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21:00 4

ブランドショップが切れるあたりでファサードもなくなります。
傘をさそうとするわたくしを制して男性は大きな傘をさしかけ、さきほどよりも強くわたくしを引き寄せたのです。
「部屋に帰る前にコーヒーでも買っていきましょう」 
すぐ先にはガラス張りのコーヒーショップがありました。
ドアを引き開けるとわたくしを先に入れ、傘を閉じて男性も入ってまいりました。
「僕はエスプレッソ・ダブルですが、祥子さんは?」 
彼の右肩は雨で濡れていました。
「わたくしも同じものを。ごめんなさい、濡れているわ」 
コートのポケットから出したハンカチで肩の雨を払おうといたしました。
「ははは 大丈夫です。ゴアテックスですから、中までは濡れないんですよ」 
それでもおとなしく肩を下げて、わたくしのするがままに任せていました。
「ここで掛けて待っていてください。すぐですから」 
通りに面したハイチェアのカウンターを指差します。
「コートの前を抑えたりしないで、わかっていますね。言うことを聞かなければ次の罰がまっていますよ」 
わたくしのバッグを置くふりをしながら、小声でそう付け加えるのです。
「すぐに戻りますから」 
あの声で明るくそう言うと、男性は椅子を引きそこに腰を座る様にと、わたくしを促すのです。
「・・・はい」 
わたくしはステップにハイヒールの右足を掛けると、身体を引き上げその椅子に腰掛けました。
「ぁっ・・・」 
高さのある椅子はコートの重みを、自然と左右に振り分けるのです。
ロングトレンチコートの裾はわたくしの両膝から滑り落ち、ストッキングに包まれた脚を露にしました。
それでも5つ目の釦が止められていたら・・・まだそれほどはしたない姿にはならなかったでしょう。
4つしか止まっていなかったために、ストッキングの上の白い太ももとストッキングを止める留め具までが・・・晒されていました。
コートの下に着ているとすれば、マイクロミニスカートにちがいない。上品そうな顔をした大人の女なのに、あんな部分まで晒して。あと少し・・・出し惜しみしないで見せろよ。
そう、見る男性に下びた想像をさせてしまうほどの淫らさが漂っていました。
幸いなことに外は雨が激しくなり、行き交う人がゆっくりとコーヒーショップのガラス張りのシートを眺めやる余裕をなくさせてはおりました。
ただわずかに数人の男性が、ふと眼に入ったわたくしの姿に気づき「本当か?」という顔をしてこちらをみつめるのです。
最初の通行人と眼があってしまってから、わたくしは顔を上げてはいられなくなりました。
とはいえ、眼を伏せればそこには露になった白い太ももの合わせ目が見えるのです。
ほんの数分のことのはずなのに、男性はなかなか戻ってこないように思えました。
どうしているのか気にはなるのですが・・・この姿のまま人が溢れる店内を振り返る勇気はありません。
きっちりと上半身をおおうトレンチコート。晒されているのは太ももの半ばから下だけ。
少し丈の短いスカートを身につけていたなら、パンティストッキングに覆われた脚を当たり前のように見せている・・・そんな場所なのに。身につけているのがランジェリーだけだというだけで・・・なんてはしたなくなってしまうのでしょう。
 
「お待たせ」 
戻ってらした男性の声がいたしました。太く落ち着いた甘い声に、わたくしはほっとした安心感さえ覚えてしまったのです。
「いいつけを守っていたみたいですね。祥子さん」 
テーブルの上のわたくしのバッグと、わきに掛けておいた傘を手にしながら、小声で付け足すのです。
「さぁ いきましょう」 
くちゅ・・・男性に手を取られて椅子から降りたわたくしのランジェリーの下から・・・はしたない音が漏れてしまいました。
 
大きめな男性の傘だけをさして、少し激しくなった雨のなか男性の部屋へ向かいました。
男性が<私の部屋>と言ってらしたのはレジデント棟16階にある一室でした。
エントランスを入り、2人きりでエレベーターにいる時も男性は紳士的でした。わたくしによりそい、わたくしの荷物を持ち黙ってエスコートしてくださったのです。
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コメント
はじめまして
彩りんです。
わたしのサイトにご訪問、ご書き込み下さいまして、どうもありがとうございます。
21:00の4話まで、読ませていただきましたが、東京の山の手とイタリアンのテイストを、感じました。
わたしと違って、本当に、文章の書き方が上手ですね。
これから、どうなっていくか、相手の部屋に入ってからどうなるのか、展開が楽しみです。
わたしの書いている小説「まさみ」は、週1回以上は更新していますので、よろしかったら、また、当サイトを覗きに来て下さいませ。m(_ _)m
では、また。

2006/02/09 18:51| URL | 彩りん  [Edit]
彩りん様
いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。
週に一回のアップなのですか・・・
ぜひ伺わせていただきます。
これからもよろしくおねがいします。


2006/02/09 21:53| URL | 祥子  [Edit]
はじめまして
「日々の妄想を形にして」のmasterblueです。
ご訪問有難うございました。

早速お邪魔させて頂きました。
そして、とりあえず「21:00」を読ませて頂きました。

大人の女性が持つ洗練さが滲み出た文章とストーリーに魅せられました。この先が楽しみです。

女性作家の一寸ミステリアスな小説が好きです。
今週は、浅野裕子の「午後の女たち」を読みました。
その前は、小池真理子の「水無月の墓」。
祥子さんの小説の世界は、私にぴったりのようです。
「唐紅」も一寸齧り読みしましたが、これもはまりそう。後でゆっくり最初から読ませていただきます。

無粋な男が、土足でどかどかと入り込むのには、一寸気が引ける祥子さんの世界ですが、またお邪魔させていただきます。

ところで、カテゴリーの中に「第九 合唱付き 」というのがありますが、これからの作品の題名でしょうか。それとも音楽の話でしょうか。
第九のバスパートを暗譜で歌えるというのが、数少ない特技(?)のひとつなので、気になっております。

2006/02/10 12:16| URL | masterblue  [Edit]
masterblue様
コメントありがとうございました。
読ませていただいただけで失礼をしてしまって
申し訳ございませんでした。

わたくしの拙い小説ですが・・・お気に召していただけたなら幸いです。
ご指摘の「第九 合唱付き」は
こちらのお引っ越し元で昨年年末に集中して連載させていただいた作品です。
いまお読みいただいている「21:00」のカメラマンさんとの
もう一つの物語になっております。
いずれこちらにも・・・加筆・訂正をしてお引っ越しをしようと考えておりますが
初出でよろしければhttp://spaces.msn.com/syouko8138/にてお読みいただけます

バスパートを歌える男性♪
とても興味をそそられてしまいますわ。
これからも宜しくお願い申し上げます。


2006/02/10 13:48| URL | 祥子  [Edit]
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