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EVE 4

「いやいや、ご謙遜だね。」
「ふふふ、そういうことにさせてください。ところで、石塚さんと山崎さんは?」
そう・・・いつもなら、もうご連絡がいって階段の上のドアが開く音が聞こえるころです。
まるでこの空間を魔法で閉じ込められてしまっているみたいに、今夜はまだどなたもお越しにならなかったのです。
「石塚さんはね・・・」

パタ・ン・・・ ほんの少しだけ空気が動いて、重い靴音がいたします。
「おっ来たね。お疲れさま。」
「お待たせしました。ご無沙汰しております、祥子様。」
「サンタ役、おつかれさまでした。」
わたくしを案内してくれたのと同じ女性のバーテンダーさんは、今度は望月さんをわたくしの右に座らせたのです。
左に美貴さん、右に望月さん。
なんて素敵な両手に花でしょう♪
「まずは、乾杯かな。」
「ええ。」
「お待たせいたしました。」
マスターが持って来て下さったのは、2つのシャンパンのグラスと・・・今度のわたくしのグラスには鮮やかなオレンジ色のマンゴーがカットされておりました。
「オーストラリア産の完熟マンゴーが入荷しましたので、香りが強いのですが味はあまり癖がないのでこうして楽しんでいただくには最適かと思いましてご用意しました。」
シャンパンゴールドの中に浮かぶ、オレンジゴールドのキューブ。
苺とはまた違うポップに美しいグラスでした。
「ありがとうございます。うれしいわ。」
「それじゃ、改めて。Merry Christmas!」
「Merry Christmas!」
「Merry Christmas!」
色と気泡を楽しむ為に極薄に創り上げられたシャンパンのためのグラスを眼の前に掲げ・・・立ち上る泡越しに視線を交わすのです。
望月さんの優しい微笑みは、夏のあのとき以来でした。・・・いえ、一層魅力的になっておりました。

「お話途中だったのではないですか?」
望月さんが、いらっしゃった時の二人の話し声から推察したのでしょうか。そんな風に、場を元に戻してくださいました。
「そうそう、石塚さんと山崎のことを話していたんだ。」
カットされたマンゴーを口に放り込みながら、美貴さんが話を続けます。
「石塚様はカリフォルニアですよね。」
「カリフォルニア?」
「そうなんですよ。実は離婚した奥さんが子供連れでアメリカへ行ってしまいましてね。」
「それで、ご家族で過ごす為に?お子さんはまだお小さいんですの?」
「これだけは習慣みたいなものだそうです。耕市くんが小さいときに、自分のところだけはクリスマスなのに他の家と違って父親がいないと泣いたそうで、それ以来クリスマス休暇だけは離婚した奥さんと息子と年に1度だけ水入らずで過ごす事にしたそうです。」
「まぁそうなの。」
「でも、もう今年23かなぁ。たしか耕市くんは。」
「はい、カリフォルニアで建築系の大学を卒業後院へ進んで、いまはハーバードでMBAを取得しているところだとおっしゃってました。」
望月さんが、美貴さんの言葉をフォローしてくださる。相変わらずの・・・阿吽の呼吸だわ。
「今年は、日本へ帰る様に口説きに行っているはずなんですよ。」
「えっ。」
「石塚さんの会社のことは、祥子さんご存知ですよね。」
「ええ、パーティにうかがってはじめて。お父様とお兄様にもご挨拶させていただいたわ。」 コメント
おはようございます♪
イブにふさわしい、静かな朝です。

>なんて素敵な両手に花でしょう♪
嬉しそう。^^
釣り込まれて、ついほほ笑んでしまいました。
うーん。席に加わりたい・・・

石塚家、新展開ですね。びっくり。
祥子様も、心穏やかではないのでは?
でも息子さんの話。ちょっぴり切ないですね。
23になっても、子供のころの習慣をつづけるなんて。
律儀なお父さんと純情な息子さんという感じが伝わってきます。
「本命」なシーンはもちろんのこと♪ですが。^^
たまにこういう語らいの展開があると・・・どういうわけかとても惹かれてしまいます。

2006/12/24 07:37| URL | 柏木  [Edit]
柏木様
この方達は、みなさんがお揃いだと唐突に口説きのシーンに突入なさるのですが(笑)。
その場にいらっしゃらない方がいると、こうしてその方達の消息を教えてくださいます。わたくしも、伺いたいのでうれしいのですが。
こう、お仲間同士の律儀さを感じて微笑ましく思います。
23歳の息子さんのクリスマスを過ごしに行った理由は、実は・・・今夜アップの分のお話をお楽しみになさってください。

2006/12/24 10:29| URL | 祥子  [Edit]
うんうん、今夜もう一本アップですね、了解。
ほんとうに物語がサクサクと進んでいくうー。

家族をちゃんと愛さなければ、ね。

2006/12/24 13:54| URL | eromania  [Edit]
eromania様
ご家族とクリスマスを過ごせるって、とても素敵なことですよ♪
わたくしのように、1人になってみるととても実感します。
素敵なクリスマスをお過ごしください。

2006/12/24 18:56| URL | 祥子  [Edit]
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