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SnowWhite 14

「お口に合うといいんですけれど。」
「そう伝えておくよ。」
「あっ、そうでした。今夜なんですがお鍋にしようと思うんです。締めは年越し蕎麦を召し上がっていただくつもりなんですが、お鍋はたらちりと鴨鍋とどちらがよろしいですか?」
お料理のはじめに、土鍋には昆布出汁を取る準備をしてありました。
他のお料理用の出汁は、別の大きな寸胴鍋で昆布と鰹の合わせ出汁を2本分やはり最初に取っておきました。贅沢な作り方ですが、お料理の基本です。短時間に数種類の献立を作る為には、このやり方が一番効率的なのです。
「ほう、どちらもうまそうだな。鴨鍋の出汁で最後蕎麦をたぐるのも悪くないが・・・たらちりもいいな。」
「白子を買っておいていただいているので、新鮮なうちに召し上がっていただいたらいいかと思って。七輪で焼いてとも思ったのですが、お鍋のほうが美味しそうでしょう。」
「ん、それはいい。」
「よかったわ。それで準備させていただきますね。お蕎麦はざるにいたしますから、後でべつに召し上がってくださいな。」

わたくしは、足元から泥付きの長ねぎを数本取り上げました。
深谷ねぎの系統でしょうか、太くてしっかりと身の入った緑の部分も柔らかな長ねぎです。足元に段ボール箱を利用して作っておいたゴミ箱の上で長ねぎの一番上の皮を1枚だけ剥いてゆきます。
泥を纏った1枚をはいだ下には輝くばかりの白い肌が表れます。
台所から包丁を取って、逆さ剥きにした皮の根元を切り落としました。
「野菜は足りているかな?」
「ええ、充分です。これってほとんどこの土地のものなのでしょう。」
「そうだよ。」
シンクの水で長ねぎを洗います。冷たい水ですが・・・お湯で洗うとなんとなく野菜の香りが飛んでしまうような気がして、必ず水を使うのはわたくしの思い込みかもしれません。
サクッ・サクッ・サクッ・・・・ちり鍋用に、長ねぎを斜め削ぎ切りにしてゆきます。
「ほら。香りが良くて、とっても精があって。いいお野菜ばかり。」
「遠くの名産より、近くの採れたてのほうが旨いと信じてるんでね。」
「ふふふ、正解ね。」

まな板を洗って、小鍋にお湯を沸かすと今度は食用菊のパックを取り出しました。
「これも今夜のおかずかな。」
「ええ。高梨さんは良く召し上がるの?」
「いや、実は裏の家からの貰い物だったんだ。昨日いただいたが、どうしていいかわからないからそのままにしておいた。」
カメラを構えてシャッターを押しながら、高梨さんの質問は続きます。
単焦点レンズで・・・同じ室内ですからあまり離れることもなく・・次々と切られるシャッター音を、わたくしは次第に意識しなくなっておりました。
「ふふふ、かきのもとの作り方なんてあまり知られていませんものね。」
「かきのもと?」
「ええ、この食用菊のことです。新潟の方の呼び方なのかしら。母がそう言っていたので、なんのこだわりもなくずっとそう呼んでいました。」
花の首から摘まれている菊のはなびらをきれいに顎から外してゆきます。ざるの中にはあっという間に、山のような薄紫の花弁がつみかさなってゆきました。
「どうやって食べるものなんだ?」
「そうですね、たとえばお醤油でといた生卵に付けて召し上がる方もいらっしゃいますよ。」
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コメント
初めまして
 初めまして。
 とは言っても私の方は、結構前から毎日こちらへ寄させて頂いておりますので、祥子様のことは、良く存じ上げております。私が祥子様について驚くことは、その博識なことです。映画、音楽、ワイン、服飾、車、書籍、美食、陶器そしてそれらが単なる知識に終わらず、実践が伴っておられることです。ああそれから、忘れてはいけないことは、いや一番大事なことは仕事の面でも一流の腕をお持ちで、更に言えばその美貌。いやはや「天は二物を与えず」と言うけれど、あれは嘘だと言うことが祥子様を見ているとよく分かります。
 そして、今回は料理ですか。一つ一つうんちくを傾けながら、更にそれが嫌みに聞こえないことは、ただただ祥子様の美貌、人徳、人柄のなせる業でしょう。
 これからも毎日寄らせて頂こうと思っていますし、これからはちょくちょく書き込みもさせて頂こうと思いますので、宜しくお願いいたします。

