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SnowWhite 12

「嬉しいよ、そんなに僕のことを心配してくれて。ありがとう。」
ちゅっ・・・ タオルに添えたわたくしの手を振りほどくこともなく、高梨さんは長身をかがめる様にして、頬に1つキスをしてくださったのです。
「あの・・白雪はどうなさったの。」
今日こちらに来てからの、高梨さんの甘やかな仕草にわたくしはほんの少し戸惑いながら、高梨さんの手を包んだタオルを解きました。そして、このままキッチンでの情事が始まってしまわないようにとさりげなく話題を変えたのです。
「ああ、白雪の兄弟のいる家で遊んでるよ。」
カシャ・・
高梨さんはさっそくカメラを手にすると、ピンクに染まった百合根のようなわたくしの耳朶にレンズを向けたのです。
わたくしはカメラを見る事なく、黄金色に煮上がったさつまいもの裏ごしをはじめました。
「サモエドのブリーダーの方がお近くにお住まいなんですか?」
「そうなんだ。丁度道の反対側にある家なんだけどね。僕がここを空けることが多いからそういう時は白雪を預かってもらっている。」
「よかったわ。」
カシャ・・
高梨さんを見上げた瞬間、シャッターが押されました。
「良かった? いま、白雪がいないことがかい。」
「もう、何をおっしゃってるの。違います。高梨さんは一年の半分くらいはこちらにいらっしゃらないでしょう。その間白雪はどうしているのかと、思っていたんです。ブリーダーの方のところで、兄弟一緒に過ごしていれば寂しくなくてよかったわ。」
「ははは、なんだ今僕と二人きりになれてよかったっていう意味じゃなかったわけだ。」
「しりません。」
まるで、夫婦二人きりの昼下がりにやんちゃな息子が友達の家に遊びに行っていて・・・だからこうして甘い時間が過ごせるだろう、高梨さんの言葉にはそんなニュアンスが含まれていたのです。
いつものヒルズの高梨さんのお部屋なら、このまま全てを放り出して甘えても、美味しいディナーを堪能する手段はいくらでもあります。
でも、いまここで手を止めたらふたりのこれから3日間のお夕食は台無しになってしまいます。
それを解っていらしてこんな悪戯を仕掛けられているのにわたくしは気づいていました。

「白雪をお迎えに行かれるんでしょう。」
「ああ、済めば電話が来る事になっている。」
「済めば?」
「ああ、グルーミングしてくれるそうだ。サモエドは防寒のために毛が密に生えているからね。風邪をひかないように暖かな部屋で完全に乾かしたら電話を貰う事にしてある。」
手元のボウルには、裏ごしされたきんとんがふんわりと黄金色の山を作っておりました。木杓子でかき混ぜて、ほんの少しだけ滑らかさを出すために栗の蜜煮の蜜を加えます。
「栗きんとんを作るプロセスを初めて見たな。」
「そうでしたか。」
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コメント
きんとんの裏ごし・・・昔は母が作るおせちを楽しみに、大晦日を過ごしていました。年が明ければ、みんな食べられると。

いまは”ピンポ~ン”と宅急便が届けてくれます。ベンリですねぇ・・・(T_T)

2007/02/27 20:29| URL | masterblue  [Edit]
(笑)
祥子さんとおなじことを考えていました。

普段は白雪はどうしているんだろうってね。
(笑)

うちは、柴犬だったんですが、18歳で亡くなってから
2年経ちますね。
長生きしたでしょう。

なかなか、次が飼えません。

2007/02/27 20:39| URL | くろす  [Edit]
いつ見てもすごいですね
私はこんな風に書けません・・・
別館の方も大変なのにこちらもきちんとされてて・・・

祥子さんはきちんとしてる人なのかしら?
私にはとても真似できないくらいです
料理も掃除も全くだめな私なので本当に尊敬します
これから少し身体の火照った祥子さんはどうなるのでしょうか・・・(あっ、違いましたか^^;;)
楽しみです^^

2007/02/27 21:43| URL | ななみ  [Edit]
最近は学校も土曜休になり、そんなことも出来ないのかしら?
良くお解かりですね。昔は子供達が小学校に出かけた土曜の朝って、定番でした。
でも、何も話さない分、わんこの目の方が雄弁。
何でも悟った様な純な目をしてますものね。
今年は歯の悪い義両親の為、白インゲンでのきんとんを作ってみました。ほんのりピンクで、これもこれ、なかなかよろしかったですよ!

2007/02/27 23:03| URL | るり  [Edit]
東京の雨の予報は外れたようです
masterblue様
以前は年末年始はおせち以外食べるものがなくなってしまいましたが、昨今は商業施設も営業しているためわざわざ作る家庭も少なくなったようです。
ただ・・・おせちには和食の基礎となる技術や知恵が全て含まれているんですよね。
それに、日本の美しい幸せを願う言い伝えも。
そういったものを受け継ぎ伝えるためにも、おせちは簡略化しても自らの手でつくりたいと思う今日この頃です。

くろす様
18歳ですか。幸せな柴くんだったんですね。
共に居た時間が長いほど、次のコを受け入れる気持ちになるまで長い時が必要になるのでしょう。
きっと、くろす様に新しい友が必要になるときには、素敵な出会いがあると思いますわ♪

ななみ様
恐れ入ります。
ふふふ、普段はそれほどきちんとしているわけではないんですよ。
物語を綴ることも、川柳で皆様とお話することも、きっと楽しんでさせていただいているからですね。
いまは独身のわたくしには、自分の時間がたっぷりあるものですからできることですわ(笑)。
マイペースで楽しんで♪
ご一緒いたしましょう、ね ななみさま。

るり様
学校の週休二日制は、夫婦のレスを推進するひとつのきっかけだったのかもしれませんね。
日本は、大人と子供の時間が分離されていませんから、どうしても父と母にはなれても、男と女になれる時間がなかなかとれないものです。
白いんげんのきんとん。
はんなりした優しい色合いときめ細やかな舌触りがほんとうに素敵ですもの♪
さすが、るり様

2007/02/27 23:32| URL | 祥子  [Edit]
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