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黒衣の情人 8

「えっ・・・・」
「祥子。もう一度言わせたいのかい?ここで、自分で、服を脱ぎなさい。」
長谷川さんがわたくしを<祥子>と呼ぶ時。
それは、優しい紳士から1人のSになったときでした。そして、それは同時にわたくしが、彼の求める極上のMとして存在しなくてはならない時が来たことを意味しました。
でも・・・まさか・・・こんな四方がガラス張りで外が見えるような場所で始まってしまうなんて・・・。
「ここで、ですか?」
わたくしの声には、怯えが混じっていたかもしれません。
20畳ほどのペルシャ絨毯が敷かれたこの場所以外は、打ちっぱなしのコンクリートと鉄筋が剥き出しになったままの空間なのです。
閉鎖されたホテルの部屋とは違う空間は、ここが長谷川さんの神聖な仕事の場であることもあってこのまま・・・彼の罠に落ちてゆくことを躊躇わせたのです。
「もう充分空気もあたたまったことだろう。ワインの酔いも祥子の身体を暖めているはずだよ。外壁は全て偏光ガラスだ。外からはよほど絶好の角度でもないかぎり覗かれることはない。安心して祥子の身体を僕に見せなさい。」
わたくしは、まだ躊躇っておりました。
確かに長谷川さんがおっしゃる様に、外からは閉鎖された・・・見られることのない空間にいるのでしょう。
でも、あまりにくっきりと見える冬の都会の夜景が・ところどころに点くビルの窓明かりが・・・わたくしを呪縛しておりました。
「さっそくお仕置きかな?僕はピアノから手を離せない。なのに手を貸さないと、このお姫様は服を脱ぐこともできないというのかい。」
お仕置き・・・。
長谷川さんのおっしゃるお仕置きは、言葉通りの厳しい罰でした。わたくしは・・・それでもほんの少し躊躇った後で、革のジャケットの釦に手を掛けたのです。

「そう。それでいい。」
わたくしは長谷川さんから顔を背けるようにして、肩からジャケットを床へと落としました。続いてシャツの袖口の釦を外したのです。
次は胸元の釦・・・3つめ・・4つめ・・・5つめ・・・。
「綺麗な赤だね。白い肌に良く映える。祥子は自分の魅力を良くわかっている。黒いメンズ仕立てのシャツの襟元からこんな色を見せていたら、支配人はその場から動けなくなったろうね。まるで現代の花魁のようだよ。」
ピアノの音が変わっていました。
Summer Time。セクシーな啜り泣くようなメロディーが、長谷川さんの指先で奏でられてゆきます。
シャツのウエストは、スカートの中でした。命令通りにするために、わたくしは両手を後ろに回してスカートのホックを外そうとしたのです。

「待ちなさい、祥子。ここに来て、その姿のまま左脚を椅子に掛けなさい。」
「・・・はい。」
2歩だけ、長谷川さんに近づきました。
彼が腰を下ろしているピアノ用の椅子の座面の下の横木に、左脚のハイヒールのつま先を掛けたのです。
はら・っ・・・ 
90度以上に持ち上がった太ももは、スカートのスリットの間からガーターストッキングの留め具の上までもを晒しておりました。
引き上げた脚を彩るように、真紅のスリップと光沢のある黒のベネシャンのスカートは左右に着物の重ねのように垂れていたのです。
あまりに刺激的な色のコントラストに、わたくしは無駄とは知りながら椅子に掛けた膝を・・・スカートの奥まで見通そうとする長谷川さんの視線から避けるように内側へとほんの少しだけ倒しました。
「手は左右に自然に垂らして、そう。」
長谷川さんの指は、そうおっしゃりながらも一時も止まりません。
さらっと・・・流す様に弾いていたSummer Timeに、却って熱が籠るようでした。
彼の椅子にかかった黒革のハイヒールからわたくしの羞恥に染まった耳元までを、長谷川さんはねぶるように見つめておりました。

「祥子。黙ってないで、言うことがあるだろう。他の男に甘やかされすぎて、忘れてしまったのかい?」
アッシュグレイの前髪と同じさらさらとした肌触りの声。
ピアノの音とは裏腹に、冷静なその響きが1年も前のあの夜をわたくしに思い出させたのです。
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コメント
始まる前・・・・
 さやかは、なにがが始まる前のこの一瞬が一番好きです。どきどき、どきどき、どきどき、どきどき・・・・。祥子さんの心臓の音とさやかの心臓の音が響きあうよう。「他の男に甘やかされ」ちゃった祥子さんの本気の悲鳴、聞かせてくださいね。

2007/01/11 18:40| URL | さやか  [Edit]
音楽も
素晴らしい舞台には、音楽も重要な要素ですね。
長谷川さんのセクシャルなピアノに操られる祥子さん、素敵です。
もちろん、長谷川さんがお相手、脱ぐだけでは許されないでしょう。
でも、そこまでのプロセスも大切です。ゆっくりと、豊饒な時を作って下さい。

「お仕置き」という言葉、大好きです。

2007/01/11 19:51| URL | masterblue  [Edit]
饒舌なメロディを奏でるのとは裏腹な言葉。

ふと疑問がひとつ。
ねぶるように見つめるというのは、舐めまわすように
見つめるのとは違うのでしょうか。

とても刺激的な表現で…見つめていたい(笑)。


2007/01/11 22:38| URL | eromania  [Edit]
今朝は空気が冷たいですね
さやか様
どきどきする気持ち。
それだけでおかしくなってしまいそうです。
興ざめかもしれませんが、今回は悲鳴・・・なお話です。さやか様はそう言うお話もお好きでしたよね♪

masterblue様
いっそ・・ただ、脱がせてくださるならこんなに恥ずかしい想いをしなくてもよろしいのですが、1つ1つの仕草が全て長谷川さんの責め心を刺激してしまうようです。
<お仕置き>理不尽で、甘い言葉。
今回のお仕置きは・・・少し厳しいようです。

eromania様
そうですね。
意味だけを取り上げたら同じ意味合いですね。
でも、ちょっとした表現の違いで・・・わたくしは肌の表を湿った舌で撫で上げられる感覚を覚えてしまいます。
eromania様はいかがですか?

2007/01/12 08:11| URL | 祥子  [Edit]
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