

合わせてリンクの件、了解いたしました。
よろしくお願い致します。

2006/10/29 21:52| URL | 祥子  [Edit]
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