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黒衣の情人 10

Aラインのフレアスカートはすとん・・・と床の上に黒い光沢のある輪を作ったのです。
「そのままにしていたら皺になってしまうだろう。拾いなさい。」
「・・・はい。」
わたくしは半歩だけ動いて・・・光沢のあるウールの黒い輪から抜け出ると、真っすぐに立ったままで上体だけをすっと倒してスカートを拾い上げました。
じっとこちらを見ている長谷川さんの目からは、ハーフカップのブラに辛うじて支えられたGカップの白い乳房が・・たゆん・・と深い谷間を晒すところまで見えてしまったことでしょう。
そんな想像は、わたくしの耳までも真っ赤に染めさせました。自分の脈拍がトクトクと・・・耳元でなり続けているかのようでした。
拾い上げたスカートを軽くたたんで、わたくしは胸元へと抱えました。いまさらですが、ほんの僅かでもこの身を長谷川さんの視線から隠せたらと思ったのです。わたくしは、はしたないストリップに羞恥のあまり長谷川さんからは顔を背けたままでおりました。
ピアノの音は、止まる事なく・・・・。

「スカートも寄越しなさい。」
耳元で聞こえた長谷川さんの声にわたくしはびくっと身を振るわせてしまったのです。眼の前に立たれた黒いセーターとウールのスラックスを見ても、すぐにお答えすることはできませんでした。
長谷川さんの手には、さきほどわたくしが床に脱ぎ落とした革のジャケットがありました。
「あの・・・ピアノは?」
わたくしはただ一言、目の前の長谷川さんに疑問を投げかけたのです。
長身の彼の向こうにあるピアノからは、先ほど彼がそのしなやかで力強い指で弾いていたのと同じように、ピアノは生音での演奏を続けておりました。
「あのピアノには自動演奏装置が付いているんだ。ボタン一つでさっき僕が弾いたとおりに、エンドレスで演奏し続ける。あまりうまくはないが、ありきたりのCDよりはムードがあるだろう?」
身体を半分動かして、鍵盤だけが不思議に動くピアノを一旦わたくしに見せてくださった長谷川さんは、わたくしを見つめたまま身を覆う様に抱きしめていた手の中のスカートを取り上げたのです。

「いずれ、祥子の上げる声でピアノの音どころじゃなくなるだろうけどね。」
わたくしの衣服を左手にまとめて、右手の人差し指でつい・・と顎を引き上げるのです。
「ぃゃ・・」
わたくしはあまりの言葉に、思わず視線だけを逸らせてしまったのです。
「違うというのかい?祥子。さっきの歌声なんか比べ物にならないような、はしたない声を上げるのだろう?」 
わたくしは、ふるふると首を横に振ったのです。いまのわたくしにはその質問に頷くことなんてできません。
たとえ、長谷川さんが言う通りに・・・きっと・・・なってしまうにしても。
「声を上げないというのかい?僕にどんなことをされても?」
こちらを見ろ、というように顎先にかかった指に力を込めます。
「本当に、そんなことができると思うのかい?」
冷静に重ねられる疑問符に、わたくしは長谷川さんに怯えの視線を向けるしかありませんでした。
どんなことをされても・・・真性Sだと自認されている長谷川さんの<どんなこと>には、なにが含まれているか想像もつきません。
それなのに、これ以上の抗弁などどうして出来るでしょう。
「・・・できません・わ。」
わたくしはそれだけを口にしました。
長谷川さんがそう言う以上、わたくしにおっしゃるような声を上げさせるための責めを、彼はいくらでも続けることができるのですから。
「やっと認めたね。今夜はこんなに僕好みのスタイルをして来てくれたから少しは素直なのかと思ったが、どうもそうじゃないようだね。あとで沢山お仕置きをしないといけないようだ。」
「ゆるし・て・・。」
「ふふ、まだ何もしてないだろう。なのに、そんな追いつめられた小動物のような目で僕を誘うんじゃない。まるで、虐めてくださいと言っているようだよ。今の祥子の顔は。」
「ちが・う・・・の。」
眼を見てお話しない限り、長谷川さんはわたくしの言葉を聞いてはくださらないような気がいたしました。
なのに、わたくしの表情が長谷川さんの嗜虐心をそそってしまうなんて・・・なんという皮肉なのでしょうか。
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コメント
東京は穏やかな晴天が続いていますね。わんことのお散歩もつい長く歩きたくなります。お正月になまった身体を鍛えなおすのに丁度良いかも…。
なんだか祥子さんが狩人に追い詰められた、可愛い子うさぎの様に思えます。
触れられてもいないのに、何の抵抗も出来ない…。
朝からドキドキしてしまいます。

2007/01/13 08:53| URL | るり  [Edit]
なんかこのくだり、とてもイイです。^^
床に落ちたスカートが、光沢の輪を描くシーン。
ここで目線を、グッと引き寄せられました。