2007/03/01 12:46| URL | オーバーチュア  [Edit]
台所に立つ前に・・・
 いつも冷蔵庫を開けてから
メニューを考えていたさやか。
なんだか料理をするのがおっくうな人なので
立ち上がるまでが、時間がかかるのです。
最近はパソコンの前でメニューを考えて
決まってから立ち上がる事に(笑)
たったそれだけでスタートの動きが
速い事に気がついた。
人間気持ちの持ちよう・・・。

2007/03/01 14:51| URL | さやか  [Edit]
お料理もそろそろ佳境(お料理が・・ですか?!)
オーバーチュア様
はじめまして、ようこそお越しくださいました。
以前からおいでいただいていたとのこと、ありがとうございました♪
ずっと楽しんでくださっていた方から、こうしてコメントを頂戴できるのは、なにかサプライズプレゼントを頂戴したようでとても嬉しいものです。

過分なお言葉、ありがとうございます。知識と申しましても・・・身の回りの卑近なことばかりで・・・恐れ入ります。少しでも楽しんでいただけたら、幸いでございます。
いつものように、なかなかセクシャルなシーンにならない今回の物語ですが、どうかいましばらく・・・お料理の世界を楽しんでくださいませ。
これからも宜しくお願い申し上げます。


さやか様
今回のような特別なおもてなし料理は別ですが、普段はキッチンと冷蔵庫にあるもので何種類のものが作れるかが主婦の腕の見せ所、と思っておりました。
家庭を持っていたときは、急な夕食のお客様なんて日常茶飯事だったので、お肉か野菜は冷凍庫にいくつか常備して・・・食欲大魔王の来襲に備えたものです(笑)。
毎日楽しめるゲームみたいに、お料理ができるといいですよね♪

2007/03/01 17:46| URL | 祥子  [Edit]
鴨鍋にたらちり…活字だけでも美味しそう。
湯気が立ち昇る鍋を囲むわけですね。

締めはお蕎麦で「鴨なんば」…ゴクン。

今年は暖かすぎて、鍋の出番が少なかった
みたいですがね(笑)。

2007/03/01 21:12| URL | eromania  [Edit]
eromania様
今年は鍋料理は本当に不調のようですね。
お年始の祝い膳は一緒につつくというよりは、それぞれのお膳に・・・という雰囲気なので、年末は一年のいろいろなことを語れる様に、お鍋をすることが多いです。
遅い時間までお酒と一緒にのんびり♪
eromania様もこんな時間お好きですか?

2007/03/02 00:25| URL | 祥子  [Edit]
本当に暖冬のせいか、お鍋は数える程。
主人が尿酸値の心配があり、白子や鮟鱇鍋が食べられず、それは違うお顔と食す事に…。
風邪引きで面倒なのと、VBを沢山摂る為に昨夜は常夜鍋。出汁はなく日本酒に生姜スライスとお醤油のみが私流。大汗かいてだいぶ元気になりました。
我が家のお年越しは、すき焼きが定番。お蕎麦は信州からお取り寄せ。年末は台所に詰めていますね、嫌いじゃないけど。
菊はうざくやぬたに。生卵は始めて聞きました、トライしてみましょう!

2007/03/02 00:59| URL | るり  [Edit]
食用菊
昔から謎の食材でした。
どうやって食べるものなのか?
売っているのは見かけるものの食べたこともありません。
「どんな味なんでしょうか?」
高梨さん同様に質問です。

2007/03/02 01:08| URL | UMI  [Edit]
今夜のお夕食にはなにをプラスしますか?
るり様
わたくしの常夜鍋は清酒だけ派です。白菜と生姜と豚肉と・・・で、ポン酢で頂戴します。
シンプルなお鍋だけれどほんとうに暖まりますね。
独りになって、一番残念なことはお鍋をいただく機会が減ったこと(それかい!ってつっこまないで下さい(笑)。
一人鍋のちいさな土鍋もかわいいですが、やはり差し向かいではふ・はふ頂くのがおいしいですものね。

UMI様
そうですね。あればかりは・・・教えていただかないとわからないですよね。
お料理の仕方は次のお話に続きますが(笑)、お味は実はとてもくせのないお味なんです。しゃくしゃくとした独特の歯触りを楽しむのが、わたくしは大好きです。


2007/03/02 07:21| URL | 祥子  [Edit]
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