彼好みのシックな装いは、一見偶然のようにみえて。
じつは誘って・・・いるのですね?^^
おびえた小動物の目。
これもまた、誘って・・・いるのでしょうか?^^
嫋々とした拒絶がたくまずして男を誘う。
そんな風情に感じられます。

主の奏でた音にひたすら忠実にたどるピアノも、案外共犯者なのでしょうか。

2007/01/13 09:32| URL | 柏木  [Edit]
音楽が無くなったら、殺伐とした舞台になってしまうでしょう。エンドレスでトレースするピアノ・・・心憎い小道具です。

小動物が怯えたような目でも、片意地張って挑むような視線でも、長谷川さんにとっては、蠱惑的なものとなってしまうでしょう。

意識しなくても、祥子さんの全てが、誘っているのです。
素直に、長谷川さんの手に堕ちましょうね。

2007/01/13 15:59| URL | masterblue  [Edit]
こんにちはっ(^▽^)/
長谷川さま・・・真性のSさまって・・・
どんな調教がまっているのかドキドキします・・・
ピアノの音の中・・・命令に逆らえずに服を脱ぐ祥子さん。
あとにどんな恥ずかしいことが待っているのか薄々気づきながら・・・・祥子さんの心臓の音がピアノの音とシンクロして・・・・
長谷川さまのプレイ・・・楽しみにしています((((o゜▽゜)o)))

2007/01/13 16:15| URL | 悪夢☆  [Edit]
受け入れても拒絶しても、どちらにしても長谷川さんは
祥子さんをゆるゆると厳しく追い込んでゆく…。少しずつ
過酷になる!?

情念の炎は相手の反応を確かめつつ、自らの手で灯す
こともできるのですね。

2007/01/13 18:15| URL | eromania  [Edit]
夜になるほど・・・
風が冷たくなってきました。
まだ1月。昼間のうららかな日差しについ油断してしまいますが、本当は朝には霜が降りるような時期のはずですのにね。

るり様
<歩きたくなる>気持ち。なんとなくわかります。
わたくしも昨夜は麻布十番から六本木1丁目くらいまで、ワインの酔いに抱かれながら・・・てくてくとお散歩をしてみました。
長谷川さんの視線は正に<呪縛>ですね。
ほんとうに動けなくなってしまうのです。


柏木様
わたくしが、長谷川さんのお好みだと思ってご用意したのは、只一点色の違う真紅のスリップだけです。
後は、長谷川さんがどう味わってくださるか・・・なのです。
わたくしからお誘いするなんて、とても恥ずかしくてできませんわ。


masterblue様
以前ある方が、<SがSで居られるのは、Mの存在があるから>だと言ってらしたのを伺ったことがございます。
長谷川さんがこんな風になられるのは、わたくしのせいだとおっしゃるのでしょうか。

あぁ・・・ひどい。あちらで長谷川さんが、masterblue様の言葉に『そうだよ、祥子。』って頷いていらっしゃるわ。


悪夢様
ピアノって、特に男性が弾くピアノの音って、とてもセクシーだと思いませんか?
女性だと、なぜかこう・・・習い事の延長線みたいな雰囲気になってしまって健全さが前に立つのですが。
悪夢様のところに登場されるSの皆様と長谷川さん・・・どちらが厳しいご主人様になってしまうのでしょうかしら。


eromania様
長谷川さんの場合、お誘いにYESとお返事した以上、その後の拒絶はありえないんです。
わたくしに出来るのは、全て受け入れるか・全く拒否するか・・だけなのですから。


2007/01/13 20:29| URL | 祥子  [Edit]
すべての関係に表と裏があるのでしょうね。被虐する側とされる側。屈服させたい人とされたい人。
そして、ピアノの音には、今は周囲の静寂さが対をなしているのでしょうか。
(わけあって、先日よりnameを変更しております。もう少し正直になりたいと思って)

2007/01/14 06:19| URL | tomo  [Edit]
tomo様
どちらが裏なのか表なのか・・・。
二つが寄り添っているというのが本当なのだと思うのです。
寄り添って世界を創り上げる。いまこの場のtomoさんとわたくしのように、ね。
そうして素敵な時間になってゆくのだと思いませんか?

2007/01/14 09:21| URL | 祥子  [Edit]
寄り添う
なんて素敵な響きの言葉でしょう。遠い言葉のように感じていましたが、とても幸せな気持ちにさせてくれる言葉なのですね。

2007/01/14 11:45| URL | tomo  [Edit]
tomo様
そうです。
触れることがなくてもそっと側に居る。体温を感じるくらいの距離で♪
そんな風に、だれかの側に居たいものですね。

2007/01/14 16:11| URL | 祥子  [Edit]
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